LVDS
LVDSとは、高速のデジタル・インターフェイス技術の一つ。「Low Voltage Differential Signaling」という英文の頭文字を取って作られた技術用語である。日本語訳である「小振幅差動信号方式」の通り、電圧振幅が小さい信号を差動(ディファレンシャル)方式で伝送するインターフェイス技術である(図1)。
LVDSが市場に初めて登場したのは、1994年のことである。米ナショナル セミコンダクター社(現在は米テキサス・インスツルメンツ社)がLVDSドライバIC/レシーバIC「DS90C031/032」を製品化した。さらに翌年の1995年には、LVDSの基本技術が「ANSI/TIA/EIA-644-A」として標準化される。これがきっかけとなり、通信機器やネットワーク装置、ノート・パソコン、液晶モニターなどで盛んに採用されるようになった。
数Gビット/秒の信号を約10m伝送できる
LVDSの特長は、大きく分けると三つある。一つは、高速なデータ伝送が可能なこと。実際には、数百M〜数Gビット/秒と高いデータ伝送速度が得られる。二つめは、長距離のデータ伝送が可能なこと。使用するケーブルに大きく依存するが、例えば、カテゴリー5のより対線を使った場合に、約2Gビット/秒程度の信号を10m程度送ることができる。三つめは、放射電磁雑音(EMI:Electro-magnetic Interference)を低く抑えられることである。
高速なデータ伝送が得られる理由は、信号の電圧振幅が350mVと極めて小さい点にある。例えば、0Vを「ロー(0)」、3.3Vを「ハイ(1)」として信号を伝送する場合、信号を0Vから3.3Vに、もしくは3.3Vから0Vに遷移させる必要があるため時間がかかる。しかし、0Vを「ロー(0)」、350mVを「ハイ(1)」と設定して信号を伝送すれば、信号遷移幅はわずか350mVである。遷移時間は極めて短い。その分だけ、高速なデータ伝送が可能になるわけだ。
二つめの特長である長距離のデータ伝送が可能になった理由は、差動伝送方式にある。差動伝送方式とは、2本の信号配線を使って逆位相の信号を同時に送る方式である。このため、外来ノイズの影響を受けても2本の信号配線が同じように影響を受けるため、受信端のアンプ回路で合成すれば、外来ノイズの雑影響を打ち消すことができる。さらに、LVDSでは、長距離送ったことで信号振幅が100mV程度に減衰してしまっても、正常な受信を可能にする回路方式を採用している。このため、高速な信号を長距離送れるわけだ。
三つめの特長である低EMIについても、差動伝送方式の採用が大きく寄与している。差動伝送路を構成する二つの信号配線が作る電磁界は互いに結合するからだ。このため、電磁界が遠方に放射されることはない。電磁界が理想的にすべて結合すれば、EMIはゼロに抑えられる。
ディスプレイ・インターフェイスとして普及
基本的に、LVDSは汎用のインターフェイス技術である。アプリケーションは広範囲に及ぶ。その中で代表的なアプリケーションとしては挙げられるのは、液晶ディスプレイのインターフェイスである。具体的には、液晶ディスプレイとグラフィックス・コントローラの間を接続する用途だ。
この用途に向けた半導体チップとしては、テキサス・インスツルメンツの「FlatLink 3G」がある。例えば、型番はトランスミッタICが「SN65LVDS301」で、レシーバICが「SN65LVDS302」である。RGB各8ビット、すなわち24ビットの画像信号と3ビットの制御信号を3本のLVDS信号に変換して、データ伝送する。対応する画素周波数(ピクセル・レート)は最大65MHz。画素数がXGA(800×600)の液晶ディスプレイまで対応できる。
テキサス・インスツルメンツのインターフェイス製品ラインナップ
提供:日本テキサス・インスツルメンツ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2013年3月31日
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