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第9回 メモリデジタルIC 基礎の基礎

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 デジタル機器を構成する半導体ICの中で、デジタル情報の記憶や保存などを担うのがメモリICです。マイクロプロセッサやマイクロコントローラーなどを中核とするシステムではたいてい、3種類のメモリICを使用します。一つが、プログラムを記憶するメモリIC(プログラム・メモリ)、もう一つが、データを記憶するメモリIC(データ・メモリ)、最後が、実際に動かしているプログラムやプログラムが扱うデータなどを一時的に記憶しておくメモリIC(ワーク・メモリ)です。

図1 システムにおけるメモリICの分類
図1 システムにおけるメモリICの分類

読み出し専用のROMと書き換え可能なRAM

 上記の分類は、メモリICをシステムにおける役割から見たものです。メモリICを技術的な観点から分類するとまず、揮発性メモリと不揮発性メモリに大別されます。ここで「揮発性」とは「電源を切るとデータが揮発する(消滅する)」性質を指します。つまり、揮発性メモリは電源を切ると内部に記憶しておいたデータが消えてしまうメモリ、不揮発性メモリとは電源を切っても内部に記憶しておいたデータが残るメモリ、です。

 またメモリICを機能的な観点で大別すると、読み出し専用メモリ(ROM:Read Only Memory)とランダム書き換えメモリ(RAM:Random Access Memory)に分かれます。ROMはその名称の通り、データを読み出すことが主体のメモリです。データを書き込んだり、データを書き換えたりといった動作は基本的にはできません。RAMはデータを読み出すことのほか、データを書き込むこと、データを書き換えることが普通にできるメモリです。

 1970年代にメモリICが登場したころは、メモリICを実現する技術がまだそれほど発達しておらず、メモリICの種類はきわめて少ないものでした。粗く言ってしまうと、メモリICは2種類しかありませんでした。不揮発性メモリのROMと、揮発性メモリのRAMです。ROMはプログラム・メモリとデータ・メモリを兼ねており、RAMはワーク・メモリでした。このため、デジタルシステムを構成する最小単位は、マイクロプロセッサ、ROM、RAMになっていました。

図2 1970年代のメモリICとデジタルシステム
図2 1970年代のメモリICとデジタルシステム

ROMの進化形、フラッシュメモリ

 その後、半導体技術の進化と発展によってメモリICはその種類を増やしていきました。ROMからは電気的にデータを書き込み可能な「EPROM(紫外線消去型EPROM)」が誕生し、さらには電気的にデータを書き換えられる「フラッシュメモリ(フラッシュEEPROM)」が発明されました。

 フラッシュメモリはその後に改良が加えられ、現在はプログラム記憶用の「NORフラッシュメモリ」と、データ記憶用の「NANDフラッシュメモリ」が市販されています。NORフラッシュメモリはランダムな読み出しを高速に実行できるので、プログラム記憶用に普及しました。最近のNORフラッシュメモリは単体ではなく、マイクロコントローラのプログラム記憶用ROMに埋め込みメモリとして大量に使われています。このNORフラッシュメモリを内蔵したマイクロコントローラは「フラッシュマイコン」と呼ばれています。

 NANDフラッシュメモリは、ランダムな読み出しは低速ですが、アドレスが連続したデータの読み出しは高速に実行します。そこでオーディオ・データや写真データ、ビデオ・データなどの記憶用メモリとして普及しました。またDRAMやNORフラッシュメモリなどに比べると記憶容量当たりの製造コストがきわめて低いという特徴があることから、パソコンの外部記憶用途にも使われています。NANDフラッシュメモリの記憶容量はきわめて大きく、64Gbitのシリコンダイが量産されています。研究レベルでは、記憶容量がさらに大きな128Gbitのシリコンダイが試作されています。

RAMは不揮発性化の研究が盛ん

 RAMは、記憶容量当たりのコストが低い「DRAM(ダイナミックRAM)」と、高速・低消費の「SRAM(スタティックRAM)」に分かれました。PCやサーバー、それからデジタル家電、モバイル機器などに使われているRAMは、すべてコストの低い大容量DRAMです。

 DRAMは、1970年代〜1980年代は記憶容量当たりのコストが最も低いメモリICとして、3年で4倍という物凄いペースで記憶容量を拡大していきました。ただし1990年代以降は記憶容量の拡大ペースが鈍り、高速化のペースが強まっています。また記憶容量当たりのコストでDRAMよりも低いフラッシュメモリが1980年代末に登場し、現在では最もコストの低いメモリICの座をNANDフラッシュメモリに譲っています。現在のDRAM製品の最大容量は4Gbitです。

 DRAMはデータの読み出しと書き込みの両方が高速であり、非常に使い勝手の良いメモリICなのですが、電源を切るとデータが消えてしまう(揮発性)という弱点があります。不揮発性メモリにはフラッシュメモリがあるのですが、データの書き込み速度がきわめて低いという弱点があるので、DRAMと同様の用途には採用しづらい。

 そこでDRAMと同等の高速性を備えながら、電源を切ってもデータが残る(不揮発性)メモリの研究が盛んになっています。これらのメモリは「次世代不揮発性RAM」と呼ばれています。次世代不揮発性メモリは記憶原理の違いにより、FRAM(強誘電体RAM)、MRAM(磁気RAM)、PCMあるいはPRAM(相変化RAM)、ReRAM(抵抗変化RAM)といったメモリがあります。これらのメモリICの中でFRAMとMRAM、PCMはすでに商品化されていますが、記憶容量はDRAMよりもずっと低く、用途はきわめて限定的です。今後の技術開発による低コスト化と大容量化が、次世代不揮発性メモリには強く期待されています。

図3 メモリICの種類
図3 メモリICの種類




提供:日本テキサス・インスツルメンツ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2013年3月31日

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