WPC
WPCとは、ワイヤレス(非接触)で電力を供給して2次電池などに充電する「ワイヤレス充電(ワイヤレス給電)」技術の国際標準規格を策定する業界団体。英語では、「Wireless Power Consortium」と表記され、その頭文字を取ってWPCと呼ばれている。2008年12月に設立された。
現時点(2012年11月15日現在)で正会員は22社。半導体/電子部品メーカーとしては、テキサス・インスツルメンツ(TI)や東芝、ソニーなど、携帯電話機メーカーとしてノキアやファーウェイなど、電池メーカーとしてはパナソニックなどが加盟している。このほか、準会員として参加している企業もある。現在の加盟企業は、正会員と準会員を合わせると129社にのぼる。非常に大型の業界団体と言えるだろう。
まずは5Wの低電力向けから
WPCが最初に策定した標準規格は、最大5Wの低電力電子機器(デバイス)向け「Qi規格(Volume-I:Low Power規格)」である(図1)。2010年7月に策定が完了した。Qiは「チー」と発音する。
この規格は、携帯電話機やスマートフォンなどの電子機器に向けたもの。実現技術としては、電磁誘導方式を採用する。これは、2個のコイルを対向させて配置し、一方のコイルに電流を流すと磁界が発生し、これがもう一方のコイルと結合することで、このコイルにも電流が流れるというものだ。この電流(電力)を使って、2次電池に充電する。
このほか、WPCでは、さらに大きな電力の供給に向けた標準規格の策定を進めている。まずは、現行の低電力電子機器向け規格の枠内で、充電可能な電力を最大で15Wに高める予定である。タブレット端末や電子ブック・リーダーなどへの適用が可能になる。
その次は、最大120Wがターゲットとなる。現在、WPC内のミドル・パワー・ワーキング・グループ(Middle Power Working Group)において、充電可能な電力を最大120Wに引き上げる標準規格「Volume-II:Mid Power規格」の策定を進めている。ノート・パソコンや医療用電子機器、電動工具への電力供給が対象となる。
さらに将来的には、1kW程度の電力供給を可能にする「Volume-III:High Power規格」の策定も進められる予定である。この規格が実用化されれば、電気自動車や電動アシスト自転車などのワイヤレス充電が可能になる見込みだ。
WPC1.1準拠ICも登場
「Qi規格(Volume-I:Low Power規格)」に準拠したICは、すでにさまざまな半導体メーカーが製品化している。
テキサス・インスツルメンツ(TI)では、トランスミッタ(送電)ICとレシーバ(受電)ICともに複数製品用意している。例えば、トランスミッタICでは、+5V入力に対応した「bq500211」や、+19V入力に対応した「bq500210」がある。前者は、「Type A5」と「Type A11」、後者は「Type A1」と「Type A10」の送電コイルに対応する。レシーバICでは、+5Vの安定化出力に対応した「bq51013A」や「bq51014」、「bq51011」を製品化している。
最近では、WPC1.1(System Description Wireless Power Transfer Volume I: Low Power Part 1: Interface Definition Version 1.1)仕様に準拠した製品も投入している。トランスミッタICの型番は「bq500410A」、レシーバICは「bq51050B/bq51051B」である。異物検出(FOD:Foreign Object Detection)機能を搭載したことが特長だ。さらに、「Type A6」の送電コイルに対応することで充電範囲を70mm×20mmに広げたと同時に、システム効率を70%程度に高めた。
テキサス・インスツルメンツの電源IC製品ラインナップ
提供:日本テキサス・インスツルメンツ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2013年3月31日
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