アナログ・デバイセズの実用回路集「Circuits from the Lab」の使い方:自分で作らなくてもここまでできる!
アナログ・デバイセズの実用回路集「Circuits from the Lab」を活用して、ルネサス エレクトロニクスのマイコン評価環境とつないで、お手軽、簡単データアクイジションシステムを構築してみましょう!
これまで、ソリューションコラムやソリューションライブラリでルネサス エレクトロニクス(以下、ルネサス)とアナログ・デバイセズの製品を組み合わせた事例を何度か紹介して来ましたが、実際に“中の人たち”が行ったことと同じように、アナログ・デバイセズが提供している実用回路集「Circuits from the Lab®」などの技術情報を活用した評価の流れを紹介します。
実用回路集「Circuits from the Lab」とは
ソリューションエッジ上でも何度か取り上げているアナログ・デバイセズの実用性の高いコンテンツです。アナログ・デバイセズの製品を組み合わせたアナログ信号処理のサブシステムとして、350種類以上のアプリケーションごとの回路構成をベンチマーク、プログラム、設計情報、回路基板などをまじえて紹介しています。
<関連リンク:実用回路集Circuits from the Lab®>
「コンバータが決まったけど、どのアンプ選べばいいのだろ?」と悩むような時にも参考になりますし、実際の基板を入手して確認することもできます。(注意:“実用”の名の通り具体的な用途向けにデザインされているため、実用回路集が自分の要求する仕様にフィットしない場合もありますが、それでもデザインのたたき台にはなるかと思います!)
12bit 300kspsのA/Dコンバータ+絶縁回路をMTKと組み合わせる!
今回の事例として、マルツエレックさんが提供しているマイコントレーニングキット(MTK)とアナログ・デバイセズの12ビットの逐次比較型A/Dコンバータを組み合わせて評価するケースを取り上げて見ましょう。
12bit300kspsのA/Dコンバータ+絶縁ソリューション:実用回路集CN0335とは
ここで参照する、アナログ・デバイセズの実用回路集(Circuits from the Lab、以下は実用回路集)は、「CN0335:12-Bit,300 kSPS,Single-Supply,Fully Isolated,Data Acquisition System for ±10V Inputs」というサーキットノートです(残念ながらまだ和訳されていないようです)。この題名を簡単に訳すと「12ビット、300Kサンプル毎時、単電源、完全絶縁な±10V(アナログ)入力のデータサンプルシステム」のようになります。
具体的な回路構成としては、AD7091R(逐次比較型A/Dコンバータ+リファレンス内蔵)、AD8606(オペアンプ)、ADUM5401(デジタルアイソレータ+絶縁型DCDCコンバータ)で構成されています。-10V〜+10Vのシングエンド入力信号を、オペアンプで+0.1V〜2.4Vにアッテネーション(減衰)させて、5Vシングルエンドアナログ入力のAD7091Rの入力レンジにおさめています。さらにA/Dコンバータの(A/D変換された)デジタル信号は、デジタルアイソレータを使用することで、ホストシステム側と電源も含めて絶縁した状態でデータキャプチャーする場合に参考になるサブシステムです。
PMODに準拠したCN0335基板を使ってMTKと接続する
前述のように実用回路集は技術文書だけでなく、コンテンツの回路をそのまま基板に起こしたハードウェアも提供しています。今回のCN0335の基板はPMOD™(Peripheral MODule)と呼ばれる形式のシンプルなインタフェース形式のボード(EVAL-CN0335-PMDZ)です。こちらを購入すれば、アナログ回路設計をスキップしてシステムの評価を開始できます。
PMODとは
PMODはDigilent社の評価基板のインタフェース規格です。さまざまなデバイスの評価基板のインタフェースを統一することで、同じくPMODのインタフェースを持つホストシステム基板と組み合わせることで、目的に応じた開発評価環境を簡単かつ低コストに構築できるように策定されています。PMODの仕様については下記URLのPDFをご覧ください。
<関連リンク:Digilent社のDigilent Pmod™ Interface Specification(PDF)>
また、「センサー入力で差動入力がどうしても必要!」といった場合は、アナログ・デバイセズのAD7091評価ボード(EVAL-AD7091RSDZ)やDigilent社が提供するPmodAD6のようなコンバータ単体評価ボードを利用して、自分で設計したアナログフロントエンド回路と合わせてチューニングを行うこともできるでしょう。
マルツエレック販売マイコン・トレーニング・キット(MTK)
今回はホストシステムとして、マルツエレックさんの提供するMTK-RL78G14(RL78/G14マイコン・トレーニング・キット)を利用する場合を見てみます。MTKは評価対象となるマイコンの主な機能を追加モジュールなしに評価、開発ができるよう必要な周辺機能をリッチに搭載した評価基板です。
<関連リンク:MTK-RL78G14(RL78/G14 マイコン・トレーニング・キット)>
ハードウェアのセットアップ
AD7091Rはデジタル側のインタフェースは汎用的なSPIバスを持っていて、それがPMODの端子に出ています。従って、EVAL-CN0335-PMDZを前述のMTK-RL78G14のPMODコネクタに挿せばハードウェアのセットアップは終了です。(箱から出して挿すだけ!!)
ソフトウェアの入手
もちろんボードを挿しただけでは、評価ボードに魂が吹き込まれていませんので、マイコンを動かすソフトウェアが必要です。先ほどのCN0335のページで、設計支援データ→デバイスドライバを見ると「AD7091R−No-OS Driver for Renesas Microcontroller Platforms」というリンクが見つかりました。一応翻訳しておくと「AD7091R向けのOSに依存しないドライバソフトウェア(ルネサスマイコンプラットフォーム用)」となります。
このリンクを進むと、アナログ・デバイセズのWikiページにたどり着きます。
ここでは、先ほどAD7091R単体評価ボードで紹介したPmodAD6の写真と、どうやらドライバもあるようです。PmodAD6もCN0335の基板 EVAL-CN0335-PMDZもデジタル側はPMODに準拠していて、A/Dコンバータも同じAD7091Rを使っているため、ソフトウェア関連も流用可能ということでリンクされているのですね。
アナログ・デバイセズ Wikiも英語のページしかありませんが、ページ内のDRIVER DESCRIPTION(ドライバーの説明)の項目でダウンロード可能なソフトウェアの構成が説明されています。
AD7091Rのデジタル出力はSPI形式なので、マイコンとはSPI通信を行います。このページでは、SPI通信の基本的な関数(初期化、書き込み、読み込み)と、それらをベースにしたAD7091Rに対する各種処理関数が紹介されています。
さまざまな環境に対して、テンプレートとなるソースコード(AD7091R Generic Driver)をはじめとして、MTKに搭載されたディスプレイにA/D変換結果を表示するまでのソースコードが含まれたもの(AD7091R RL78G13 Driver)など、構築したハードウェアや開発環境に合わせて、数種類がアップロードされています。
このWikiページの下のほうにある「RENESAS RL78G14 QUICK START GUIDE」というセクション以降が、各種環境にそれぞれの事前準備、必要なハードウェア/ソフトウェア環境の仕様が記載されていますので、お持ちの環境に合わせてご参考ください。
まとめ
いかがでしたでしょうか? アナログ・デバイセズのコンテンツと、周辺機能をリッチに搭載したルネサスマイコントレーニングキットを活用することで、ハンダゴテも、ソフトウェアのフルスクラッチも不要で可能な開発評価環境の構築ガイドでした。実用回路集はアナログ回路の紹介だけでなく、回路を評価した結果や、理論式も紹介しているので、自分が作った回路の評価の際に、参考数値として使っていただくこともできますね。今回のAD7091Rだけでなく、他にもルネサスマイコン向けドライバを公開しているデバイスがありますので、ぜひご活用ください。
提供:ルネサス エレクトロニクス株式会社 / アナログ・デバイセズ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2015年5月31日
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.