「マイコン基礎の基礎」の新シリーズとして、マイコンを使おうとしたときに多くの方が抱く素朴な疑問にお答えする「マイコンQ&A」をお届けしていきます。
マイコンはコンピュータの機能を持った部品
Q:マイコンとパソコンは何が違うのですか?
A:マイコンは「マイクロコンピュータ」、パソコンは「パーソナルコンピュータ」を略した言葉です。もともと意味の違う言葉なのですが、同じような意味で使われていた時代もあるので、分かりにくくなっています。
コンピュータは、昔は「電子計算機」と訳されていましたが、複雑で大量の科学技術計算や事務計算を短時間に実行する装置として作られました。20世紀の中ころに初めて実用化されましたが、とても大きく、複雑で、高価な装置でした。大きさは1つの部屋を埋めつくすぐらいあり、内部は数千個から数万個の部品(真空管やトランジスタ)を複雑に配線した電子回路であり、価格は数千万円から数億円と言われていました。
1958年にTI(テキサス・インスツルメンツ)でIC(集積回路)が発明されて、多数のトランジスタを組み合わせた電子回路を、1個の小型部品として実現できるようになりました。1960年代後半には、1000個以上のトランジスタを1個の部品として集積したLSI(大規模集積回路)が作られるようになりました。
1971年に、コンピュータに必要な機能を1個の部品として集積したLSIが発売されました。「とても小さいコンピュータ」という意味で、「マイクロコンピュータ」「マイコン」と呼ばれるようになりました。
マイクロコンピュータは「コンピュータ」といっても完成された装置ではなく、コンピュータを作るための部品です。1971年に登場したTIのTMS1000シリーズ、インテルの4004は、どちらも電卓を作るための部品として開発されたものです。本格的なコンピュータと比べると演算性能はとても低いものでしたが、さまざまな電子装置の制御に適していました。電卓やコンピュータ以外にも、さまざまな電子装置の制御を行うために広く用いられるようになりました。
パソコンは完成されたコンピュータ装置
Q:マイコンというのは部品なのですね。ではパソコンとはどんなものでしょうか?
A:パソコンは、個人向けとして作られた小型、低価格のコンピュータ装置です。登場したころは性能もとても低くて、おもちゃの一種と思われることもありましたが、その後どんどん高性能になり、大量生産されて価格も安くなっていきました。
それまでのコンピュータは大きな企業や大学がやっと1台買えるというぐらい高価であり、勤務先や学校にコンピュータがあったとしても、1人で1台を独占して使うことは考えられませんでした。マイコンが登場したことによって、性能は低くても、個人でも買えるような安いコンピュータを作ることが可能になったわけです。
1974年にアメリカのMITSという会社が発売したAltairが、世界最初のパソコンと言われています。Altairは机の上に載るほど小さく、数万円と安かったので、発売後すぐに数千台の注文が入ったといいます。Altairに続いてさまざまな個人向けコンピュータが発売されるようになりましたが、最初は実用よりも、ホビーやプログラムの学習に使われることが多かったようです。また、価格を安くするために、組み立てキットで販売したり、ケースなしのマイコン基板で販売するものもたくさんありました。
日本で最初に広く普及した個人用のコンピュータも、NECのTK-80というケースなしのマイコン基板でした。それで、パソコンという言葉が普及するより前に、マイコンという言葉が広く普及しました。そのころは、部品としてのマイコン(LSI)だけでなく、マイコン基板や、ケースに入ったパソコン製品までひっくるめてマイコンと呼ぶ人が多かったのです。
1980年代になると、IBMのThe PCシリーズ、NECのPC-9801シリーズなど、パソコンは実用的に広く用いられるようになり、パソコンという呼び方が普及しました。
その他にどんなコンピュータがあるか
Q:マイコン、パソコンの他に、どんなコンピュータの分類があるのですか?
A:コンピュータ装置は、大きさや形、用途によっていくつかに分類されます。
1990年代以降はネットワーク技術が進歩したことから、1台の大型コンピュータによる集中システムから、多数のコンピュータを組み合わせた分散処理システム(クライアントサーバ・システム)に移行していきました。この観点では、コンピュータは「クライアント」と「サーバ」の2つに分けられます。
「クライアント」とは、主にユーザーが操作する端末用のコンピュータであり、実際にはパソコンが多く使われています。「サーバ」とは、クライアントの依頼を受けて複雑な処理を実行する高性能、高信頼性のコンピュータです。
さらに、最近では極めて多くの電子装置にマイコンが組み込まれて使われています。これらの装置は、マイコンが組み込まれた(エンベデッド)機器ということから、「組み込み機器」と呼ばれています。組み込み機器がコンピュータと違うところは、コンピュータはもともとユーザーが自由にプログラムを作って使う汎用の装置なのに対して、組み込み機器はあらかじめ内蔵されたプログラムだけを実行する専用の装置だという点です。
パソコンやタブレット、スマートホンは、最近では一般のユーザーが自分でプログラムを作ることは少ないですが、いろいろなプログラム(アプリ)を自由に利用できる点で汎用のコンピュータ装置と言えます。
部品としてのマイコンも、主にコンピュータに用いられる「マイクロプロセッサ」と、主に組み込み機器に用いられるマイコンに分けられます。組み込み機器に用いられるマイコンは、あまり統一された呼び名はないのですが、「1チップマイコン」「制御用マイコン」「組み込み用マイコン」「マイクロコントローラ」などと呼ばれています。
TIでは、さまざまな組み込み機器に使用できるように、多数のマイコン製品をラインアップしています。最も小型、低価格かつ徹底して省電力を進めたMSP430™ファミリは、産業用機器、計測機器、民生用機器、医療機器など幅広い用途で活躍しています。
シリーズ | 特長 | ビット数 | クロック | その他 |
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MSP430F1x | ベーシック | 16ビット | 〜8MHz | |
MSP430F2x/4x | 汎用 | 16ビット | 〜16MHz | LCDドライバ内蔵(F4x) |
MSP430FRxx | FRAM搭載、超低消費電力 | 16ビット | 〜16MHz | |
MSP430G2x | バリュー・ライン、低価格 | 16ビット | 〜16MHz | |
MSP430L09x | 超低電圧動作 | 16ビット | 〜4MHz | 0.9V動作 |
MSP430F5x/6x | 低電力+高パフォーマンス | 16ビット | 〜25MHz | USB内蔵、LCDドライバ内蔵(F6x) |
■MSP430 超低消費電力マイコン・ファミリ
■MSP430 LaunchPadバリュー・ライン開発キット
■新FRAMマイコン:「MSP430FR5969」
■TIのマイコン製品
■TIのツールの購入はこちらから:TI eStore
※MSP430はTexas Instruments Incorporatedの商標です。その他すべての商標および登録商標はそれぞれの所有者に帰属します。
提供:日本テキサス・インスツルメンツ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2015年3月31日
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