FA、センサ、タッチパネルなどの産業用機器、ビル・オートメーションから民生用機器に至るまで、さまざまな機器で低消費電力への要求が日々厳しくなっている。一方で、リアルタイムのセンサ信号処理、高画質化するユーザー・インタフェース、機器間の通信などマイコンの高性能化への要求も厳しくなる一方だ。
これまで、バッテリ動作機器など超低消費電力が要求される用途では、テキサス・インスツルメンツ(TI)の『MSP430™』ファミリが広く使われてきた。『MSP430』マイコンは動作電流とスリープ電流を極小に抑えるとともに、豊富なスリープモードとスリープからの高速復帰という強力な武器を持つ16ビットの超低消費電力マイコンだ。必要なときだけCPUを間欠動作させることで、バッテリの使用時間をきわめて長くできる。
ただ、最近ではマイコンの処理性能への要求がさらに厳しくなり、より高性能なマイコンを求める声も大きくなってきた。TIではそれに応えて、『MSP430』ファミリの超低消費電力プロセスと充実した周辺機能を受け継ぎ、高性能32ビット・コアのARM® Cortex®-M4Fを搭載した『MSP432™』マイコンを発売した(図1)。
『MSP432』マイコンは、新次元の超低消費電力と高性能を両立した初めてのマイコンと言える。消費電力のために処理性能を諦めることも、処理性能のために消費電力を諦めることも、どちらも必要なくなった。
Cortex-M4Fでここまで低消費電力にできる
低消費電力のARMマイコンとしてはCortex-M0/M0+がある。だが、Cortex-M0/M0+は命令数や機能が削減された低コスト向けのコアで、32ビットマイコンとして十分な性能とは言えない。同じCortex-Mファミリでも、DSP/FPU搭載など信号処理演算向けの高い演算性能をもつ高性能版のCortex-M4Fなら、Cortex-M0/M0+より一桁高い処理性能を期待できる。
TIは、『MSP430』マイコンで培った超低消費電力技術によって、Cortex-M4Fコアを用いてCortex-M0/M0+と同等の低消費電力を実現した。『MSP432』マイコンは、EEMBCの低消費電力ベンチマークであるULPBench™において、他社のCortex-M4F製品より35%も高い167.4のスコアを記録している(図2)。
しかも、『MSP432』マイコンは、EEMBCの性能ベンチマークであるCoreMarkにおいて、Cortex-M4Fの最高スコアである3.41/MHzを記録した。最小の電力と最高の性能を妥協せずに実現したといえるだろう。
『MSP432』マイコンは、製造プロセスの徹底した低消費電力化によりリーク電流を低減するとともに、オンチップDC/DCコンバータを採用してLDOより40%省電力化、RAMリテンション機能を採用して1バンクあたり30nA削減、DriverLibをROM化してフラッシュより最大35%省電力化など、さまざまな省電力技術を駆使している。それによって、最大48MHz動作で動作電流を95μ/MHzに、スリープ電流(RTC動作)を850nAに抑えている。
また、同時リード/消去可能な2バンク・フラッシュや128ビットのフラッシュ・バッファを採用してアクセスを高速化し、フラッシュよりも高速なROMにDriverLibを置いたことなどにより、高速化を実現している。
さらに、『MSP430』マイコンの多彩なペリフェラルを受け継ぐとともに、より低電力化と高性能化を進めた新開発のペリフェラルを搭載していることも特長と言える。例えば、1Mspsの新設計14ビットA/Dコンバータは、動作電流を375μAに抑えながら、13.2ENOB(有効ビット数)の高性能を実現している。
『MSP430』マイコンの高性能版、最小電力のCortex-M4Fとして活用は容易
『MSP432』マイコンは、『MSP430』マイコンで実績を持つ内蔵ペリフェラル、ソフトウェア・ツール、エコシステムを継承していることから、『MSP430』マイコンのユーザーはすぐに『MSP432』マイコンを使いこなせるだろう。一方、『MSP432』マイコンはARMマイコンの豊富なソフトウェア・ツール、エコシステムも継承している。各社のCortex-M0/M0+マイコンやCortex-M3/M4Fマイコンを利用してきたユーザーも、容易に『MSP432』マイコンの設計を始めることができる。
TIでは、『MSP432』マイコンの開発を簡単に始められる評価用ボードとして、48MHz動作、256Kバイトフラッシュ、64KバイトSRAMの『MSP432P401R』マイコンを搭載したローンチパッド『MSP-EXP432P401R』を提供している(図3)。TIのオンライン・ストアで、12.99ドルで入手できる(ご購入はこちらから)。
TIの他のローンチパッドと同様に、『MSP-EXP432P401R』はターゲット回路とともにオンボード・エミュレータを搭載しており、PCのUSBポートに接続してすぐに使用できる。『MSP432』マイコンの全ての入出力ピンが基板に引き出されており、そのうち40ピンのI/Oコネクタには各種のブースターパック(拡張ボード)を接続して利用できる。
さらに、『MSP-EXP432P401R』ローンチパッドは追加のツールなしでシステムの電力消費量を測定できるEnergyTrace™+テクノロジーを搭載しており、超低消費電力のシステム開発を強力にサポートしている。
TIでは、超低消費電力に特化した『MSP430』マイコン、低消費電力+高性能の『MSP432』マイコン、低消費電力+高性能と使いやすい無線機能を備えたSimpleLink™の3つを柱として、低消費電力が要求されるさまざまな分野のニーズに応えていくという(図4)。
【関連リンク】
- 『MSP432』マイコンの詳細
- 64KバイトSRAMの『MSP432P401R』マイコンを搭載したローンチパッドの詳細
- 『MSP432』マイコン・データシート
- 『MSP430』マイコンの詳細
- TIのオンライン・ストア
『MSP430』超低消費電力マイコン日本語コミュニティを情報共有に、ぜひご活用ください。
製品についてのご質問は、日本TIプロダクト・インフォメーション・センターへお問い合わせください。
MSP430、MSP432、EnergyTrace+およびSimpleLinkはTexas Instrumentsの商標です。その他すべての商標はそれぞれの所有者に帰属します。
提供:日本テキサス・インスツルメンツ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2016年3月31日
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