8スイッチを内蔵するチラツキのないLEDドライバで、マトリックス・ヘッドライト内のLEDを個々に制御:アナログ回路設計講座(9)
次世代車載照明として普及が始まりつつある「マトリックス・ヘッドライト」。個々のLEDを細かく制御することで、より豊かな照明での表現が可能になる。今回は、そうしたマトリックス・ヘッドライトを実現するドライバとして、最大512個ものLEDを個々にオン/オフ/調光制御できるIC「LT3965」を紹介しよう。
LEDは、設計柔軟性だけでなく回路の実用性や堅牢性にも優れるため、自動車の設計に用いると、極めて長寿命かつ高性能で独創的なヘッドライト・デザインを生み出すことができます。LEDによって実現される他にはない魅力的な照明デザインは、新モデルと旧モデルまたは高級車と大衆車の差別化に役立つため、LED照明を採用する自動車設計者が多くなってきています。
車載照明がLEDの時代に突入したのは疑いようのない事実ですが、まだ、その能力が全て発揮されているわけではありません。今後、新しい形や色をもつLEDが登場するにつれ、さらに多くのLED照明が車に搭載されるようになり、個々のLEDをより細かく制御できるようになるでしょう。単純なLED列の代わりに、コンピュータ制御で個別に調光でき、無制限のリアルタイム・パターン制御およびアニメーション表示可能なLED「マトリックス」が主流になるでしょう。このような未来は、もう、始まっています。リニアテクノロジーのマトリックスLEDドライバ、LT3965を使用すれば、次世代の車載照明を設計できるのです。
1つのデバイスで8つの電力スイッチをI2C制御
基本的なLEDヘッドライトの設計は、一定のLED電流で動作するため、輝度も一定です。しかし、そのために、LEDで実現できる機能の多くが眠ったままになります。マトリックス・ヘッドライトは、LED列内の個々のLEDの輝度を制御できるようにすることで、LEDに本来備わっている能力を活用します。
コンピュータ制御された電力スイッチを介してマトリックス内の各LEDをアドレス指定し、LEDを個々にオン/オフもしくはPWM調光できるようにし、独自のパターンや機能を持たせることは、理論上は難しくありません。LED(または複数のLEDから成るセグメント)には、それぞれ専用のコンバータまたはシャント電力スイッチが必要です。シリアル通信機能をもつ従来のドライバ/コンバータICでマトリックス・ドライバを設計することは不可能ではありませんが、LEDマトリックスに必要なスイッチの数が2〜3個を超えると、LEDマトリックスのサイズよりも大きい部品マトリックスが必要になるため、ディスクリート部品でソリューションを設計するのは困難になります。
I2Cインタフェース8スイッチ・マトリックスLED調光器のLT3965を使用すると、大規模または小規模のLEDマトリックス(LED数は最大512個)を容易に制御できます。図1に、リニアテクノロジーのデモ回路DC2218上で動作するLT3965を示します。
図1:LEDマトリックス調光器LT3965のデモ回路DC2218は、Linduino™シールド(DC2026)として動作します。このデモ回路は、ヘッドライト、方向指示器、テール・ライト、トリム・パターンを操作します。USBケーブルを介して、リニアテクノロジーのグラフィカル・ユーザー・インタフェースで評価できます。
集積度の高い設計(図2参照)により、部品点数が最小限に抑えられています。LT3965の各チャネルは個別にアドレス指定可能で、以下のような多様な方法でLEDマトリックスを制御できます。
各LT3965は、LED列の中の8つの調光チャネル(8つのLEDまたは8つのLEDクラスタ)を制御できます。
その8つのチャネルで、2つのRGBW LEDモジュール上の赤、緑、青、白の照明を個別に制御し、ダッシュボードやトリム・ライトの輝度調整または色の変更を行えます。
1本の通信バス上の複数のLT3965を個別にアドレス指定可能で、大規模なアレイでLED列を増やすことができます。
LT3965は、1チャネル当たり複数のLEDを制御できますが、複数のチャネルを組み合わせて高電流な1つのLEDを効率的に制御することもできます。
適切な定電流LEDドライバと組み合わせてマトリックス調光器LEDドライバを使用すると、ヘッドライト、昼間点灯用ライト、ブレーキ・ライト/テール・ライト、サイドベンディング・ライト、ダッシュボード・ディスプレイおよび、その他のトリム・ライトに搭載されている個々のLEDをコンピュータ制御できるようになります。LT3965には自動フォルト検出機能が内蔵されており、故障時に個々のLEDを保護し、そのLEDの故障をマイクロコントローラに通知します。
この60VのLT3965には、8つの330mΩ電力スイッチが内蔵されており、それぞれ1つまたは複数のLEDに接続できます。これらの電力スイッチは、特定のチャネル上のLEDをオフにするかPWM調光することで、シャント・デバイスとして動作します。この8つの電力スイッチにより、個別に制御可能な8つの輝度チャネル(最大調光比は256:1)と、LED列内の8つのフォルト防止セグメントを構成できます。
LT3965は、8つの電力スイッチ全てを同時にオンにしたとき(全てのLEDはオフ)、LED1列で500mAの電流をサポートしています。後述するように、電力スイッチを並列に接続して4チャネルのLEDを1Aで駆動することも可能です。LEDの数や電流量にかかわらず、LED列は、マトリックス調光器の高速トランジェントに対応できる帯域幅をもつ、適切に設計されたコンバータで駆動する必要があります。本稿にリファレンス・デザインをいくつか掲載します。
昇圧後デュアル降圧モードのLT3797と2つのLT3965を使用して、2列16個のLEDを500mAで駆動
LT3965の8つのシャント電力スイッチは、8チャネルのLEDの輝度を500mAで制御します。8LEDのマトリックス調光器システムのLED列内の電圧は、指定された時間内にオンまたはオフになるLEDの数に応じて、0V〜26Vの値をとります。これらのLEDを駆動するのに推奨されるコンバータ・トポロジは、高帯域幅で、出力コンデンサを持たない(または容量が小さい)30V降圧コンバータです。この降圧トポロジを構築するには、9V〜16Vの自動車用電源の入力電圧を「事前昇圧(プリブースト)」して、降圧レギュレータが動作可能な30Vレールにする必要があります。
トリプル出力LEDコントローラのLT3797は、事前昇圧機能と降圧機能の両方をシングルICソリューションとして提供します。LT3797は、1つのチャネルは昇圧レギュレータとして構成し、残りの2つのチャネルを降圧LEDドライバとして構成することができます。2つの降圧LEDドライバはそれぞれ1列のマトリックス調光LEDを駆動できます。このトポロジには多くのメリットがありますが、最大の特長は、LED列の電圧がバッテリ電圧より高くなっても低くなっても、回路が最適な動作を続けられることです。
図1のデモボードの回路図を図3に示します。
図3:昇圧後デュアル降圧モードのLEDドライバLT3797を2つ、マトリックス調光器LT3965を2つ使用して、カーバッテリから500mAのLEDを16個駆動するLT3965マトリックスLED調光器システム。I2Cシリアル通信は、各LEDの輝度を制御し、LEDおよびチャネルのフォルトをチェックします。
これは、昇圧後デュアル降圧モードのLT3797とLT3965を使用して構成した、16LED、500mAのマトリックス調光ヘッドライト・システムです。各LEDは別々にオン、オフ、PWM調光(最低輝度1/256)を制御可能です。LT3797のスイッチング周波数は350kHzで、AM帯の外側(EMIに適合)にあります。そのため、同じ350kHzクロックから生成されるLT3965のPWM調光周波数は170Hzで、可視範囲より高くなります。システムを適切に同期することで、LT3797とLT3965で構成されたマトリックス・ヘッドライトはちらつきなしで動作します。
LT3797の降圧モード・コンバータは、出力コンデンサを持たず(または小容量)で、適切に補償された制御ループを備えており、極めて高速なトランジェント応答を実現するために最適化されています。このような帯域幅30kHz未満のコンバータは、LEDを任意にオン、オフ、PWM調光することで発生するLEDの高速トランジェントに対応できます。LEDセンス抵抗上にフィルタ・コンデンサを配置すると、マトリックス調光器のトランジェント応答性能を高速化するために出力コンデンサをなくすか小容量にした結果失われる、制御システムのポールを代替できます。
スイッチ・ノードのチャージ・ポンプを使用してLT3965のVINピンに電力を供給し、LED+電圧より7V高い電圧にすることで、駆動時にトップ・チャネルNMOSを完全にエンハンスできます。LT3965のRDS(ON)が低いNMOSスイッチは、8つのシャント・スイッチが全てオンで、LED列全体がオフの場合でも、デバイスの温度を上昇させることなく、高電力動作が可能です。その場合、LT3797のLEDドライバは、8つのシャント スイッチ全てによってもたらされる仮想出力短絡に問題なく対応でき、次にオンになるLEDを通して500mAに素早く調整します。
デモ回路DC2218(図1)には、図3に示すシステムが搭載されており、Linduino™ Oneデモ回路のDC2026を介して接続されたI2Cマイクロコントローラによって、マトリックス・ヘッドライトを操作できます。大規模なLinduinoシールドとして動作するDC2218は、さまざまなヘッドライト・パターンを表示したり、リニアテクノロジーのグラフィカル・ユーザー・インタフェース(GUI)とやりとりしたりするための最高400kHzのシリアル・コードを備えています(図4)。
図4に示したGUIを使用すると、ALL CHANNEL(全チャネル)モードのコマンドとSINGLE CHANNEL(単一チャネル)モードのコマンドでLEDの輝度やフォルト保護機能を確認できます。また、FAULT CHECK読み書きコマンドで、開放または短絡したLEDをチェックできます。このデモ回路システムでは、ちらつきのない動作、フォルト保護、トランジェント動作を確認できます。DC2218は、12V DC電源に直接接続できます。また、GUIを実行するコンピュータから制御でき、シンプルなUSB接続で再プログラムできます。
並列チャネルを使用する1AマトリックスLEDドライバ
複数の1A LEDチャネルで構成されたマトリックスを駆動するのに、LT3965が使用できます。LT3965の電力スイッチは簡単に並列接続できるため、2つの電力スイッチで1AのLED電流を分流し、1つのLT3965ごとに4つの1Aチャネルを制御することができます。並列接続した電力スイッチによって高電流に対応するための1つの方法は、逆位相の各並列スイッチをPWM周期の50%のみ動作させることです。1つのNMOS電力スイッチを介して交互に半分の時間だけ1A動作させることで、発生する実効熱量は、その間ずっと、同じNMOSを500mAで動作させた場合とほぼ同じになります。
図5は、2つのLT3965と、1つの昇圧後デュアル降圧モードLT3797によって駆動される8つのLEDを使用した1Aマトリックス・ヘッドライト・システムを示しています。
PWM調光時、LT3797は、8つのスイッチの位相を1/8サイクルずらす(図6参照)、独自の手法をとります。この1Aマトリックス・システムでは、LT3797の2つのチャネルが並列のペアとして組み合わされます。ペアになるチャネルは、互いに180°離れた逆位相です。つまり、チャネル8とチャネル4、チャネル7とチャネル3、チャネル6とチャネル2、チャネル5とチャネル1がペアになります。並列化されたチャネルが交互にシャントすることで、PWM周波数は実質的に2倍になり、シャントされた電流と熱は拡散されるというメリットがあります。この仕組みが正しく動作するためには、任意の1つのシャント電力スイッチの最大デューティ・サイクルを50%にする必要があります。なぜなら、全時間の50%の間「オン」になる2つの逆位相スイッチ(それぞれが全時間の50%の間、1つのLEDをシャントする)は、LEDを全時間の100%の間「オフ」にしてしまうからです。
それぞれのLT3965は、(LT3797で昇圧された20Vチャネルからの)1A降圧モードLT3797の2つのチャネルによって駆動される4つの1A LEDの輝度を制御します。この高電力かつ堅牢なシステムを拡張することで、LT3965の数を増やしてより多くのLEDに電力を供給したり、より多くのチャネルを並列に接続して高電流LEDに電力を供給したりできます。1チャネル当たり2つのLEDを1Aで駆動して、この柔軟性に優れたヘッドライト・システムの電力をさらに高められます。
1チャネル当たり複数のLED
LT3965は、1チャネル当たり1〜4個のLEDをサポートできます。フォルト保護や高解像度のパターンを実現するためには、1つ1つのLEDを個別に制御できると良いですが、必ずしもそれが必要なわけではありません。1チャネル当たりのLED数を増やしても、必要なパターンや調光を実現できるデザインも存在します。1チャネル当たりのLED数を増やすと、システムに必要なマトリックス調光器の数を削減できます。ヘッドライト、信号灯、テール・ライトのセグメントは、同じ輝度のLEDを4個まで持つことができます。緊急用LEDライトも、同じパターンで点滅またはウェーブする、3つまたは4つのLEDの組を持つことができます。
図7:LT3965はフレキシブルで、個別のLED列上の複数のLEDチャネルを駆動できるほか、1チャネル当たり1〜4個のLEDを駆動できます(全体のドライバ回路は図3とほぼ同じですが、本図に示すようにLT3965は1つだけです)。
図7の回路は、1チャネル当たり2つのLEDを配したシステムを示しています。図3の回路とLEDの数は変わりませんが、LT3965マトリックス調光器が2つではなく1つに減っています。
I2Cコマンドが、あるチャネルのオン、オフ、調光をLT3965に指示すると、そのチャネルのシャント電力スイッチによって制御されている2つのLEDが変化します。LT3965の電圧制限範囲内に保つため、図2のように500mAの16個のLEDを、2つの直列LED列に分ける必要があります。図2と同じLT3797回路を使用できますが、1つのLT3965のみで2列の輝度を制御します。このように、LT3965内の各NMOSシャント電力スイッチは個別に制御できるため、マトリックス設計の可能性は無限大に広がります。
全チャネル・モードおよび単一チャネル・モードのI2CコマンドによるちらつきのないPWM調光とフェード
LT3965のI2C命令セットには、1ワード・コマンド、2ワード・コマンドおよび、3ワード・コマンドがあります。これらのコマンドは、マスタ生成クロック・ライン(SCL)と並走するシリアル・データ・ライン(SDA)上を、最高400kHzの速度で伝送されます。マスタ・マイクロコントローラは、全チャネル・モード(ACM)または単一チャネル・モード(SCM)書き込みコマンドを送信して、LEDチャネルおよびLT3965アドレスの輝度、フェード、開放しきい値および、短絡しきい値を制御します。
ブロードキャスト・モード(BCM)、ACM、SCMの読み出しコマンドは、各LT3965がフォルト診断のための開放および短絡レジスタを含む、レジスタの内容をレポートするようリクエストします。フォルトが新しく発生すると、LT3965はALERTフラグをアサートします。マイクロコントローラは、どのLT3965がフォルトをレポートしたか特定し、フォルトのタイプおよびチャネルも確認して、そのフォルトに対応します。複数のLT3965デバイスがフォルトをレポートした場合、LT3965はマスタへのフォルト報告を順番に行うことで、オーバーラップ・エラーを回避します。これにより、アラート応答システムの信頼性および確実性が高まっています。LT3965のデータシートに、レジスタおよびコマンド・セットの全一覧が掲載されています。
ACM書き込みコマンドは、わずか2つのI2Cワードで、1つのLT3965アドレスの8つのチャネル全てを瞬時にオン/オフします。このとき、全てのチャネルは同時にオン/オフに遷移します。多数のLEDをオン/オフすると、大きな電流電圧負荷ステップがDC/DCコンバータに発生します。本稿に示すコンバータは、出力コンデンサなし(または小容量)かつ高帯域幅で、このようなトランジェントにスムーズに対応します。
図8に示すように、多数のLEDを遷移させるACM書き込みによって、目に見えるちらつきが生じることはなく、他のチャネルのLED電流に目立ったトランジェントが発生することもありません。トランジェントがこれほど抑制されるのは、LT3797ベースの高帯域幅降圧モード・コンバータを使用しているからです。
図8:本稿に示すLEDマトリックス・ドライバの設計には、クロスチャネル・トランジェント効果がほとんどないか、皆無です。例えば、半分のチャネルを遷移させても(ここでは同時に2つをオンにし、2つをオフに)しても、他の4つの遷移しないチャネルには影響がないか、ほとんどありません。遷移しないチャネルのちらつきもありません。
SCM書き込みコマンドでは、比較的小さくて速いトランジェントが単一LED上で発生します。SCM書き込みは、同時に1つのチャネルのみの輝度を制御し、オン、オフ、またはフェードあり/なしのPWM調光の間で切り替えます。1/256〜255/256のPWM調光値は3ワード書き込みで伝送されますが、オンとオフはより短い2ワード・コマンドで伝送できます。単一のSCM書き込みコマンド上のフェード・ビットにより、LT3965は、内部的に決定される対数的フェードによって、I2Cトラフィックを増やすことなく、2つのPWM調光レベル間を遷移できます。SCM書き込みコマンドでは、各チャネルの開放しきい値と短絡しきい値を1〜4個のLEDの範囲で設定できます。
各チャネルの短絡LEDフォルト保護と開放LEDフォルト保護
短絡保護と開放保護は、マトリックス調光器ならではのメリットです。各チャネルのNMOS電力スイッチは、1〜4つの直列LEDの間でシャントします。従来のLED列は、LED列全体の開放または短絡に対する保護機能は持ちますが、このようなフォルト状態を知らせる診断フラグを持つデバイスはわずかです。対照的に、LT3965は、チャネルごとの短絡および開放に対して保護およびライドスルーし、正常なチャネルの動作を継続させながら、フォルト状態を記録および通知します。
フォルトがLED列内で発生すると、LT3965はフォルトを検出してALERTフラグをアサートし、対処すべき問題があることをマイクロコントローラに知らせます。開放フォルトの場合、LT3965は対応するNMOS電力スイッチを自動的にオンにして、完全な診断が行われるまで、もしくは、フォルトが取り除かれるまで、フォルトが発生したLEDをバイパスします。
LT3965は、各チャネルの開放フォルトおよび短絡フォルト用のレジスタを保持し、I2Cフォルト読み出しコマンド中に、そのデータをマイクロコントローラに返します。このコマンド・セットには、状態レジスタを未変更のままにする読み出しコマンドと、フォルト・レジスタをクリアする読み出しコマンドが含まれています。これにより、ユーザー・プログラム可能なフォルト診断が実現されます。レジスタは、SCM書き込み、ACM書き込み、BCM書き込みに対応した、次のようなさまざまなモードで読み出すことができます。
SCM(単一チャネル・モード)読み出しでは、単一のチャネルについての開放および短絡レジスタ・ビットを返します。SCM読み出しでは、そのチャネルの開放および短絡しきい値レジスタ、モード制御、8ビットPWM調光値もチェックされます。
ACM(全チャネル・モード)読み出しでは、指定されたアドレスの全てのチャネルの開放および短絡レジスタ・ビットを、ビットをクリアすることなく返します。また、8つのチャネル全てのACM ONおよびOFFビットも返します。
多数のマトリックス調光器LT3965が同一のバスを共有している複雑なシステムでは、まず、BCM(ブロードキャスト・モード)読み出しコマンドが、どのLT3965アドレスによってフォルト・フラグがアサートされたのかをリクエストします。
ACMおよびSCM読み出しコマンドは、フォルトを確認してクリアするために使用できるほか、堅牢なI2C通信システムの全てのレジスタを読み出すために使用できます。
同一バス上に最大16個のLT3965をアドレス指定可能
各LT3965には4つのユーザー選択可能なアドレス・ビットがあるため、一意のバス・アドレスを16個割り当てることができます。ACMおよびSCMの各I2Cコマンドは共有通信バスに送信されますが、アドレス指定されたLT3965のみがアクション可能です。BCMコマンドには、バス上の全てのデバイスが従います。この4ビット・アドレス・アーキテクチャにより、単一のマイクロコントローラと単一のI2C 2ライン通信バスで、最大128個(8×16=128)の個別制御可能なチャネルをサポートできます。LT3965を使用することで、極めて大規模な照明ディスプレイを除き、自動車のヘッドライト、テール・ライト、トリム・ライトに搭載される個々のLEDは全て、単一のI2C通信バスと単一のマイクロコントローラで制御できます。各チャネルに最大4個のLEDを接続できるため、1つの比較的簡単に実装可能なシステムで、最大512個のLEDのマトリックス調光をサポートできます。
まとめ
マトリックスLED調光器のLT3965を使用すると、1つのLED列上にある8つのLED輝度チャネルを制御できます。これにより、自動車照明の設計において、洗練された画期的なデザインの可能性が無限に広がります。I2C通信インタフェースにより、1つのマイクロプロセッサでLED列上の各LEDの輝度を個別に制御できます。I2Cインタフェースのフォルト保護により、LED照明システムの堅牢性が確保されます。マトリックス調光器のチャネルは汎用性が高く、各チャネルで複数のLEDを制御したり、複数のチャネルを組み合わせて高電流のLEDをサポートしたりできます。さらに、最大16個のマトリックス調光器デバイスを同一の通信バス上に配置することで、多くのLEDを備えたシステムを設計できます。自動車のヘッドライト、テール・ライト、フロント・ライト、サイド・ライト、ダッシュボード・ライト、トリム・ライトの次世代の設計は、もう始まっています。
【著:リニアテクノロジー/Keith Szolusha(LEDドライバ製品担当シニア・デザイン・リード)】
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アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2016年11月30日