円または輪形のコアの場合、ほぼ全ての磁界がコア材料に集中し、透磁率は自由空間透磁率よりはるかに高くなります。基板実装型インダクターに関しては、磁界がコア内に拘束され放射されないので、実質的にPCB上の他の部品に干渉しないというメリットがあります。
ただし、コアが拘束できる磁界の量には制限があります。ひとたび材料内の全ての内部磁区がその場に集中すると、コアは飽和します。この現象は、図4のB-H曲線の落ち込みとして示されており、飽和したコアのB-H曲線の正負両域に見られます。
破線は、磁界がコア内に収まっている初期の振る舞いを示しています。実線は、コイルを流れるAC電流により磁界に振れ幅をもつB-Hの関係を示しています。A点とD点は、磁性材料の飽和限界を示しています。これらの点を超えると、磁界の増加は磁束密度にほとんど影響を与えません。
B点とE点は残磁性つまり残留磁気を示しており、与えられる磁界が皆無でもコアに磁束が残存していること示しています。C点とF点は飽和保存力、つまり磁界方向の切り替わりに対する磁束の反転反応時間とのずれを示しており、この2点においては磁界があっても磁束はゼロです。磁性材料がよりソフトなタイプなら、この2点は起点に近くなりB-H曲線に囲まれる領域はより小さくなります。B-H曲線内の領域は、サイクルごとのコア内での磁気損失に当たるため重要です。B-H曲線の幅が狭い、もしくは磁性材料がソフトタイプであれば飽和保磁力が低く、ヒステリシスとコア損失は小さくなります。B-H曲線の幅が広い、もしくは磁性材料がハードタイプであれば、飽和保磁力持力が高く、ヒステリシスは大きくコア損失も大きくなります。全体的なヒステリシス損失はコア材料に依存し、周波数に直接的に比例し、磁束密度には対数的に比例します。
実際には、良好に設計されたインダクターのコア損失は小さく、動作条件は通常動作においてB-H曲線面の内側にあるように設計されます。理想的な動作関係は直線で、磁界強度と磁束密度の関係は線形であり、ヒステリシス損失は無視できるレベルです(図5参照)
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