反転形DC/DCコンバーターの設計(5)連続モードのリップル電圧計算:たった2つの式で始めるDC/DCコンバーターの設計(19)(3/3 ページ)
今回はチョーク電流連続でキャパシターへの充電期間tcがtc=toffとなるMode I動作時のリップル電圧とキャパシターに流れるリップル電流の計算の仕方について説明していきます。
キャパシターの要求特性
キャパシターC1の注意事項は既にステップダウンコンバーターやステップアップコンバーターの章で説明しましたのでここでは要点のみを列挙します。
- 湿式アルミ電解コンデンサーの場合
- 同一定格でも形状が変わるとESRは変化します。カタログなどでESRを確認してください。
- 大型品よりも小型品を並列使用する方がESRを良化できる時があります。
- 固体キャパシターの場合
- 積層セラミックキャパシター、導電性高分子キャパシターなどの低ESR品ではリップル電圧は理論値に近づきます。
- キャパシターC1を湿式アルミ電解コンデンサーから低ESR品への置き換えた場合、制御ループが不安定になることがあります。
- 1MHzなどの高周波で動作するコンバーターではキャパシターのESRよりもESLや基板の寄生インダクタンスLeがリップル電圧に影響を与えるようになってきます。ESLの小さい部品の選択や基板の等長配線や誘導磁束のキャンセル、Leを減らす最短距離配線など部品レイアウトのノウハウが必要です。
- リップル電流は立ち上がりと立ち下がりに急峻な成分を持つ台形波です。リップル電流が流れる経路に残留インダクタンスLeが存在するとLe×di/dtで計算される大きなリップルノイズ電圧が発生します。加えてこの電流変化はリップル電流のみならず整流ダイオードのリカバリー特性にも左右されるのでリップルノイズ電圧が低下しない場合は整流ダイオードを変えてみるのも一案です。
スイッチング(SW)電源の用語を定義しているJEITA RC-9131D「SW電源試験方法(AC-DC)」の7.16項、7.17項ではリップル電圧とリップルノイズ電圧は分けて定義されています。
今回はチョーク電流連続という制約条件下でキャパシターへの充電期間tcがtc=toffとなるMode Iについて説明するとともにリップル電圧の計算とキャパシターに流れるリップル電流について説明しました。
次回は同じチョーク電流連続ですがキャパシターへの充電期間tcがtc<toffとなるMode IIについて説明するとともにリップル電圧についても検討します。
執筆者プロフィール
加藤 博二(かとう ひろじ)
1951年生まれ。1972年に松下電器産業(現パナソニック)に入社し、電子部品の市場品質担当を経た後、電源装置の開発・設計業務を担当。1979年からSPICEを独力で習得し、後日その経験を生かして、SPICE、有限要素法、熱流体解析ツールなどの数値解析ツールを活用した電源装置の設計手法の開発・導入に従事した。現在は、CAEコンサルタントSifoenのプロジェクト代表として、NPO法人「CAE懇話会」の解析塾のSPICEコースを担当するとともに、Webサイト「Sifoen」において、在職中の経験を基に、電子部品の構造とその使用方法、SPICE用モデルのモデリング手法、電源装置の設計手法、熱設計入門、有限要素法のキーポイントなどを、“分かって設計する”シリーズとして公開している。
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