ON/OFFコンバーターの制御不安定問題(3)状態平均化法での結果と安定化動作に必要な位相/利得:たった2つの式で始めるDC/DCコンバーターの設計(29)(3/3 ページ)
今回は状態平均化法と呼ばれる数学的解析手法の結果について説明し、続いて安定化動作のための位相や増幅器の必要最低限度必要な利得について取り上げます。
誤差増幅器に必要な利得
前述したように制御系の利得はむやみに高くしても発振しやすくなるだけでメリットはありません。では逆にどの程度利得があれば良いのでしょうか?
次のような仮定の下で計算してみます。
・基準電圧1.25V ・温度特性±0.2% ・負荷変動±0.2% ・入力変動0.1%
つまり、総合変動で考えると±0.5%、変化幅では1%であれば良いことになります。入力信号の1%変動は12.5mVですからこの変動が増幅器に与えられた時、A0倍増幅してPWM変調回路で0〜100%の変調ができれば確実に制御できることになります。
PWM回路で扱う三角波の振幅を2.5VP-Pとすれば誤差増幅の入力信号の変化12.5mVを出力信号の2.5V変化に増幅できれば良いことになります。このことから必要な利得A0は次のようになります。
A0=2.5/0.0125=200倍=46dB
電源制御ICの売り文句の1つに誤差増幅器の利得の高さがあります。ですが200倍という低利得を通常の演算増幅器の回路構成で実現することは事実上できません。利得が高ければ前述したように負帰還の安定性を確保できません。
一方、利得を下げるためにDC帰還を施して無理に見かけのDC利得を下げるとせっかくの高入力インピーダンスが帰還抵抗によって低下*してしまいます。
これらのことから回路特性としては最初から裸利得が低い演算増幅器が好ましいことになります。
*通常、負帰還抵抗は演算増幅器の入力電流影響を避けるため、入力電流の10倍以上の電流が流れるように設定します。つまりその電流分だけ演算増幅器の入力インピーダンスは低下してしまいます。
今回は状態平均化法と呼ばれる数学的解析手法の結果について説明し、状態平均化法でも(1−s)特性が現れること、コンバーター自身は2次の遅れ要素を持つこと、などを取り上げました。
連載第27回で詳しく説明しなかった誤差増幅器の必要最低限度必要な利得についても現実的な値を取り上げて実際に計算してみました。
出力電圧の変動を計算では±0.5%(3.3Vで±16.5mV)としましたが実機では電圧センシングをどこに設定するかによってこの設定値よりもはるかに大きい負荷変動を生じてしまいます。つまり誤差増幅器の利得よりも実機の物理的レイアウトが支配的だということになります。
今回は状態平均化法の結果と今回のシミュレーションの結果を比較する予定でしたが説明の都合で結果の比較は次回になりました。次回は繰り延べにした状態平均化法とシミュレーションの結果を比較していきたいと思います。
執筆者プロフィール
加藤 博二(かとう ひろじ)
1951年生まれ。1972年に松下電器産業(現パナソニック)に入社し、電子部品の市場品質担当を経た後、電源装置の開発・設計業務を担当。1979年からSPICEを独力で習得し、後日その経験を生かして、SPICE、有限要素法、熱流体解析ツールなどの数値解析ツールを活用した電源装置の設計手法の開発・導入に従事した。現在は、CAEコンサルタントSifoenのプロジェクト代表として、NPO法人「CAE懇話会」の解析塾のSPICEコースを担当するとともに、Webサイト「Sifoen」において、在職中の経験を基に、電子部品の構造とその使用方法、SPICE用モデルのモデリング手法、電源装置の設計手法、熱設計入門、有限要素法のキーポイントなどを、“分かって設計する”シリーズとして公開している。
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