ルネサス初の低耐圧GaNパワー半導体、AIサーバやヒューマノイド狙う:EPCとの協業生かし独自開発
ルネサス エレクトロニクスが、同社初となる低耐圧窒化ガリウム(GaN)パワーデバイスとして、100V耐圧のエンハンスメントモード(Eモード)GaN FETを発表した。AIデータセンターの電源システムやヒューマノイドロボット、産業用モーターなどをターゲットとする。
EPCとの協業から初の100V製品
ルネサス エレクトロニクス(以下、ルネサス)は2026年10月6日、同社初となる低耐圧窒化ガリウム(GaN)パワーデバイスとして、100V耐圧のエンハンスメントモード(Eモード)GaN FETを発表した。AIデータセンターの電源システムやヒューマノイドロボット、産業用モーターなどをターゲットとする。
ルネサスは2026年2月、米国のGaNパワー半導体メーカーEPCとGaN技術に関する包括的なライセンス契約を締結し、低耐圧GaN事業へ参入する方針を明らかにしていた。今回の新製品は、EPCからライセンス供与を受けた技術を活用しつつ、ルネサスが独自に開発したもので、同社の低耐圧GaN戦略が具体的な製品として登場した形だ(関連記事:EE Times Japan「ルネサスがGaN事業拡大、米国EPCとライセンス契約」)
高電力密度化と「業界トップクラス」の性能指数
新製品は「RTP100E005G1FL」「RTP100E2P6G1FL」「RTP100E1P8G1FL-DSC」「RTP100E1P2G1FL-DSC」の4製品だ。いずれも100V耐圧のEモードGaN FETで、オン抵抗(RDS(on))は5mΩ〜1.2mΩをカバーする。AIデータセンターやヒューマノイドロボットの他、ファクトリーオートメーション(FA)、産業用モーター駆動、電動工具、太陽光発電用マイクロインバーターなどを想定している。
新製品は、低耐圧EモードGaN技術の採用によって、総ゲート電荷量(Qg)と出力電荷量(Qoss)を低く抑え、スイッチング時に電圧と電流が重なる時間を短縮。スイッチング損失を低減している。ルネサスは「これによりGaNの高速スイッチング性能を生かしながら、AIサーバ向け電源やモーター駆動、DC-DCコンバーターなどで、電力変換の各サイクルに生じるエネルギー損失を抑えられる」と説明している。また、逆回復電荷量(Qrr)がゼロのため、逆回復に伴うエネルギー損失もなくし、スイッチング時の電力変換効率を高められる。
高速スイッチングによって高周波動作が可能になるため、インダクターやトランスなどの磁気部品やコンデンサーなどの受動部品を小型化し、基板面積を縮小できるという。同時に5mΩ〜1.2mΩという低オン抵抗によって、デバイスがオン状態のときに生じる導通損失も抑える。ルネサスによると、アプリケーションや電力変換アーキテクチャに応じてスイッチング損失を40〜70%削減し、システムレベルで最大2倍の電力密度を実現できるという。
ルネサスは「これらのGaN FETは、ハードスイッチングとソフトスイッチングの双方で業界トップクラスのFOM(性能指数)を実現し、同等のGaNデバイスと比較して、ハードスイッチングFOMを最大35%、ソフトスイッチングFOMを最大63%低減する」などと説明している。
大幅な基板変更なしでシリコンMOSFETから移行可能
パッケージは下面冷却と両面冷却の2種類を用意。放熱性能を高めるとともに、システムの冷却方式に応じて選択できるようにした。また、MOSFETと互換性のある複数の標準パッケージで提供するため、大幅な基板変更を行わずにシリコンMOSFETからGaN FETへ移行できるとしている。
さらに、オン抵抗とパッケージの異なる製品をそろえることで、同期整流回路やマルチフェーズ降圧コンバーター、モーター駆動回路など、異なる電力レベルや電力変換方式に対応する。
低耐圧から高耐圧までをカバーするポートフォリオ構築
ルネサスは2025年のキャピタルマーケットデイで、パワー半導体事業のロードマップに「LV GaN with external foundry and internal IP」を掲げ、低耐圧GaNを展開する方針を示していた。そして2026年2月にEPCと包括的なライセンス契約を締結。EPCが有する低耐圧EモードGaN技術「eGaN」やサプライチェーンエコシステムを活用するとともに、EPC製GaNデバイスの一部をセカンドソースとして供給する方針を明らかにした。
当時ルネサスは、EPCの技術を活用することで、既に展開していた650V以上の高耐圧GaNを補完し、低耐圧から高耐圧までをカバーする製品ポートフォリオを構築すると説明。特に48Vから12V、さらに1Vへと電圧を変換するAI向け電源アーキテクチャを有力市場として挙げていた。今回発表した100V GaN FETは、こうした戦略に基づく初の低耐圧GaN製品となる。
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