前々回と前回でご説明したように、論理回路は主に「組み合わせ回路」と「順序回路」で構成されています。今回は、これまでにご紹介できなかった論理回路の中で、デジタルICで良く使われている回路を取り上げ、解説します。具体的には、以下の回路です。
(1)バッファ
(2)スリーステート・バッファ
(3)シュミット・トリガ
バッファ回路
バッファ回路とは、入力の論理値をそのまま出力とする論理回路です。入力が「高」あるいは「1」であれば、「高」あるいは「1」を出力します。入力が「低」あるいは「0」であれば、「低」あるいは「0」を出力します。
バッファ回路は、一見すると意味がなさそうな回路に思えるかもしれません。実際、電気回路や電子回路などの実回路ではなく、ブール代数などの論理演算だけを考えると、バッファは不要です。しかし電気回路や電子回路などの実回路では、物理的な問題が生じます。
例えば電気回路や電子回路などには信号を伝送する配線が存在します。配線の抵抗はゼロではないので、信号電圧は配線を伝わりながら減少します。論理ゲートAの出力が「1」、具体的には電源電圧付近の電圧だったとしても、配線が非常に長いと次の論理ゲートBの入力ではゼロに近い電圧になってしまう可能性があります。論理ゲートの入力には「しきい電圧」が存在し、入力電圧がしきい電圧よりも高ければ「1」、入力電圧がしきい電圧よりも低ければ「0」と判定します。そうしますと、論理ゲートAは「1」を出力したにもかかわらず、論理ゲートBでは「0」が送られてきたと誤判定してしまうことが起こり得るわけです。
そこで実際の電子回路では、論理ゲートAと論理ゲートBの間にバッファ回路を挿入することによって、論理値の電圧をいったん補正し、誤入力を防いでいます。もちろん論理ゲートAと論理ゲートBの間の配線が短いときは、バッファ回路は不要です。
スリーステート・バッファ回路
スリーステート・バッファ回路は、バッファ回路の出力が3通りの状態(スリーステート)のどれかを採れる回路です。3通りとは、「1」、「0」、それから「高インピーダンス状態(Hi-Z)」です。
スリーステート・バッファ回路は、信号入力端子と信号出力端子のほかに、制御入力端子を備えています。制御入力が「1」のときは、信号入力の値に関係なく、出力は「高インピーダンス状態」となります。具体的には、出力端子が配線と電気的に切り離されます。
例えば4個のスリーステート・バッファ回路の出力が1本の信号配線に接続された状態を想定しましょう。4個のスリーステート・バッファ回路の中で1個を除いてほかの3個全てを高インピーダンス状態にすると、信号配線に電気的に接続されているスリーステート・バッファ回路は1個だけになります。こうすると、スリーステート・バッファ回路を利用することで、1本の信号配線に接続された複数個の論理回路を切り替えることができます。
シュミット・トリガ回路
スリーステート・バッファが主に出力に関する回路であったのに対し、シュミット・トリガは入力に関する回路です。
デジタル回路の入力にしきい電圧が存在することは、バッファ回路の項で述べました。入力電圧がしきい電圧よりも低ければ「低」あるいは「0」、「偽」と判定します。入力電圧がしきい電圧よりも高ければ「高」あるいは「1」、「真」と判定します。
論理値を切り替えるときに信号電圧を一瞬に変化させることは不可能です。信号電圧は時間とともに変化し、その変化は必ずしも円滑ではなく、雑音が載っているために電圧が揺らいでいます。このため、しきい電圧が1点の電圧に設定されていると、入力電圧がしきい電圧とほぼ同じ電圧になったときには、電圧のゆらぎによって論理値は「高」と「低」の間で揺れ動くことになってしまいます。
このような不安定さを取り除くのが、シュミット・トリガです。シュミット・トリガでは、入力が「低」から「高」に変化するしきい電圧が高めに、入力が「高」から「低」に変化するしきい電圧が低めに設定されています。しきい電圧をこのように設定すると、入力電圧が特に中間電圧(電源電圧と接地の中央付近の電圧)でゆらいだときに、論理値が電圧ゆらぎの影響を受けなくなります。(次回に続く)
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アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2013年3月31日
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