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電池残量計ICこれだけは知っておきたいアナログ用語

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電池残量計IC


図1 残量表示の具体例

 電池残量計ICとは、携帯型電子機器などの駆動に使われている電池に残されているエネルギー容量を計測する半導体チップのこと。ノート・パソコンやスマートフォン、タブレット端末などにおいて、1%刻みの残量表示を可能にしているのは、この半導体チップのおかげである。残量のデータを利用して、通話時間や待ち受け時間、オーディオ再生時間などの情報を求めることが可能だ(図1)。「フューエル・ゲージIC」や「ガス・ゲージIC」などと呼ばれることもある。


実現技術は複数ある

 一口に電池残量計ICと言っても、その実現技術は複数ある。大きく4つに分類可能だ。電圧測定方式とクーロン・カウンタ方式、電池セル・モデリング方式、インピーダンス・トラック方式の4つである。

 電圧測定方式は、電池セルの端子電圧を測定して、残量を求めるというもの。電池は一般に、充電した直後の端子電圧が最も高く、放電が進めば進むほど端子電圧が低下する。この特性を利用して、残量を求めるわけだ。

 メリットは、端子電圧の測定というシンプルな構成で電池残量を把握できる点にある。デメリットは、精度がかなり低いことである。電池セルの端子電圧とエネルギー容量(残量)の関係は、必ずしも比例の関係にあるわけではないからだ。しかも、電池セルの端子電圧は、経年劣化や動作温度、放電電流といった要因でも低下する。こうした要因で低下したのか。それとも放電によって低下したのか。電圧測定方式では、判別できない。このため、精度は低い。

 クーロン・カウンタ方式は、電池セルに流入した電流と、流出した電流を測定することで残量を求める。電流検出抵抗を使って充電時に蓄えられた電流量を積算しておき、放電時に出ていった電流量を求めることで、残量を算出する。電圧測定方式に比べると、精度は高い。

 しかし、弱点もある。動作温度や経年劣化による電池セルの特性変化を考慮できないことだ。さらに、オフセット・ドリフトが発生するという課題もある。これは、満充電もしくはカラの状態に至らない中途半端な充放電を繰り返すことで、誤差(オフセット)が積み上がるという現象である。従って、クーロン・カウンタ方式では、十分に高い精度は得られない。

 電池セル・モデリング方式は、使用する電池セルの放電特性や温度特性を測定してデータベースを構築し、電池残量計ICの内部に格納しておく方法だ。これと前述のクーロン・カウンタ方式を組み合わせる。そうすることで、動作温度や経年劣化による電池セルの特性変化も考慮できるようになる。クーロン・カウンタ方式の弱点を補えるため、比較的高い精度が得られる。

 しかし、データベースに格納する測定データはあくまで、使用する電池セルの代表的な値にすぎない。実際に使用する電池セルの特性とまったく同じとは限らない。すなわち、電池セルの個体差までは考慮できないことになる。従って、十分に高い精度は得られない。

最も高精度な「インピーダンス・トラック」

 電圧測定方式とクーロン・カウンタ方式、電池セル・モデリング方式。これらの方式が抱える問題をクリアしたのが、インピーダンス・トラック方式である。現時点において、最も高い精度が得られる方式だ。

 この方式はその名の通り、電池セルのインピーダンスを捕捉するもの(図2)。どんな電池セルでも、使えば使うほどインピーダンスは高くなり、それに応じてエネルギー容量は減る。ただし、インピーダンスが高くなる要因は、経年劣化だけではない。温度が低くなったり、放電電流が大きくなったりしても、一時的だがインピーダンスが高くなる。一時的な現象と経年劣化。この二つをしっかり区別しないと高精度で残量を算出できない。


図2 インピーダンス・トラックの原理
無負荷時の放電特性(OCV)をリファレンスとする。電池セルのインピーダンスを捕捉することで、残量を高精度で算出する。

 インピーダンス・トラック方式では、使用する電池セルの放電特性(無負荷時)や温度特性などの測定データをリファレンスとしてメモリに格納する。そして、稼働中の電圧と電流、温度をモニターすることで電池セルのインピーダンスを常時捕捉して、データを更新していく。こうすることで、経年劣化でインピーダンスが高くなったのか、一時的な現象で高くなったのかが判断可能になる。しかも、測定によってデータを更新していくため、電池セルの個体差にも対応できる。従って、極めて高い精度を実現できるわけだ。

 テキサス・インスツルメンツ(TI)は、インピーダンス・トラック方式を採用したさまざまな電池残量ICを市場に投入している。最も新しい製品は、デジカメやマウス、携帯型血圧計などに向けた「bq27425」である。ターゲットとする市場では低コスト化が求められるため、フラッシュ・メモリではなくROMを集積した。ROMの回路面積はフラッシュ・メモリに比べると小さい。その分だけコストを削減できるわけだ。





提供:日本テキサス・インスツルメンツ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2013年3月31日

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