使ってみれば納得! インタポーザ「SE SP-01」を動かしてみた:ソリューションコラム第13回
前回のソリューションコラムでは、SE SP-01を使って手軽にシステム構築ができる一例を紹介しました。今回は、前回に組み上げた評価環境を実際に動作させていく様子をご紹介します。SE SP-01の素晴らしさを、よりご理解頂けると思います。
前回は、ソリューションコラム第12回:知らない人は損をする!? インタポーザ「SE SP-01」を試してみたと題してSE SP-01を使って手軽にシステム構築ができる一例を紹介しました。SE SP-01を使えば、ジャンパー線などでの空中配線などすることなく他社製の評価ボード同士を簡単に接続し、実アプリケーションに近い構成で評価環境を構築することができます。前回の記事をまだご覧になっていない方は、ぜひ一度チェックしてみてください。
今回は、前回の記事で組み上げた評価環境を実際に動作させていく様子をご紹介します。
前回までのまとめ
前回はハードウェア構成と、インターポーザボードのセットアップ、各基板の接続方法についてご紹介しました。
記事で取り上げた衝撃センサーデモは、インターポーザボード(SE SP-01)とアナログ・デバイセズの実用回路集の衝撃センサーアプリケーション向け基板一式(EVAL-CN0303-SDPZ)、そしてルネサスエレクトロニクスのマイコン評価ボードRSK+(RX63N搭載)で構成されています。
加速度(衝撃)の物理信号は、EVAL-CN0303-SDPZの、1軸の加速度センサー(ADXL001)でアナログの電気信号に変換され、12bitのA/DコンバータAD7476でデジタルデータに変換されます。デジタル化された加速度(衝撃)データは、シリアルのデータとして出力され、インターポーザボードを介してRX63Nのシリアルポートへ入力される構成になっています。
4.動かしてみよう
何ができる?
衝撃センサーデモは、加速度センサーADXL001からの加速度(衝撃)データを、RSK+に実装されているLCD上に加速度(G)として表示します。
ADXL001から出力された加速度のアナログデータがAD7476でデジタル変換され、SE SP-01を経由して、RSK+へ伝わります。
衝撃データはLCDに表示するためにRX63Nにプログラムされたファームウェア(F/W)で処理/変換され、LCDに表示されます。
波形を見てみる
それでは衝撃を与えた時の波形を実際に見てみましょう。アナログ・デバイセズの実用回路集のキット(EVAL-CN0303-SDPZ)では、確認用のピンが実装されているので、オシロスコープなどを用いることによって、電気信号をモニターすることができます。
EVAL-CN0303-SDPZのブロック図を下記にご紹介します。
アナログ波形を確認する
ADXL001から出力された加速度のアナログ信号は、AD7476に入力されます。
基板上に実装されているVOUT端子からADXL001の出力信号を観測してみます。信号の観測には前回ご紹介した簡易オシロスコープ/シグナルジェネレータのANALOG DISCOVERYを使います。
VOUT端子にプロービングして出力信号を見てみると、次のように見えます。
加速度センサーADXL001が5V動作モード時、衝撃を加えない状態で約2.5V付近で推移しています。ADXL001は1軸の加速度センサーですので、Z軸の向きに正/負方向の力が加わると、2.5V付近を中心に電圧が上昇または下降している様子が分かります。
次にADXL001に衝撃を加えた時の波形です。
今回のデモでは加速度センサーに衝撃を加えるために、レールに沿ってZ軸方向に動くことができるおもりにADXL001をネジ止めし、自由落下に近い状態で落下、基台に衝突させることができる冶具を使っています。
ご覧のように、ADXL001から出力される電圧が、落下に従い5V付近まで上昇したことが確認できました。
デジタル波形(通信波形)を確認する
それでは同様に、RSK+とCN0303間の通信波形をANALOG DISCOVERYで確認してみます(ロジック・アナライザ機能を使います)。
EVAL-CN0303-SDPZのA/DコンバータAD7476はSPIでデジタルデータが出力されます。このSPI通信が、RSK+のRX63Nマイコンに入力されているので、信号ラインを確認します。
なお、RX63Nマイコン側からA/DコンバータAD7476に対しての制御はないので、使用する端子はSS / CLK / MISOの3本だけです。
さて、SPI信号をモニタしてみるわけですが、インターポーザボードSE SP-01は評価ボード同士を単に接続するだけでなく、実際の評価作業のことも考えて作られています。
図のようにSE SP-01には要所要所にピンを立てる場所がありますので、オシロスコープなどの計測機器をつなげたり、コネクタをつけたりと、様々な用途で使うことができます。
今回は、予備コネクタCN12にピンを立てて、ここからSPI通信の信号波形を取り出します。
ANALOG DISCOVERYのロジック・アナライザ機能では、端子名登録とトリガ設定をするだけの簡単な設定で、このようにデジタル波形も確認できます。SPIフォーマットと設定すれば、波形データをHEX変換した状態で表示させることもできます。
SSのLow→High区間を見ると、1回分の通信が約34usecで行えていることが分かります。
ファームウェア(F/W)で受信したデータを見てみる
では次に、F/Wで受信したデータがどのように取れているかを見てみます。受信バッファを多めに確保したSPIデータ受信プログラムを作り、A/Dコンバータから出力されたデータを格納するようにします。
SPIデータを受信したら、CubeSuite+の機能を使って受信バッファの値をテキストで保存し、Excelなどでグラフにしてみましょう。
実際に格納データからグラフ化してみたのがこちらの図です。
突き出ている所が、加速度が一番大きいところ、つまり急激に速度が変わった時点ということで基台と衝突した瞬間です。
EVAL-CN0303-SDPZに実装されているA/DコンバータAD7476は12ビットなので、値のレンジは0〜4095(0xFFF)です。
加速度が加わっていない時のAD変換値はおおよそ中間値(2047付近)となり、おもりを落とした瞬間は中間値から±2047の間で変動します(ADXL001にかかる衝撃の方向により、中間値から+または−方向へ変動します)。
今回Excelでは便宜上オフセットをかけたものをグラフ化しており、AD変換値の中間値が0で、最大値は±2047です。
Excel上の+2047がアナログ波形の5V、−2048が0Vに相当します。
おもりを落とした瞬間のアナログ波形を見てみると、ピークが5V付近にあることがわかります。このことから、プログラム上で衝撃データのピーク値を検出できていることが分かります。
5.ポイント
今回紹介したデモのポイントとしては、
・接続簡単なSE SP-01を使いこなすことで、評価効率アップが期待できる
・少ない手数で構築できるため、評価環境を一度分解してもSE SP-01なら何度でも手軽に再現できることから、評価環境の再現性が確保できる
・評価でオシロスコープを使う場面が出てきた時は、ANALOG DISCOVERYがコンパクトかつ簡単なのでオススメ(なお今回は使用しませんでしたが、シグナルジェネレータとしての機能もあります)
また、SE SP-01の準備でピンヘッダやピンソケットを用いましたが、これらはSE SP-01に同梱されてきます。同梱のピンヘッダやピンソケットは、好きな箇所で手折りできるようなものを同梱していますので小便利です。
SE SP-01は、基板の色もあらたにRev. Bとして改版いたしました。
6.最後に
2回にわたって、ET2013向けデモを例に、SE SP-01を使って簡単かつアプリケーションに近い状態で評価ができる環境構築方法をご紹介しました。筆者自身も、ET2013展示会向けのデモの作成には大いに役に立ちました。SE SP-01の多種多様な対応バリエーションから生まれる利便性や、デバッグにやさしい基板設計は皆さんのお役にも立つことができると思います(ANALOG DISCOVERYのコンパクトで取り回しのしやすいのもありがたかった)。
ぜひ、皆さんも活用してみてください。
ところで、アナログデータにつきものといえばノイズです。今回も実は、プログラム上で対策を施しています。
ノイズ対策をしないと表示が安定せず、思った結果になりません。
対策例として平均化やフィルタ処理などがありますが、それはまたの機会に紹介します。
提供:ルネサス エレクトロニクス株式会社 / アナログ・デバイセズ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2014年5月31日
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