CMOSイメージセンサーで存在感を増すOMNIVISION 「日本にも大いなる伸びしろ」:30年の知見を生かす
1995年にCMOSイメージセンサー(CIS)の専業メーカーとして設立された米OMNIVISION(オムニビジョン)。以来、裏面照射型アーキテクチャやグローバルシャッターなど、先端技術を取り入れながらCISのシェアを大きく伸ばし、同市場での存在感を強めている。近年はR&D投資をさらに拡大。産業機器や医療機器で大きな市場がある日本でも、過去7年間で4カ所新設したR&Dセンターを足掛かりに、さらなる飛躍を遂げようとしている。
期待の成長市場、イメージセンサー
カメラ付きの携帯電話機が登場して20年以上が過ぎた。携帯電話機のカメラの進化を支え続けてきたCMOSイメージセンサー(CIS)は、スマートフォンやデジタルカメラなどの民生機器のみならず、医療機器、産業機器、自動車まで幅広い用途で使われている。グローバルインフォメーションが2024年3月に発表した市場予測によると、CISの世界市場規模は2024年から2029年にかけて、年平均成長率7.12%で成長し、2029年には322億2000万米ドルに達するという。
同市場で大きな存在感を示しているのが、米OMNIVISION(オムニビジョン)だ。同社は現在、研究開発(R&D)をさらに強化し、積極的に投資している。日本では、2019年ごろから本格的にイメージセンサーの研究開発を展開。既に5つの研究所を持ち、拡充に力を入れる。OMNIVISIONの日本法人OmniVision Technologies Japanで社長を務める薄井明英氏は「CISを含め、イメージセンサーは当社にとって伸びしろが極めて大きな市場だ」と期待を込める。
CMOSイメージセンサーの専業メーカーとして設立
OMNIVISIONは、CISの専業メーカーとして1995年に設立されたファブレス企業である。当時は、当然ながらスマートフォンはまだ誕生しておらず、カメラ付きの携帯電話機すら登場していない時期だ。2000年前後にカメラ付きの携帯電話機が初めて登場し、このころからCISの市場が成長し始める。OMNIVISIONは、今後はカメラ付き携帯電話機が主流になることを見据え、「より安価かつ低消費電力のイメージセンサーを市場に投入すべきだ」という“先見の明”の下、設立された企業なのだ。
2002年には、OMNIVISIONとして初のモバイル向けCISを市場に投入。2005年には、オートモーティブ向けのCISを発表した。同分野では特にリアビューカメラ向けでCISの売り上げが伸びていったと薄井氏は語る。さらに、2009年には、感度の低下を抑えられる裏面照射型のアーキテクチャ「OmniBSI」を開発。2014年には素早い動きを捉えられるグローバルシャッターの機構を採用したCISを投入する。その他にも、内視鏡向けの超小型カメラモジュールである「CameraCubeChip」や、監視カメラなど向けで近赤外の感度を向上する「Nyxel(ニクセル) technology」など、カメラ/イメージセンサー関連の製品や技術を次々と開発してきた。特にCISでは、イメージセンサーを大きく進化させてきた裏面照射構造やグローバルシャッターなどの技術をいち早く開発し、導入してきた。
新生OMNIVISIONとしては、大きく3つのソリューションを手掛ける。CISやCameraCubeChipなどの「センシングソリューション」、PMICやパワー半導体などの「アナログソリューション」、TDDIなどの「ディスプレイソリューション」だ。とりわけ、センシングソリューションのCISでは高いシェアを獲得し、存在感を示している。
コア技術を柔軟に横展開、CISにおけるOMNIVISIONの強み
CISではモバイルデバイスや自動車、IoT(モノのインターネット)、セキュリティなど7つの分野をターゲットとしている。そのうち、モバイルデバイスと、マシンビジョンなど比較的新しいマーケットを除く分野において、2022年時点でシェア1位*)を獲得している。
*出典:TSR(テクノシステムリサーチ)の2022年の調査、Yole Groupおよび、OMNIVISIONの調査結果による
薄井氏はOMNIVISIONの強さの理由として「まずはコア技術を確立し、それをあらゆるセグメントに横展開できる柔軟性と拡張性」を挙げる。「当社は、まずはターゲットとするアプリケーションのニーズを徹底的に聞き、コアとなる技術を開発する。グローバルシャッターやNyxel technology、画像の明るい部分と暗い部分をより鮮明に表現するHDR(High Dynamic Range)技術などがこうしたコア技術に当たる。これらのコア技術を、同様のニーズがある他のマーケットに展開するというのが当社の強みであり戦略でもある」
HDRは、OMNIVISIONではもともと車載用途のニーズに応えるために開発された技術だが、現在はスマホやノートPC、セキュリティカメラなど向けにもHDR対応CISを出荷している。「自動車がトンネルを出た時や太陽光が正面から差し込む時などに、画像が白飛びしないよう、ダイナミックレンジが広いCISを開発した。だが自動車のみならず、スマホやノートPCのカメラ、セキュリティカメラなどでもHDRに対する要求は高い。いずれも、白飛びや黒つぶれを起こさず鮮明な画像や映像が求められるからだ。コア技術が、セグメントを超えてさまざまな用途に横展開されていく好例といえるだろう」(薄井氏)
グローバルシャッターもその一例だ。CISで採用されてきたローリングシャッターよりも高速なモーションを捉えられるグローバルシャッターは、スマホ以外に、倉庫や工場で使われるマシンビジョンでも需要が伸びていると薄井氏は語る。「生産ラインや物流倉庫で、ベルトコンベヤー上を流れる製品や荷物など高速で動いている物を撮影して振り分ける、といった用途ではフレームレートが高く、グローバルシャッターを備えたCISが求められている。マシンビジョンは、今後の高い成長が期待できる分野だ」
アナログ/パワー技術の存在も大きい。カメラモジュールとPMICを組み合わせたソリューションとして提案できるようになったからだ。イメージセンサーに単に電力を供給するだけでなく、オン/オフシーケンスの制御など、電源管理まで含めたソリューションとして提供できる。「カメラシステムがよりシンプルになりトータルコストを低減できる。特にオートモーティブ分野ではこうした利点が喜ばれる」
積極的なR&D投資を継続、日本でも急ピッチで拡張を進める
2023年の時点で、CIS事業の売上高は、OMNIVISIONの売上高全体の74%を占める。市場セグメント別ではモバイルが50%と最大で、オートモーティブが30%と続く。自動車は、現在OMNIVISIONが最も注力する分野だが、ドローンやゲーミング機器、VR/AR用機器などのIoT分野でも強い引き合いがあるという。
こうした状況を受け、OMNIVISIONはCISも含めR&Dに積極的に投資してきた。ここ数年は特に投資を強化していて、2020年から2022年にはR&D投資が年率23〜25%で拡大している。R&Dに関わるエンジニアの数も多く、全体の従業員の約43%がR&Dエンジニアだ。CISの研究開発に携わるエンジニアが最も多い。
研究開発拠点も世界各地で増加している。日本も例外ではなく、拠点の増設が急ピッチで進んでいる。2015年の横浜市を皮切りに、2017年にはCISのR&Dセンターを京都に、2020年にはアナログ/ディスクリートの開発拠点を群馬県高崎市に新設。さらに2021年には熊谷市と仙台市にも拠点を設けた。熊谷市はモータードライバーソリューション、仙台市はパワーマネジメント関連技術の開発を手掛ける。CISについては、横浜を中心に展開しているが、本年からは京都も拡充していく。
「日本はゲーム、産業機器、医療機器、自動車など、OMNIVISIONが注力する分野で大手のプレイヤーが数多く存在する。日本は伸びしろのある市場に位置付けられている」と薄井氏は語る。
OmniVision Technologies Japanの日本研究所 所長の福島範之氏と同副所長の助川俊一氏は、CISの開発について「“目に見えるもの”を追求し、最先端の技術を開発することは純粋に楽しい」と語る。「特にスマホのカメラは、一般ユーザーにとっては現在もなお、スマホを選ぶ上で最優先となる選択肢になっている。自動車やマシンビジョンなどの分野でもイメージセンサーの進化が大きく貢献する。自分たちが携わっている技術が脚光を浴び続けることは、エンジニア冥利に尽きる」
強固なサプライチェーンも強みの一つだ。ファブレスであるOMNIVISIONは、アジアのファウンドリーを複数活用して、製品を製造している。「コロナ禍でのサプライチェーンの混乱を経て、調達や製造の面で複数以上のソースの確保を求める顧客が増えた」(薄井氏)
CIS市場の成長という“先見の明”の下で設立されたOMNIVISIONは、アプリケーションの拡大という追い風により、さらなる飛躍を遂げようとしている。日本の開発力も、その成長に大きく貢献するはずだ。
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提供:OmniVision Technologies Japan 合同会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2024年6月3日