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組み込みシステムの性能限界を押し上げるDSCをMicrochipが開発、その詳細を聞く倍精度FPUとDSP搭載の32ビットアーキテクチャ

組み込みシステムの複雑化が進み、性能向上の要求が高まる中、Microchip Technologyが最近、倍精度FPUとDSPを搭載し、高速かつ高精度なリアルタイム制御が可能なDSC(デジタルシグナルコントローラー)「dsPIC33A」ファミリーを発表した。「組み込みシステムの性能限界を押し上げるのに必要な精度、効率、先進の機能が提供できるよう設計された」というこの製品について今回、同社のMCU16/DSC部門製品マーケティングマネージャを務めるPramit Nandy氏から詳細を聞いた。

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組み込み市場での高性能マイコン需要をけん引する4つのトレンド

――現在、組み込みシステムでは複雑化が進み、高性能化が求められています。組み込みシステム市場のトレンドについて教えてください。なぜDSC(デジタルシグナルコントローラー)をdsPIC33Aシリーズにアップグレードする必要があるのでしょうか。

Nandy氏 我々は、組み込みシステム市場における4つの主なトレンドが高性能なマイクロコントローラーの需要をけん引していると認識しています。

 1つ目のトレンドはエネルギーに対する要件の高まりで、モーター制御、電源、その他システム等の注力分野を問わず、顧客はさらなる効率向上を求めています。ハードウェア、ファームウェアの面でシステムの複雑性が増しているため、より高い性能を持つマイクロコントローラーに対する需要が高まっているのです。

 2つ目は、コントローラーの多機能化、つまり、1つのコントローラーで複数のタスクを実行するトレンドです。この傾向は車載分野で、特に1つのコントローラーでポンプ、クーリングファン、コンプレッサーやその他のアクチュエータを管理する必要がある温度管理システムで目立ちます。管理機能を1つに統合することで、より高度な制御ループと最適化されたシステムレベルアーキテクチャを実現しやすくなるため、より多くの周辺モジュールを内蔵したいという需要につながっています。

 3つ目のトレンドは、車載、産業用、データセンター、コンシューマー、航空宇宙/防衛等の各分野での、セキュリティと安全性への要件の増加です。システムを保護するため、マイクロコントローラーには専用のセキュリティ機能、追加のメモリ、強化された性能を組み込む必要があります。これは既存のマイクロコントローラー機能の上にセキュリティライブラリーを実装するためであり、これにより高性能なソリューションに対する需要がさらに高まっています。

 最後に、高度なエコシステムの採用および、モデルベースの設計アプローチに対する需要の高まりによる、ソフトウェアの複雑化です。これらの進展は、顧客の開発プロセスの合理化と迅速化を支援するものです。一方で、より複雑なシステムが必要となり、メモリ容量と性能メトリクスの上限を押し上げます。

 これら4つのトレンドは、優れた性能を備えたマイクロコントローラーが市場で求められている事を明確に示しています。ある意味これらのトレンドが当社のDSCファミリーを新しい32ビットdsPIC33A DSCファミリーにアップグレードする後押しをしたといえます。

高性能マイコン需要をけん引する4つのトレンドについて[クリックで拡大] 出所:Microchip Technology
高性能マイコン需要をけん引する4つのトレンドについて[クリックで拡大] 出所:Microchip Technology

高い性能と信頼性が求められる用途で発揮する特性

――dsPIC33Aシリーズは従来品などと比較し、どんな特徴やメリットがあるでしょうか。

Nandy氏 200MHzで動作する32ビットアーキテクチャを採用したdsPIC33Aシリーズは、従来の16ビットアーキテクチャから大幅に強化されています。この強化は、デジタル電源、堅牢な設計、モーター制御のアプリケーションに特に有用です。

 この強化とIEEE 754-2019に準拠したDP-FPU(倍精度浮動小数点ユニット)が、高精度な計算、高速な処理ループ、サードパーティーのツールとのシームレスな統合を容易にします。72ビットアキュムレーター(x 2)、32ビットワーキングレジスタ、追加のコンテクストスイッチレジスタにより、DSPおよびCPU性能が強化され、これによりレイテンシが低減されてリアルタイムアプリケーションの性能が向上します。

 改良された周辺モジュールには最高変換レートが40Mサンプル/秒のADC、100MHz GBW(ゲイン帯域幅)のオペアンプ、高速化されたコンパレータがあり、新たにセキュアで高速なシリアル通信を可能にするBiSSインタフェースが加わりました。セキュアブート、RAMとフラッシュ用のECC、ICSP Write Inhibit、セキュアデバッグ等のセキュリティ機能はシステムの信頼性をさらに高めます。

 dsPIC33Aシリーズは処理能力、精度、周辺モジュールの性能、セキュリティの面で大幅に改良されていて、高い性能と信頼性が求められるアプリケーションで競争力の高い選択肢となります。

dsPIC33Aシリーズの主な特長[クリックで拡大] 出所:Microchip Technology
dsPIC33Aシリーズの主な特長[クリックで拡大] 出所:Microchip Technology

モーター制御分野におけるメリットとは

――モーター制御分野でdsPIC33Aシリーズを利用するメリットは何ですか。製品の性能はどのように向上するのでしょうか。

Nandy氏 高性能なデジタル信号処理機能とマイクロコントローラーの特長を持つdsPIC33AシリーズのDSCは、モーター制御アプリケーションで広く使われています。

 主な利点を挙げると、32ビットアーキテクチャとDSPエンジンを使った高性能な処理により、FOC(界磁制御)のような複雑なモーター制御アルゴリズムを実行できます。DP-FPU(倍精度浮動小数点ユニット)は精度と制御ループ性能を向上させます。高分解能PWMモジュール、高速ADC、QEI(直交エンコーダーインタフェース)等の内蔵周辺モジュールも、正確なモーター制御に欠かせません。

 また、リアルタイム制御機能はモーターの速度、トルク、位置の正確な制御を可能にします。これはロボット工学、産業用オートメーション、電気自動車等のアプリケーションで重要です。

 このシリーズはメモリ、処理能力、周辺モジュールに拡張性があるため、設計者はそれぞれのニーズに合わせてソリューションをカスタマイズできます。Microchip社が提供する豊富なソフトウェアライブラリと開発ツールを使うことで、開発と製品化にかかる期間を短縮できます。また、同一のハードウェアプラットフォームに各種の制御アルゴリズムを実装できるため、設計の柔軟性が向上します。さらに、dsPIC33Aシリーズではシングルチップに複数の機能が搭載されているため、別々のマイクロコントローラーとDSPを使う場合と比べて対費用効果に優れます。

需要高まるAIサーバや自動車用充電器向けでも活躍

――屋外用電源では、今も基本周波数が100MHzのMCUチップとDSPチップが使われる例を多く見かけます。高周波数のDSCは今後のデジタル電源分野のトレンドになるでしょうか。また、AI(人工知能)サーバ、自動車用充電器等のアプリケーションにおけるデジタル電力変換にどのように貢献するのでしょうか。

Nandy氏 電源アプリケーションによっては、Microchip社のdsPIC33CK(シングルコア)、dsPIC33CH(デュアルコア)等、最高動作周波数100MHzのDSCで現在の要件に対応できます。ただ、AIサーバと自動車用充電器等の先進のアプリケーションでは、さらに効率的かつ高精度な電源管理が要求されており、高性能なDSCへのニーズが高まっています。高いクロック数で動作するdsPIC33A DSCは、高度なアルゴリズムと高速な応答時間を実現するのに不可欠な強化された性能と効率を提供してこのニーズに応えます。また、高度な制御アルゴリズム、改良された監視および診断機能、暗号化によるセキュリティ向上をサポートしています。このように、dsPIC33A DSCはデジタル電力変換を大幅に進化させ、AIおよび車載分野の進化する需要に応えます。

――開発ツールの面で、dsPIC33Aシリーズはエンジニアにとってどのような設計上の利便性がありますか。

Nandy氏 Microchip社は、評価から最終設計に至るまでの当社ソリューションの採用を効率化し、開発期間を短縮するとともに、専門エンジニアによるサポートで初期段階における設計リスクを軽減します。

 当社のエコシステムには、dsPIC33Aシリーズ向けの評価用ボード、最適化されたMPLAB XC-DSC Cコンパイラ、各種アプリケーション向けのデモコード、モデルベースの設計の将来的なサポート、モーター制御の先進のアルゴリズム、デジタル電力変換、センサーインタフェースアプリケーション等のその他のリアルタイム制御アプリケーションが含まれます。また、文書、診断ソフトウェアライブラリ、レポートを含め、dsPIC33Aの機能安全およびセキュリティに関する包括的なサポートを提供する予定です。詳細はこちらをご覧ください。

開発ツールの面での設計上の利便性[クリックで拡大] 出所:Microchip Technology
開発ツールの面での設計上の利便性[クリックで拡大] 出所:Microchip Technology

高性能化の要求は続く……今後の開発方針は

――産業用制御MCUの周波数は今や600MHz以上に達しています。Microchip社も最近64ビットMPUを発表したように、産業用、デジタル電源、センサーシステムといったアプリケーションにおけるMCUの性能は向上し続けています。DSC製品の今後の開発方針について教えてください。

Nandy氏 産業用オートメーション、デジタル電力変換、センサーインタフェース、車載アプリケーションにおけるMCUの性能要件は拡大し続けています。Microchip社は過去数十年間にわたり、dsPIC33 DSCファミリーを進化させてその要求に応えてきました。

 30MHzのCPUを搭載した第1世代のdsPIC30Fから、100MHzのCPUを搭載した第4世代のdsPIC33Cまで、絶えず改善を続けてきました。機能安全に関する機能を追加し、当社最小の4x4パッケージのデバイスでもフラッシュメモリを最大1MBに拡張しました。

 第5世代のdsPIC33A DSCは、200MHzで動作する32ビットCPU、倍精度浮動小数点ユニット、強化されたアナログ周辺モジュール、セキュリティ機能を搭載しています。Microchip社では要件の進化に対応するため、より大容量のメモリオプション、アプリケーション固有の高度な周辺モジュール、強化されたセキュリティおよび機能安全機能を搭載して、この製品ファミリーを今後も進化させていきます。


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提供:マイクロチップ・テクノロジー・ジャパン株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2024年11月15日

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