熱抵抗
熱抵抗(Thermal resistance)とは、温度の伝わりにくさを表す値のこと。この値が高ければ温度が伝わりにくく、値が低ければ温度が伝わりやすいことを示す。単位は℃/Wである。電気抵抗と考え方はほぼ同じである。電圧(電位差)に相当するのが温度差(℃)、電流に相当するのが熱(W)である。
電気抵抗は記号として「R」を使うが、熱抵抗では「θ(シータ)」を使う。そして添え字で、どことどこの間の熱抵抗かを示す。例えば、θj-aであれば半導体の接合部(ジャンクション)と大気(エアー)との間の熱抵抗ということになる。
半導体デバイスの放熱対策時に活躍
熱抵抗が活躍するのは、半導体デバイスの放熱特性を考慮する場合である。例えば、DC-DCコンバータICでは、ある入力電圧を異なる出力電圧に変換する際に必ず電力損失が発生する。例えば、変換効率が約90%で、出力電力が10Wであれば、電力損失は約1Wとなる。これが熱源となる。プリント基板や大気との間の熱抵抗が低ければ、発生した熱は速やかに放散される。しかし、熱抵抗が高ければDC-DCコンバータIC内部に熱がこもってしまい、IC自体の温度が上昇する。一般に、半導体デバイスには、動作接合部(ジャンクション)温度(Tj)の上限値が設定されている。これを超えるとICが正常に動作しなくなったり、最悪の場合は破壊されたりしてしまう。従って、熱源が大きく、熱抵抗が高い場合は、ヒートシンクなどを使って熱抵抗を低くしたり、冷却ファンを使って冷やしたりするなどの対策が必要になるわけだ。
半導体デバイスでは、次の二つの熱抵抗を考慮する必要がある。それは、ジャンクションとケース(パッケージ)の間の熱抵抗であるθj-cと、ケース(パッケージ)と大気の間の熱抵抗であるθc-aである(図1)。ジャンクションで発生した熱は、ケース(パッケージ)を介して大気へと放散される。従って、この二つの熱抵抗を考慮しなければならないわけだ。
なお、放熱特性を高めるため、パッケージの上部にヒートシンクを搭載するケースがある。この場合は、ケース(パッケージ)と大気の間の熱抵抗θc-aに対して、ヒートシンクの熱抵抗が並列に入ることになる。ヒートシンクの熱抵抗は非常に小さい。このため、ケース(パッケージ)と大気の間の熱抵抗θc-aは、ヒートシンクの分だけ小さくすることが可能になる。
パッケージの工夫で熱抵抗は下がる
半導体デバイスのジャンクションとケース(パッケージ)の間の熱抵抗であるθj-cは、パッケージ技術を工夫することで下げることができる。例えば、米ナショナル セミコンダクター社のスイッチング・レギュレータICである「SIMPLE SWITCHER®」の第5世代品「LM22678」では、シリコン・ダイを覆う樹脂層の厚さを可能な限り薄くすることで、ジャンクションと大気の間の熱抵抗であるθj-aを22℃/Wに抑えている。第3世代品である「LM2678」は、パッケージの種類によってθj-aは異なるものの、最も小さいもので29℃/Wだった。
テキサス・インスツルメンツのインタフェース製品ラインアップ
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アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2013年3月31日
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