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バッテリーの電力はもっと効率よく使える、「60nA」の静止電流が変えるIoT機器の省エネ効果電池寿命を最大20%延ばす

世界的に「省エネ」への要求が高まる中、IoT(モノのインターネット)機器を含むバッテリー駆動機器にも、さらなる低消費電力化が求められている。Texas Instruments(TI)が、低静止電流技術と統合技術を駆使して開発した新しい昇降圧コンバータは、あらゆるバッテリー駆動システムに大きな省エネ効果をもたらす。

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増加の一途をたどるIoT機器、省エネは急務

 あらゆる分野でデジタル化の波が急速に進展している。効率化や省エネを狙い、「Industrie 4.0」や「Society 5.0」といった形でうたわれてきたデジタル化だが、新型コロナウイルス感染症のパンデミックによる社会生活の変化や、省エネルギーの必要性の高まりといった背景から、その動きが加速している。

 とりわけ、Industrie 4.0やSociety 5.0といった構想を支える技術として市場が成長しているのがIoT(モノのインターネット)だ。工場の生産ラインから構造物のヘルスモニタリングまで、さまざまな分野でIoT機器が導入されるようになっている。グローバルインフォメーションによれば、世界のコネクテッドIoTのデバイス数は、2021年の123億台から2025年には270億台に増加すると予測されている。企業のIoT支出も確実に増加していて、2020年は前年比12.1%増となる1289億米ドルに達した。


日本テキサス・インスツルメンツの倉持和暉氏

 堅調な伸びが期待されているIoT分野だが、大きな課題もある。その一つが電力だ。スマートメーターのようなバッテリー駆動のIoT機器は、動作期間のほとんどをスタンバイモードで待機し、バッテリーを交換せずに10年間や20年間、稼働することを求められる。一見すると十分に低消費電力化されていそうだが、日本テキサス・インスツルメンツの営業・技術本部 東日本エリア アプリケーション技術グループ フィールドアプリケーションエンジニアである倉持和暉氏は、「現状では、バッテリーの電力を十分に効率よく使えているとはいえない」と指摘する。

 IoT機器を含むバッテリー駆動の機器では、無線通信などピーク的に大きな電流を使用する一方で、上述したようにスタンバイモードの時間も非常に長い。そのため、大出力電流と低静止電流(Iq)という相反する条件を両立させて、いかにバッテリーの消費を抑えるかが重要なポイントになる。こうしたシステムの実現には、「出力電力を厳密に管理しながら静止電流を極めて低く抑える電源ソリューションが不可欠だ」と倉持氏は述べる。

静止電流は10年間でナノアンペアオーダーに

 Texas Instruments(TI)は、市場の要求に積極的に応え、このような電源ソリューションを実現すべく、数十年にわたり技術開発に投資してきた。電源管理アプリケーションの課題を解決するための要素として「低EMI」「電力密度」「低静止電流(低Iq)」「低ノイズと高精度」「絶縁」という5つを掲げ、新製品を発表し続けてきた。


電源管理アプリケーションの課題解決に必要な5つの要素

 これら5つの中でも、IoT市場の成長や省エネ要求の高まりといった昨今の動向に特に深く関わってくるのが、電力密度の向上と低静止電流の実現だ。倉持氏は「顧客からの多くのフィードバックを取り入れ、回路技術やプロセス技術で改善を重ねた。一部のレギュレータでは、10年間で静止電流をマイクロアンペアオーダーから数十ナノアンペアオーダーにまで低減することに成功した。電力密度についても、22mm2のソリューションサイズで出力電流500mA程度だったが、約10年の研究開発を経て、最終的に3〜5mm2で1Aを出力できるほどに大幅な向上を遂げた」と語る。

TIでも「トップクラス」の低静止電流を実現

 そうした技術開発の成果の一つが、2021年11月に発表したばかりの双方向昇降圧型コンバータ「TPS61094」だ。最大の特長は、超低リークプロセス技術と新しい制御トポロジーを駆使して実現した、60nAという低い静止電流である。TIの製品の中でも「トップクラスの低さ」(倉持氏)であり、競合他社の昇圧コンバータに比べて3分の1の値になる。これにより、スマートメーターやスマートドアベルなどのIoT機器、煙探知機など、単一バッテリーで10年以上動作するさまざまな産業用/民生用アプリケーションにおいて、最大20%バッテリー駆動時間を延ばすことが可能だ。

 これは、単に機器やシステムの寿命が延びるだけでなく、バッテリー交換などメンテナンスの頻度も下がるので、総合的なコストを削減できるという利点にもつながる。世界中で膨大な数のバッテリー駆動システムが稼働していることを考えれば、TPS61094がもたらす省エネ効果の大きさは容易に想像できるだろう。

 TPS61094には、負荷に電力を供給しつつ、外付けのスーパーキャパシタを充電する機能が搭載されている。IoT機器で、メイン電源である塩化チオニルリチウム1次電池の出力電圧が負荷電流の増加やバッテリーの消耗などにより低下した場合、TPS61094がそれを検知し、自動的に充電動作から放電動作に切り替える。つまりスーパーキャパシタにためていた電荷を使い、昇圧動作を行って負荷に電力を供給し続けることができる。

 現在、多くのIoT機器では、スーパーキャパシタではなくHLC(ハイブリッド層コンデンサ)が使われているが、HLCは価格が高い上に、充電電流の制御が難しい。TPS61094を使えば、HLCをスーパーキャパシタに置き換えることができ、これらの課題を解決できる。

 このようにバックアップ電源の用途で使用する際も、低い静止電流はメリットとなる。「バックアップ電源用のデバイス自体の消費電流が大きいとその分バッテリーを消費する。TPS61094であれば、バックアップ電源用の回路の消費電流を、ほとんど考慮する必要がないレベルにまで低減できる」(倉持氏)

 昇圧動作時の最大インダクタ電流は2Aで、他社製品に比べて2倍の出力電流を供給できる。これにより、無線通信などピーク的に増加する電流消費にも対応することが可能だ。

統合技術で部品点数は半分に

 TPS61094ではTIが持つ「統合技術」も存分に生かされている。例えば上記のバックアップ電源を構成する場合、スーパーキャパシタの充電用と放電用、2つのデバイスを組み合わせるのが一般的だ。一方でTPS61094は、スイッチ、昇降圧回路、充放電を切り替えるセンシング部分など、多くの回路をわずか2×3mmの1チップに統合している。これにより、複雑なシステムを構築することなく、1チップでバックアップ電源を実現できる。

 複数の機能を1チップに統合したことで、ディスクリートのチャージャや受動部品が不要になるため、部品点数は50%削減できる。これにより、ボード面積が縮小する他、コスト削減と設計の簡素化もかなう。

 低静止電流、そして、統合技術によるチップの小型化、部品コストの削減、設計の簡素化――。これら1つ1つが、TIの技術開発の確かな成果であり、膨大な数のバッテリー駆動システムに応用されることで、大きな省エネ効果へとつながっていくだろう。

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提供:日本テキサス・インスツルメンツ合同会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2022年2月10日

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