スイッチング周波数とは、スイッチング・レギュレータの回路仕様の一つ。スイッチング・レギュレータでは、パワーMOSFETやパワー・トランジスタといったスイッチング素子のオン/オフ時間を調整することで、出力電圧を所望の値に変換している。このオン/オフの切り替えを制御する信号の周波数を「スイッチング周波数」と呼ぶ。
従って、スイッチング周波数が高ければ、スイッチング素子のオン/オフを頻繁に実行されることになり、低ければその頻度は減る。スイッチング・レギュレータのスイッチング周波数は、出力電力の大きさや用途などによって異なるが、数十kHz〜数MHzが一般的だ。高いものでは、6MHz動作品や8MHz動作品が実用化されている。
通常、エレクトロニクス分野では「周波数」は高ければ高いほど良いケースが多い。例えば、マイクロプロセッサやDSPといったデジタルLSIでは、クロック周波数が高い方がより多くの演算処理をこなせる。通信インタフェースでは、伝送周波数が高い方が一度にたくさんの情報を送ることができる。このため、多くの企業が周波数の向上に注力している。
しかし、スイッチング・レギュレータのスイッチング周波数は、必ずしも高い方が良いわけではない。高くすることに対するメリットが存在する一方で、大きなデメリットもあるからだ。
メリットとしては、回路の面積や体積を小型化できることが挙げられる。スイッチング・レギュレータは、制御ICやスイッチング素子(両者を集積したICもある)のほか、インダクタやコンデンサ、抵抗、ダイオードなどを組み合わせて構成する。このうち、インダクタとコンデンサの外形寸法がスイッチング周波数の影響を大きく受ける。インダクタのインピーダンスは2πfL、コンデンサのインピーダンスは1/(2πfC)と表されるように、周波数(f)の関数だからである。つまり、ある値のインピーダンスを実現する場合、スイッチング周波数を高く設定すれば、それだけ小型のインダクタやコンデンサが使えるようになるわけだ。
このほか、スイッチング周波数を高くすることのメリットとしては、出力電圧に現れるリップル(変動)成分が小さくなることや、負荷に供給する電流量が増えたときに即座の応答できるようになることが挙げられる。
デメリットもいくつかある。その中で最もインパクトが大きいデメリットは変換効率が低下することだ。スイッチング動作時にエネルギー損失が発生するからである。スイッチング周波数を高めれば、エネルギー損失が発生する回数が増える。従って、変換効率が低下する。
放射電磁雑音(EMI)が増大することも大きなデメリットの一つである。電力をスイッチング素子に切り刻むため、その際に高い周波数成分のエネルギーが発生する。この成分がスイッチング・レギュレータを実装したプリント基板上の配線を伝搬することでEMIとして空中に放出され、ほかの回路の動作を妨害してしまう。このため、何らかの方法でEMIを抑える対策が必要になる。
従って、スイッチング周波数は、DC-DCコンバータを載せる電子機器が目指す性能に合わせて選択する必要がある。
例えば、LSIに電力を供給する数W〜数十W出力のスイッチング・レギュレータの場合、小型化を重視した電子機器であれば、3MHzを超えるスイッチング周波数を選ぶことが多い。変換効率は90%前半しか得られないが、大幅な小型化が可能になる。
Liイオン電池などで長時間駆動する必要がある電子機器であれば、500kHz程度のスイッチング周波数が最適だ。変換効率は95%程度、高いものであれば約97%が得られる(入力と出力の電圧差が小さいとき。例えば、入力が3.3V、出力が2.5Vといった場合。この電圧差が大きくなれば、変換効率は低下する)。ただし、インダクタやコンデンサの外形寸法は、3MHz品を使う場合に比べると大きくなってしまう。
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アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2013年3月31日
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