特性インピーダンス(characteristic impedance)とは、分布定数回路における概念で、そこを伝搬する電圧と電流の比である。通常、プリント基板の上でLSIの間を接続する配線(伝送線路)では、特性インピーダンスに50Ωという値を採用するのが一般的だ。同軸ケーブルでは75Ωや50Ωという値が使われることが多い。
なお、集中定数回路において一般的に使われる抵抗という概念とは、まったく異なる点に注意してほしい。実際に、特性インピーダンスが50Ωの同軸ケーブルの端と端をテスターで測定しても、50Ωという結果は得られない。このケーブルを1mの長さに切って測定しても無駄である。50Ωという測定結果は得られない。
エレクトロニクス機器の設計現場において、特性インピーダンスという概念が特に重要となる場面は、LSIの間を接続する伝送線路を設計するときだ。例えば、伝送線路の特性インピーダンスをその構造や材料を調整することで50Ωに合わせるとすると、終端部に接続する抵抗(終端抵抗)の値を同様の50Ωに設定しなければならない。こうした作業を「インピーダンス整合をとる」と呼ぶ。
インピーダンス整合がとれていないと、終端部で大きな反射波が発生してしまう。通常、デジタル信号は正形波のため、高周波の信号成分が多く含まれており、この高周波成分の反射が伝送信号を歪ませる原因となる。この結果、正しい情報を伝えられなかったり、放射電磁雑音(EMI)の発生源となったりする可能性がある。
それではLVDS(Low Voltage Differential Signaling)やCML(Current Mode Logic)などの差動配線の場合はどうなのだろうか。差動配線では、2本の配線を一対として考える。従って、差動配線の特性インピーダンス(差動インピーダンス)は100Ωの場合は、終端部には100Ωの抵抗を接続する。
なお、差動インピーダンスが100Ωではないケーブルや伝送規格も存在する。例えば、USB 2.0では90Ω、STPは120Ω、Fiber Channelでは150Ωなどである。ちなみに、PCI ExpressやシリアルATAなどは100Ωである。
ところで、特性インピーダンスはなぜ75Ωや50Ωといった値が使われているのだろうか。同軸ケーブルで75Ωがポピュラーな理由は、1960年代に用いられていた代表的なアンテナの出力インピーダンスに合わせたためである。それが現在でも、生き続けているわけだ。
50Ωの同軸ケーブルについては、EDN Japan誌の2001年6月号、p.128の記事において、50Ωに設定された理由が詳しく解説されている。簡単に説明すると、ポリエチレン(比誘電率は2.2)を絶縁層に用いた同軸ケーブルにおいて、表皮効果による損失を採用最少に抑える特性インピーダンスが51.1Ωだからである。その記事の著者であるハワード・ジョンソン氏によると、「当時のラジオ技術者は、覚えやすいように端数を切って50Ωという値を使っていた」という。
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アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2013年3月31日
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