SSCGとは、スペクトラム拡散クロック発振器(Spread Spectrum Clock Generator)のこと。電子機器の放射電磁雑音(EMI)対策に用いる半導体チップである。
一般に、電子機器は、EMIに関する規制値をクリアしなければ、市場に投入できない。例えば、日本国内でパソコンを製品化する場合は、VCCIのクラスBを満足する必要がある。こうしたEMI規制は、周波数ごとにそれぞれ許容値が定められており、この許容値を少しでも超過したらクリアできない。ある周波数成分の放射電磁雑音だけが許容値を超えていれば、それ以外の周波数成分を十分に低く抑えても規制はクリアできない。
SSCGは、ピーク値を対象とするEMI規制の特徴を活用したEMI対策部品と言える。具体的には、クロック信号によるEMIや、そのクロック信号を基準に動作するデバイスのスイッチング周波数によるEMIのピーク値を抑えることができる。ただし、周波数を変動させただけなので、EMIの全エネルギー量は変化しない。
周波数変動の与え方は、SSCGチップによって異なる。例えば、中心周波数の高周波側だけに周波数を変動させるチップや、低周波側だけに変動させるチップ、その両方に変動させるチップがある。しかも、その周波数変動幅もチップによって異なる。さらに、横軸に時間、縦軸に周波数をとった場合の周波数変動波形もチップによって違う(図1)。三角波に近い波形もあれば、正弦波に近い波形もある。
SSCGチップを採用すれば、後述する副作用の影響を受けづらい電子機器の場合は、大きな設計変更を施すことなくEMI対策を打てる。例えば、デジタル・デバイスだけで構成されている電子機器であれば、既存のクロック発振器をSSCGチップに変更するだけでよい。しかも、SSCGチップを適用する電子機器に大きく依存するが、15dB程度と大きな削減効果を得られる場合がある。仮に、これだけの削減効果が得られれば、フェライト・ビーズやコモンモード・チョーク・コイル、デカップリング・コンデンサなどの対策部品や金属シールド板などを省けるようになる。つまり、コストを大きく削減できるわけだ。
ただし、ほとんどの電子機器では、SSCGチップの採用時には副作用に注意を払う必要がある。考慮すべき副作用は2つある。
1つは、ジッターである。SSCGは、クロック信号に対して、積極的に周波数変動分を与えている。従って、SSCGをデータ伝送用のトランシーバなどに適用すると、その変動分がジッターとして現れる。もちろん、SSCGチップ・ベンダーは、ジッターの発生を抑えるべく、周波数変動波形などに工夫を施している。しかし、アナログ・デバイスやミックスド・シグナル・デバイス、特にPLLを採用したデバイスにSSCGチップを適用する場合は、波形などを測定し、信号品質が劣化していないことを確認することが最低限必要だろう。
もう1つの副作用は、SSCGチップを適用することで、EMIのレベルがかえって増大する危険性があることだ。クロック信号の中心周波数では共振しない信号配線が、変動を与えた周波数では共振してしまったり、低い変調周波数以外のEMIレベルが増大してしまったりすることが起こり得るからである。従って、SSCGチップを採用したからといって安心せずに、適用後のEMIの状況を丁寧に把握、分析する必要があるだろう。
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アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2013年3月31日
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