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パッシブ・フィルタ

» 2011年04月08日 00時00分 公開
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パッシブ・フィルタ

図1 図1 パッシブ・フィルタ(低域通過フィルタの例)

 パッシブ・フィルタとは、抵抗やコンデンサ、インダクタといった受動(パッシブ)部品だけで構成したフィルタのこと。これらの受動部品の並べ方で、ローパス(低域通過)・フィルタや、ハイパス(高域通過)・フィルタ、バンドパス(帯域通過)・フィルタを構成できる(図1図2)。

図2 図2 パッシブ・フィルタ(高域通過フィルタの例)

 主な用途は、周波数特性の異なるスピーカーに対してそれに応じてオーディオ信号の周波数成分ごとに振り分けるクロスオーバー・ネットワークや、電源回路の出力平滑フィルタ、プリント回路基板におけるノイズ対策用バイパス(デカップリング)・フィルタなどである。


大電力を扱え、高周波にも対応

 このフィルタを構成する代表的な技術としてはアクティブ・フィルタがある。これは、オペアンプなどの能動素子に抵抗やコンデンサを外付けして構成するフィルタである。アクティブ・フィルタと比べた場合に、パッシブ・フィルタの方が優れている点は、大きく四つに分けられるだろう。

 一つは、大きな電力を扱えることである。例えば、電圧が数百Vと高かったり、電流が数Aと大きかったりする電気信号に対してフィルタ処理を実行可能だ。アクティブ・フィルタは、オペアンプなどの能動素子を用いるため、高い電圧や大きな電流を扱うのが苦手である。

 二つめは、対応する周波数帯域が非常に広いことである。直流(DC)に近い周波数帯域から、10GHzを超える周波数帯域までカバーできる。アクティブ・フィルタは、オペアンプなどの能動素子に動作速度に限界があるため、高い周波数帯域は苦手とする。せいぜい、2〜3GHzまでしか対応できない。

 三つめは、すべて受動部品で構成するため、電力を消費しないことである。もちろん、抵抗のほか、コンデンサやインダクタの等価直列成分で電力を消費するが、その量はオペアンプのそれに比べればわずかである。

 四つ目は、コストが低いことである。抵抗やコンデンサ、インダクタは特殊な品種ではなく、一般的な品種であれば、かなり低い価格で入手できる。一方、オペアンプは、一般的な品種であれば決して高価ではないが、それでも受動部品に比べれば価格は高い。従って、フィルタ全体のコストは高くなってしまう。

フィルタ特性には劣る

 パッシブ・フィルタは、安価な上に手軽に設計できる。使い勝手の高いフィルタ技術だと言えるだろう。しかし、アクティブ・フィルタに比べると、いくつか大きな欠点を抱えている。最大の欠点は、フィルタ特性に劣ることである。つまり、必要な周波数領域と不要な周波数領域の差が極めて小さい「キレのいい」フィルタ特性は実現しづらい。言い換えれば、ロールオフ特性に優れたフィルタは得られないことになる。

 二つめの欠点は、受動部品だけで構成するため当たり前なのだが、オペアンプを使ったアクティブ・フィルタとは違って利得が得られないことである。従って、電圧振幅がとても小さいセンサー出力のシグナル・コンディショニング(アナログ信号処理)を実行する場合は、パッシブ・フィルタのほかに、アンプ回路を用意する必要がある。アクティブ・フィルタを使えば、一つの回路だけで済ますことが可能だ。

 三つめは、対応する周波数が低い場合は、外形寸法が大きくなってしまうことである。受動部品の特性値(キャパシタンスやインダクタンス)は、周波数の関数だからだ。外形寸法が大きいため、ICの中に集積することは難しい。

ツールで簡単に設計できる

 パッシブ・フィルタの設計は、比較的簡単だ。抵抗やコンデンサ、インダクタを使ったフィルタ回路の周波数特性については、すでに数学的な手法で求めることが可能になっているからだ。パッシブ・フィルタの設計をサポートするツールも数多く市場投入されている。

 米National Semiconductor社では、オンライン支援設計ツール「WEBENCH Sensor Designer」では、センサーから始まるシグナル・パスで使用するパッシブ・フィルタを自動的に設計する機能を搭載している。ユーザーは、使用するセンサーを選択するだけで、増幅用のオペアンプ、デジタル化用のA-Dコンバータのほか、シグナル・コンディショニング用のパッシブ・フィルタを含む一連の回路を設計することが可能だ。


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アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2013年3月31日

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