AC結合とDC結合は、2つの回路の間や、2つの基板の間、2つの装置の間などを電気信号で接続する方式のこと。AC結合は交流結合、DC結合は直流結合とも呼ばれている。DC結合は、その名の通り直流成分を送ることができるが、AC結合は直流成分を送ることができない。従って、伝送するパルス信号に直流成分が含まれないように工夫する必要がある。
AC結合とDC結合は、適用対象となる回路や基板、装置によって使い分ける必要がある。通常、AC結合は、次のような2つの場合で使われている。
1つめは、ドライバ(送信回路)とレシーバ(受信回路)のロジック信号仕様が異なるときである。例えば、ドライバがECLで、レシーバがPECLといった場合だ。この場合、ロジック信号仕様が異なるため、DC結合ではデータの「0」と「1」とのしきい値が異なりデータを正しく伝送できない。そこでAC結合の出番となる。さらに、ロジック信号仕様が同じでもAC結合が適用される場合がある。それは、ロジック信号仕様にCMLやLVPECLなどを使う場合である。これらの信号仕様は、標準規格が存在しないため、同様にドライバとレシーバのしきい値電圧(スレッショルド電圧)が異なるケースがあるからだ。特に、ドライバとレシーバに異なるメーカーの半導体チップを使うときは、AC結合を採用した方が安全である。
もう1つは、2つの回路の間や2つの基板の間、2つの装置の間に、グラウンド電位の差が存在する場合だ。この差は、レシーバにおいてDCオフセット電圧として現れる。DCオフセット電圧が「0」と「1」とのしきい値を正しく受信側が判断できれば問題ない。しかし、1/2×Vcc(電源電圧)を超えると、DC結合では大問題となる。受信信号の電圧レベルがDCオフセット電圧の分だけ動いてしまい、データを正確に伝送できなくなるからだ。
AC結合を採用すれば、上記の2つの場合でも、データを問題なく伝送できるようになる。AC結合の簡単な回路図を図1に示す。DC成分は、コンデンサによって遮断される。そしてレシーバの入力波形は、バイアス電圧(VBIAS)を中心に低電圧側と高電圧側に振れることになる。このため、過大な振幅差がない限り、ロジック信号形式が違ってもデータを正確に伝送できるわけだ。
ただし、AC結合には欠点もある。それは、DCバランスをとる必要があることだ。具体的には、伝送するデータの「0」と「1」の数を50%/50%にしなければならない。また、「0」や「1」がいくつも連続するデータ波形は許されない。一般に、DCバランスを確保する際は、8B10B方式やデータにDCバランスビッドの追加といった符号化処理が欠かせない。その分だけ回路が複雑になり、コストが上昇する。
従って、電源電圧とグラウンド電位が同じプリント基板上の半導体チップの間を接続する場合などは、通常DC結合を採用している。その方が、手軽で安価に実現できる。
AC結合は、DisplayPortやHDMI、DVI、GビットEthernetといった高速インターフェース技術のほとんどで採用されている。CML(Current Mode Logic)を使った10Gビット/秒の高速インターフェース技術もAC結合だ。
LVDS関連製品も登場当初は、DC結合を採用していたが、最近ではAC結合を採用する製品も増えている。その一例が米ナショナル セミコンダクター社のエンベデッド・クロックSerDesチップセットである。このチップセットは、シリアライザICの「DS92LV3241」と、デシリアライザICの「DS92LV3242」で構成されており、最大2.7Gビット/秒のデータを約5m(カテゴリー5のより対線を使った場合)伝送できる。
テキサス・インスツルメンツのインタフェース製品ラインアップ
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アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2013年3月31日
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