イコライザ(equalizer)とは、データ伝送で使われるシグナル・コンディショニング(信号調整)技術の1つ。伝送信号の周波数特性を最適化するため、フィルタ回路などを使って、その特性を調整する補償回路である。プリエンファシスやデエンファシスと同様に、LVDS(Low voltage differential signaling)やCML(Current Mode Logic)といった高速差動シリアル伝送方式で盛んに使われている技術である。
一般に、高速な差動信号を送る配線ライン(伝送線路)は、ローパス・フィルタ(低域通過フィルタ)の役割を果たす。つまり、そこを伝搬する信号の低周波成分はそのまま通過できるが、高周波成分は大きく減衰してしまう。その減衰量は、伝送距離が長ければ長いほど、周波数が高ければ高いほど大きくなる。従って、高速な差動信号を長距離送る場合は、シンボル間干渉(ISI:Inter-symbol Interference)ジッタが大きくなってしまい、データを正確に伝えることが困難になる。
こうした問題を解決するために使われている方式の1つがイコライザである。イコライザは、受信(レシーバ/デシリアライザ)側で実行するシグナル・コンディショニング技術である。伝送線路のローパス・フィルタ特性によって失われてしまう高周波成分を受信側で持ち上げる(ブーストする)ことで補償する。
例えば、ある差動ケーブルでLVDS信号を10m伝送すると、1.56GHzの周波数成分が約18dBも(約1/8に)減衰してしまう(図1)。このままでは、ISIジッタが大きすぎて、データを正確に送ることができない。そこで、イコライザを送信側に適用して、1.56GHzの周波数成分を約18dBにブーストする。その結果、イコライザを適用する前はアイ・パターンがまったく開いていなかったが、適用後にはアイ・パターンを完全に開かせることが可能になる(図2)。
シグナル・コンディショニング技術には、イコライザのほかにも、送信(トランスミッタ/シリアライザ)側で実行するプリエンファシスとデエンファシスがある。実行する場所は異なるものの、「伝送線路で失われる周波数成分を補償する」という基本機能は同じだ。
それではイコライザとプリエンファシス/デエンファシスは、どのように使い分ければよいのか。使い分けの目安になるのは、減衰量の大きさである。例えば、ある周波数成分の減衰量が 34dB(1/50)と大きな伝送線路を考えてみよう。これをプリエンファシスで補償する場合は、その周波数成分を約50倍に高めて伝送することは信号振幅が大きくなりすぎて使用できない。一方、デエンファシスを使う場合は、低周波成分を1/50に抑える必要があるので信号振幅が小さくなりすぎてしまう。いずれの場合も、LVDS/CML信号を正しく伝送できない。そこで減衰量が大きな場合は、イコライザに頼らざるを得ないわけだ。
現在、イコライザICさまざまな品種が市場に投入されている。1.5G~12.5Gビット/秒の高速データ伝送に対応した品種や、36dBと高いブースト量に対応した品種などがある。ここでは、電源が不要なパッシブ・イコライザIC「DS38EP100」を紹介しよう。このICは、抵抗やコンデンサ、インダクタといった受動部品の回路網で構成したもので、最大7dBの等価的なイコライザ機能を備えている。対応するデータ伝送速度は1G?5Gビット/秒と広い。電源が不要なため、シリアル・インタフェースのどこにでも配置可能だ。使い勝手の高いデバイスと言えるだろう。
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アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2013年3月31日
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