【ビデオ講座】「LEDシリーズ第2回目」大電力用途に向けたLED照明器具、その設計の技術的ポイントを解説(後編) (クリックで動画再生)
一般照明や道路灯、街路灯などの大電力用途に向けたLED照明器具を設計する際の技術的なポイントは大きく分けて2つある。1つは、LEDの接続方法である。直列接続と並列接続という2つの選択肢があるが、大電力用途では信頼性を高められる直列接続が適している。もう1つは、駆動回路の構成方法だ。これもスイッチング方式とリニア方式という2 つの選択肢がある。ただし、それぞれにメリットとデメリットがあり、現状ではどちらの方式が適していると断言するのは難しい(図1)。
こうした中、米National Semiconductor社は、リニア方式を採用しながらも98%と高い変換効率を得られるLEDドライバIC「LM3464」を開発した(図2)。図3は、このICを採用したLED照明器具向けデモ機である。出力電力は約120Wである。
リニア方式を採用しながら、いかにして98%と高い変換効率を達成したのだろうか。一般に「リニア方式は変換効率が低い」とされる理由は、入力電圧と出力電圧の差に相当するエネルギーをパワー・トランジスタなどで消費させて、出力電圧を安定化している点にある。例えば、入力が5Vで出力が2.5Vであれば、変換効率は2.5/5×100=50%しか得られない。
ただし、入力電圧と出力電圧の差を極めて小さくすればどうだろうか。この点に着目して開発したのが前述のLM3464である。ナショナル セミコンダクター ジャパンのマーケティング本部でプロダクトマーケティング 課長代理を務める辻慎治氏は、「入力電圧と出力電圧の差を最小限に抑えるダイナミック・ヘッドルーム・コントロール(DHC:Dynamic Headroom Control)と呼ぶ方式を採用することで、98%と高い変換効率を実現した」と説明する。
LM3464を使って構成した大電力用途向けLEDドライバの回路図を図4に示す。LM3464は4つの列(ストリング)の供給電流を独立に駆動できるLEDドライバICであり、それぞれの列にスイッチング素子(パワーMOSFETなど)を接続して使う。そして、各スイッチング素子のカソード電圧をLM3464にフィードバックする。カソード電圧を受け取ったLM3464は、4つの電圧値のうち最も低い値に対応する信号をAC-DCコンバータ(スイッチング電源)用制御ICに送る。すると、AC-DCコンバータ用制御ICは、LEDの駆動に最小限必要な電圧値になるように2次側電圧を微調整するわけだ。こうして入力電圧と出力電圧の差が極めて小さくなるように調整する。例えば、出力電圧が50Vで、スイッチング素子のオン抵抗(電流調整用抵抗を含む)が1Ω、直列に接続したLEDの端子電圧が49Vであれば、49/50×100=98%と極めて高い変換効率が得られる。
LEDドライバICの入力電圧と出力電圧を最小限に抑えることで、リニア方式でもスイッチング方式並みの高い効率を得ることが可能になる。しかも、ノイズが少ないことや、コイルやダイオードなどが不要なためコストが比較的低く、実装面積も小さくできるというリニア方式のメリットも当然ながら享受できる。
ただし、LM3464が出力信号を受ける取るために、AC-DCコンバータ(スイッチング電源)に端子が必要になる。一般的なAC-DCコンバータにはこうした端子はついてない。従って、専用端子を設けなければならない。今回、ナショナル セミコンダクター ジャパンが試作したLED照明器具向けデモ機では、新電元工業と共同で開発した、専用端子を備えるAC-DCコンバータを採用した。ただし、辻氏によると、「AC-DCコンバータに専用端子を設けることは、技術的に難しいことではない。しかも、コスト上昇分は非常に小さい」という。
このほかLM3464には、道路灯や街路灯などの大電力用途に向けた各種の機能を搭載している。その1つがマスター/スレーブ機能である。複数のLM3464をカスケード接続することで、極めて出力が大きなLED照明器具にも対応できるようになる。1つのLM3464で駆動できるのは、120〜130W程度。従って、5個のLM3464をカスケード接続すれば、650W程度と大きなLED照明器具の駆動も可能になる。
2つめの機能は、保護回路である。ショート(短絡)やオープン(開放)などの故障が発生すると、それを検出してフォールト・フラグを立てる機能を用意した。このフラグが立つと、故障が発生したストリングへの電力供給を止める。こうして、故障したストリングに接続されたほかのLEDを守るわけだ。なお、故障したストリングへの電力供給を再開するには、システムをリセットすればよい。
さらに、調光機能も用意している。PWM信号を外部から入力することで実現可能である。
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提供:日本テキサス・インスツルメンツ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2013年3月31日
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