質問:「多品種少量(たひんしゅしょうりょう)」という言葉を聞くのですが、どういった意味なのでしょうか。
答え:製品の品種が多くて、1品種当たりの生産数量または販売数量が少ないことです。今の電子機器のほとんどが、多品種少量生産だといってよいでしょう。
質問:でもなぜ、多品種少量なのですか。
答え:いろいろな理由があります。例えば日本市場で販売されている民生用電子機器ですと、大半の機器がすでに普及してしまっていることが大きな理由です。新製品では、既存製品と違う機能を追加して付加価値を付けることで、買い替え需要を促すことがごく普通になっています。また一方で、競合製品との差異化を図るために、独自の機能を追加しなければなりません。さらには、どのような製品が市場でヒットするかが分かりにくくなっているという事情もあります。そこで追加機能の少しずつ違う派生品を発売して品種数を増やすことで、市場のニーズに幅広く応えようとしています。買い替え需要が主体ですと全体の市場規模(数量ベース)はそれほど変わりませんので、品種数が増えると必然的に、1品種当たりの平均的な生産数量は減っていきます(図1)。
質問:品種を増やすと、開発コストが増えます。生産規模が少なくなると、製造コストも上がります。値段が高くなってしまうのでは。
答え:その通りです。ですから、何らかの手段で開発コストと製造コストを抑えなければなりません。そのために有効な半導体が、FPGAなのです。
質問:前回ではFPGAは試作段階で使われていると説明を受けました。量産でもFPGAを使うのですか。
答え:もちろん、量産製品のすべてでFPGAを使うわけではありません。FPGAが「多品種少量」生産に適しているということです。
質問:なぜ適しているのでしょうか。
答え:FPGAは、同じ半導体チップに異なるデジタル回路を組み込めます。これは、異なる機能を組み込めることを意味します。ですから、まったく同じシステム・ボードでありながら、異なる機能を実装できます(図2)。FPGAを使うと見かけのハードウェアが同じでありながら、いくつもの派生品を開発できるんですね。このため、品種当たりの開発コストを抑えることができます。ハードウェアが同じであるということは、品種が増えてもハードウェア当たりの生産数量が減らないということです。このため、製造コストも増えにくくなります。
質問:でも、FPGAは回路規模当たりでみると半導体チップの価格がかなり高いですよね。ソフトウェアで機能を変更したほうが良いんじゃありませんか。
答え:ソフトウェアで機能を変更するコスト自体は、FPGAを採用するよりも低いです。ところが、ソフトウェアが走るマイコンに問題があるのです。それは、市販のマイコンが内蔵する周辺回路は固定されているということです。マイコンの多くは、タイマやアナログ・デジタル変換器、簡単なインタフェースといった汎用的な機能のハードウェアを内蔵しています。ですが競合製品と差異化するために、いろいろな機能を付加しようとすると、マイコンでは対応できないことが少なくありません。FPGAあるいはASICのようなカスタマイズできるハードウェアが必要になります。
質問:マイコンのハードウェアをカスタマイズすることは不可能なのでしょうか。
答え:不可能ではないのですが、マイコンをカスタマイズするには、10万個単位といったかなりの数量を購入することが前提になります。このようなケースは実際の購買ではまれですし、少量生産ではなくなってしまいます。FPGAが適しているのは、例えば10品種の合計生産数量が100個といったシステムを開発するケースです。年間出荷台数の多くない半導体製造装置や液晶製造装置などの制御ボードでは、FPGAがごく普通に使われています。通信ボードでも、FPGAを採用した製品がいくつもあります。
質問:なるほど。1品種当たりの平均は10個ですけど、同じFPGAを使えたら、購入数量は100個になりますから、10個のときよりも安く購入できる可能性が高まりますね。
答え:その通りです。しかも最近のFPGAは最先端のプロセスを使っているので、シリコンダイが小さくなり、回路規模当たりの単価が以前に比べるとはるかに低くなっています。ですから、購入数量が1万個といった生産規模のシステムでも最近はFPGAを使うことが多くなっています。100個以下でも1万個でも対応できるのが、最新のFPGA製品なのです。
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提供:日本アルテラ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2013年3月31日
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