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LVDSを基礎から理解する(6) クロック埋め込み対8B10B(その1)【ビデオ講座】アナログ設計の新潮流を基礎から学ぶ

» 2011年09月01日 00時00分 公開
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【ビデオ講座】LVDSを基礎から理解する(6) クロック埋め込み対8B10B(その1) (クリックで動画再生)


図1 図1 高速シリアル・インターフェースの構成
従来は、パラレル形式でデータを伝送していたが、高速化(クロック周波数の向上)に限界が訪れた。それに代わって登場したのが、シリアル・インターフェースである。高速データを長距離伝送することができる。

 電子機器と外部の周辺機器を結ぶ外部インターフェース。電子機器の中で、半導体チップ間や機能モジュール間を接続する内部インターフェース。現在は、それらのほとんどがシリアル・インターフェースとなっている(図1)。もちろん、パラレル・インターフェースも残っているが、一部の用途に限定されているのが実情だ。

 これだけ多くのインターフェースにおいてシリアル化が進んでいるため、市場にはさまざまな規格や仕様が登場している。一般的な高速なシリアル・インターフェース規格としては、HDMIやPCI Express、シリアルATA、DisplayPortなどが挙げられる。さらに、最近ではUSB3.0やThunderboltなども登場しており、マスコミやエンド・ユーザーの間では大きな話題となっている。

 多種多様な規格や仕様が存在すると、最適な規格や仕様を選択する作業は非常に困難になる。もちろん、規格や仕様を使わずに、独自の設計でも高速なシリアル・インターフェースを実現できる。例えば、32ビット幅で、クロック周波数が100MHzのデータを数m伝送する場合はどうすればよいのだろうか。独自設計で対応した方がいいのか。規格や仕様を利用する場合はどれを選択すればよいのか。こうした選択肢の中から最適な答えを見つけ出すには、高速シリアル・インターフェースの基礎を把握し、それぞれの規格や仕様の内容を技術的に理解する必要があるだろう。今回は、高速シリアル・インターフェースの技術的な基礎を理解するため、「クロック埋め込み(エンベデッド・クロック)対8B10B」という視点で、各規格/仕様について考えていく。

ほとんどがAC結合を採用

表1 表1 高速シリアル・インターフェースの比較

 まず、表1をご覧いただきたい。さまざまな高速シリアル・インターフェース規格の内容をまとめた表である。これを見ると、2つの違いに気付くはずだ。

 1つめの違いは、接続方法である。いずれの規格もAC(交流)接続、もしくはDC(直流)接続のいずれかを採用している。「AC結合とDC結合は、シリアル・インターフェース技術において、非常に基本的な考え方である。必ず理解しておきたい技術用語だ」(LVDS関連製品のマーケティングを担当する河西基文氏)。そこでまずは、AC結合とDC結合を簡単に説明しておこう。AC結合とDC結合の最大の違いは、直流成分を送ることができるか、できないかにある。DC結合は直流成分を送ることができるが、AC結合は直流成分を送ることができない。このため、DC結合を適用できるのは、相互接続する2つの半導体デバイス(ドライバとレシーバ)のグラウンド電位が同じ場合で、2つの半導体デバイスのロジック信号レベルが同じ場合である。グラウンド電位が異なる場合に直流成分を送ってしまうと、レシーバではその違いの分だけ電圧レベルが上下してしまうので、正しい情報を受け取れなくなる。このため、DC結合が利用できるのは実質的に、同一装置内のGND電位が同じプリント基板に実装した半導体チップ間を接続する用途に限定される。

 最近の高速シリアル・インターフェース規格は、その多くがAC結合を採用している。これはボード間や装置間といった用途だけでなく、さらに高速化のためにCML(Current Mode Logic)を使っていることも、AC結合を採用する1つの理由になっている。CMLは、コモンモード電圧(VCM)が明確ではない。このためレシーバ側で最適なコモンモード電圧としジッタを最小に抑えるため、直流成分をカットできるAC結合を採用しているわけだ。

直流成分が存在すると正確な伝送が困難に

図2 図2 直流/低周波成分が引き起こす問題

AC結合では、直流/低周波成分が含まれていると、正確なデータ伝送が困難になる。具体的には、「0」や「1」がずっと続く場合である。「1」がずっと続くと、レシーバ(入力B)での電圧レベルが低下し、「0」と「1」のしきい値である0Vに近づく。この結果、長時間「1」が続いた最後の方のデータは、「0」なのか、「1」なのか判定できなくなる。

 もう1つの違いは、AC結合を実現するために使うシリアル・コーディング(符号化)にある。2つの方式が使われている。1つは8B10B方式。もう1つはエンベデッド・クロック方式であり、言い換えるとスタート・ストップ・ビットのクロック埋め込み方式である。

 高速のシリアル・コーディングでは、一般的に直流成分や低周波成分の除去を行なっている。ドライバから伝送する信号において、ずっと「0」、もしくはずっと「1」の状態が発生すると、信号レベルは長時間変化しなくなる。つまり、直流成分や低周波成分が発生してしまう。こうした状態になると、AC結合を採用しているため正確なデータ伝送ができなくなり、またレシーバ側のPLLがロックできなくなる。例えば、「1」がずっと続くと、レシーバにおける電圧レベルが次第に低下し、「0」と「1」のしきい値である0Vに近づく(図2)。この結果、長時間「1」が続いた最後の方のデータは「0」なのか、「1」なのか判定できなくなってしまうわけだ。さらに、その後にトグルした場合も、DCオフセット電圧がずれた状態から振幅が変化するため、その後のデータ伝送にも悪影響を与えることになる。こうした現象を「DCベースライン・ワンダー」や「DCインバランス」、「パソロジカル」などと呼ぶ。8B10B方式、DCバランス付きクロック埋め込み方式のどちらかを利用すれば、直流成分を含んだ低周波成分を除去することが可能だ。

 今回は、高速シリアル・インターフェース規格の違いについて、接続方式とシリアル・コーディング方式の2つの側面から説明した。ただし、表1を見た読者の皆さんの中には、「データ伝送速度も違うから、違いは3つのはずだ」と思われた方も多いだろう。確かに、規格や仕様によってデータ伝送速度が違う。しかし。この違いはデータ伝送方式に由来するものではないため、今回の違いには含めなかった。データ伝送速度は、ドライバやレシーバといった半導体チップのスイッチング速度や使用する伝送媒体(ケーブルや基板)の損失、その損失を補うイコライザ・チップの性能などを含めたトータルの性能で決まる。つまり、高性能なイコライザ・チップとインサーション・ロス(挿入損失)、リターンロス(反射損失)が低い伝送媒体を使えば、高速なデータを長距離送ることが可能になる。 現在、Thunderboltが10Gビット/秒を実現できるとして話題になっているが、データ伝送技術という観点から見ると特に目新しくはない。従来から使われている8B10B方式と、現在のハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)の分野で利用されている半導体技術を組み合わせることで実現できたものである。



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提供:日本テキサス・インスツルメンツ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2013年3月31日

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