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超小型電源モジュール(1) 1A品を2.5mm×3mm×1.2mmで実現【ビデオ講座】アナログ設計の新潮流を基礎から学ぶ

» 2012年01月01日 00時00分 公開
[PR/EDN Japan]
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【ビデオ講座】超小型電源モジュール(1) 1A品を2.5mm×3mm×1.2mmで実現 (クリックで動画再生)


図1 図1 電源モジュールとは
電源モジュールとは、スイッチング・レギュレータICやスイッチング素子のほかに、インダクタを1つのパッケージに収めたもの。

 スイッチング・レギュレータICやスイッチング素子とともに、インダクタなどの受動部品を1パッケージに収めた電源モジュール(DC-DCコンバータ・モジュール(図1)。ここ数年、この電源モジュールの製品化が相次いでいる。その理由は、電源モジュールが持つメリットにある。電源モジュールの内部には、電源回路を構成するさまざまな電子部品が収められている。従って、これを購入して、プリント基板に搭載するだけで電源回路が完成する。電源回路設計という比較的複雑な作業を省くことができる。

 さらに、スイッチング・レギュレータICの開発元である半導体メーカーが、電源モジュールを設計/製造しているため、高い変換効率や大幅な小型化、低EMI特性などのメリットをユーザーに提供できる。しかも、最近では電源回路をはじめとするアナログ回路の設計ノウハウを持つエンジニアが、電子機器メーカーにおいて減少する傾向がある。こうした傾向も相まって、電源モジュールの製品化が相次いでいるわけだ。

1A出力で最小の外形寸法

図2 図2 「SIMPLE SWITCHERモジュール」の製品ラインナップ
発売した「SIMPLE SWITCHER® ナノ・モジュール」の型番は「LMZ10500」と「LMZ10501」である。耐圧が低く、出力電流が少ない領域をカバーする。

 現在市場では、さまざまな電源モジュールを手に入れることが可能だ。例えば、米テキサス・インスツルメンツ(TI)社ではすでに、耐圧が20Vで出力電流が最大1A、外形寸法が10mm×10mm×4.6mmの「LMZ12001」や、耐圧が36Vで出力電流が最大10Aと大きい「LMZ13610」などを市場に投入している。

 こうした中、同社は、外形寸法が2.5mm×3.0mm×1.2mmと小さく、出力電流が最大1Aの降圧型電源モジュール「SIMPLE SWITCHER® ナノ・モジュール」を製品化した。日本TIでこの製品のマーケティングを担当する山田浩二氏によると、「出力電流が最大1Aのインダクタ内蔵降圧型電源モジュール(DC-DCコンバータ・モジュール)では、業界で最も外形寸法が小さい」という。入力電圧は3.3Vと5Vの電源レールに対応しており、出力電流は最大1Aの「LMZ10501」のほか、最大650mAの「LMZ10500」を用意している。同社が販売している電源モジュールの製品群の中では、「耐圧が最も小さく、出力電流が最も少ない製品」という位置づけになる(図2)。

図3 図3 ナノ・モジュールの外観
台座に相当するチップ・インダクタの上に、スイッチング・レギュレータICを実装した構造を採用した。

 これまでTI社が販売していた1A出力品の外形寸法は、10mm×10mm×4.6mmが最小だった。従って、今回発売したナノ・モジュールでは、大幅な小型化を達成したことになる。小型化を実現できた理由は何なのだろうか。まずは、構造から説明しよう。ナノ・モジュールは主に2つの部分から構成されている(図3)。1つは、台座に相当する部分。これは、カスタム設計したチップ・インダクタである。もう1つの部分は、この台座に載せたスイッチング・レギュレータICである。ベア・チップの状態で実装してある。ベア・チップの表面にボール・バンプを形成し、これを使ってチップ・インダクタや外部配線との接続を確保している。

 入力コンデンサと出力コンデンサは、搭載していない。従って、外付け部品としてプリント基板に実装する必要がある。ただし、入力/出力コンデンサを含めた電源回路全体の実装面積についても35mm2(約6mm角)と極めて小さい。「電源回路全体の実装面積についても、1A出力の電源モジュールにおいて業界最小」(同氏)という。

性能のバランスを最適化

 DC-DCコンバータ回路を小型化する際の常套手段に、スイッチング周波数の高周波化がある。実際に、競合他社の中にはスイッチング周波数を6MHzや8MHzに高めることで、出力電流が小さいながらも大幅な小型化を実現した例がある。しかし、発売したSIMPLE SWITCHER® ナノ・モジュールのスイッチング周波数は2MHzであり、決して高いといえる値ではない。「当社従来品のスイッチング周波数は500k~1MHzだったので、これに比べると2倍程度に高めたことになる。この2倍の効果として、外形寸法を小型化できたのに加えて、詳細は明らかにできないが、さまざまな最適化によって。業界最小の外形寸法と実装面積を実現した」(山田浩二氏)と説明する。

 スイッチング周波数を2MHzに設定した理由は、大きく分けて2つある、1つは、仮にスイッチング周波数を6MHzに高めたからといって、実は劇的に小さくなるわけではないからだ。市販のチップ・インダクタのサイズは1μH〜4.7μHで、同サイズしか用意していない。従って、スイッチング周波数を高めても、極めて小型のチップ・インダクタを利用できるとは限らない。

 もう1つの理由は、性能のバランスである。スイッチング周波数を高めると、変換効率が低下したり、放射雑音(EMI)や出力電圧リップルが増加したりしてしまう。つまり、電源にとって重要な基本性能が劣化してしまうのだ。しかし、スイッチング周波数をある程度高めないと外形寸法をできない。そこで、外形寸法と電源の基本性能のバランスを取った結果として2MHzを選択した。

LDOの置き換えを狙う

図4 図4 出力電圧リップル
ピーク・ツー・ピークで10mV以内に収まっている。十分に小さい値と言える。

 電源の基本性能も重視したため、出力電圧リップルやEMI、変換効率といった特性もかなり高いレベルに達している。

 出力電圧リップルの測定結果を図4に示す。この図から分かるように、出力電圧リップルは、ピーク・ツー・ピーク値で10mV以内に抑えられている。「かなり低い値。LDOレギュレータとほぼ同等の性能と言える」


図5 図5 EMI特性
放射雑音(EMI)は、その規制値である「CISPR22 クラスB」をクリアできる。

 EMIについては、同社従来品に引き続き、EMI規制値である「CISPR22 クラスB」を満足している(図5)。このため、電源モジュールを搭載した電子機器がEMI規制をクリアしやすくなることに加えて、通信回路や画像処理回路の動作を妨害する事態を防ぐことが可能になる。 変換効率は、ピーク値で95%程度が得られとする(図6)。「競合他社品に比べると、5%程度高い」

 超小型ながら、高い基本性能を兼ね備えるSIMPLE SWITCHER® ナノ・モジュール。ターゲットとする市場は、LDOレギュレータICの置き換えである。一般に、LDOレギュレータICのユーザーは、低い出力電圧リップルや、低いEMI特性を重視し、変換効率が低いことについては我慢して使っているケースが多い。しかし、発売した電源モジュールを使えば、LDOレギュレータICとほぼ変わらない低い出力電圧リップルや低いEMI特性を享受しながら、LDOレギュレータICを大きく上回る変換効率が得られる。「もろちん、LDOレギュレータICと同じぐらいの手軽さで、設計や実装を行える」という。最適なアプリケーションとしては、ポータブルな医療機器や画像処理装置、センサーを利用するFA機器(流量計など)などが挙げられる。

図6 図6 変換効率
入力電圧が3.6Vで、出力電圧が3.3Vのときに、ピーク値で95%程度が効率が得られる。

 今後、TI社では、ナノ・モジュールの品ぞろえを拡充していく考えだ。「考えられる方向性は2つある。1つは、出力電流を増やす方向。もう1つは、耐圧を高める方向。例えば、耐圧を20Vに高めることで、12Vラインにも対応できるようにしたい」。



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提供:日本テキサス・インスツルメンツ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2013年3月31日

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