【ビデオ講座】高速伝送用シグナル・コンディショナ(前編) (クリックで動画再生)
ケーブルやバックプレーンなどを使ってデータを伝送する際、振幅の減衰やノイズの影響などで歪んだり、乱れたりしてしまった信号波形を元のきれいな姿に戻す機能を備えたシグナル・コンディショナIC。高速なデータ伝送には欠かせないICである。
日本テキサス・インスツルメンツ(TI)は2012年2月1日に、シグナル・コンディショナICの新製品を市場に投入した。発売したICは全部で10品種ある。品種によって、機能が少しずつ異なるが、それらをまとめて表現すると、いわゆるリタイマICやリピータICという製品群になる。リタイマICやリピータICとは、長いデータ伝送路の間に挿入して使用する。歪んだり、乱れたりしてしまった信号波形を元のきれいな状態に戻して、再び送り出すというもの。これらのICを活用すれば、高速な信号を送る伝送路の距離を延ばすことが可能になる。
対象となるアプリケーションは、サーバーやスイッチ、ルーター、ストレージなどである(図1)。こういったアプリケーションにおいて、装置間やカード/ボード間を接続するケーブルやバックプレーンなどの伝送距離を延ばす用途に向ける。対応するデータ伝送規格としては、10G/40G/100G Ethernet(イーサネット)や10G-KR(IEEE802.3ap)、InfiniBand(インフィニバンド)、Fiber Channel(ファイバチャネル)などが挙げられる。
今回、日本TIが製品化したDS125RT410などのリタイマICだが、そもそもそれらのIC自体には新規性はない。実際に、同社でシグナルチェーン関連のマーケティングを担当している結城靖夫氏は「リタイマICやリピータICはすでに、さまざまな半導体メーカーが製品化しており、特に目新しいものではない」という。しかし、「競合他社品にはない三つの特長がある」とする。
一つは、性能が非常に高いことである。具体的には、最大12.5Gビット秒の信号を、FR-4基板上のバックプレーンで50インチ(約1.3m)、AWG24ケーブルで約20mも伝送できる。
二つめは、消費電力が極めて低いことだ。リタイマICの消費電力はチャネルあたり150mW、リピータICはチャネルあたり65mWである。「これらの数字は、競合他社品の半分以下」(同氏)という。
三つめは、使い勝手が高いことである。電圧制御型発振器(VCO:Voltage Controlled Oscillator)を集積しているためクロック発振器を外付けする必要はない。さらに、+2.5V単一電源で動作することや、電源用フィルタを内蔵したためEMIフィルタを別途外付けする必要がないことも使い勝手も高めている。このほか、オンチップ診断も便利な機能と言えるだろう。測定器を使わなくても、アイ・パターンを確認できる。
主なアプリケーションであるサーバーやスイッチ、ルーター、ストレージなどの電子機器。こうした電子機器では特に、「リタイマICやリピータICに高性能化と低消費電力化が強く求められている」(結城靖夫氏)という。
高性能化が強く求められている背景には、入出力インターフェイスのデータ伝送速度が日増しに高くなっていることがある。データ伝送速度が高くなると、バックプレーンやケーブルでの伝送損失(挿入損失)が大きくなる。しかも、隣接する配線に流れる信号によるクロストークも増大する。従って、高性能なリタイマICやリピータICが求められるわけだ。
低消費電力化が強く求められる背景には、サーバーやスイッチ、ルーターなどの電子機器が数多く設置されているデータ・センタの事情がある。こうした電子機器から多くの熱が放出されると、データ・センタの内部が暑くなりすぎてしまう。このため、エアコン(クーラー)などを使って冷やさなければならない。しかし、エアコンを使えば、電気料金がかさみ、運用コストが上昇してしまう。運用コストを削減するには、一台一台の電子機器の消費電力を下げるしかほかに方法はない。このため、リタイマICやリピータICにも、低消費電力化が強く求められているわけだ。
それでは発売した10品種は、どのような性能を備えているのか。その詳細については、後編で紹介しよう。
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提供:日本テキサス・インスツルメンツ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2013年3月31日
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