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USB3.0の本格普及をにらみ、TIが相互接続性を高めたハブICを製品化【講座】回路設計の新潮流を基礎から学ぶ

» 2012年05月07日 00時00分 公開
[PR/EDN Japan]
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photo 表1 USB規格の比較

 現在、市場に極めて広く普及しているシリアル・インターフェイス規格「USB2.0」。この後継規格である「USB3.0」は2008年11月に、米インテル社や米マイクロソフト社、米テキサス・インスツルメンツ(TI)社、米ヒューレット・パッカード(HP)社、オランダのNXPセミコンダクターズ社、NECの6社からなる「SuperSpeed USB 3.0 Promoters Group」によって仕様策定された。

 仕様策定を受けて、2009年後半には早くも、外付けハードディスク装置(HDD)などの対応品が市場に投入されている。それ以降、デスクトップ・パソコンやノート・パソコンなどに採用されるなど、市場は順調に拡大してきた。

 そして、2012年にUSB3.0の本格普及を決定づける出来事が起こる。それは、インテル社のチップセットに、USB3.0規格に対応したコントローラ(制御回路)が標準搭載されることだ。チップセットの市場投入時期は、2012年後半と目されている。同社のチップセットに搭載されれば、ほとんどのパソコンがUSB3.0対応になる。USB3.0対応品の市場規模が爆発的に拡大するのは確実だ。規格策定からわずか4年。本格的に市場が立ち上がることになる。

大容量データをストレスなく転送可能に

  USB3.0の最大の特長は、データ伝送速度が5Gビット/秒(スーパースピード)と高いことにある。USB2.0は480Mビット/秒(ハイスピード)だった(表1)。従って、USB3.0では、データ伝送速度を一気に10倍に高めたことになる。

 なぜ、USB3.0では、データ伝送速度を5Gビット/秒と極めて高い値に設定したのだろうか。その背景には、パソコンやデジタル家電、携帯型電子機器で取り扱うデータ容量の肥大化がある。データ容量が大きくなれば、デジタル・ビデオ・カメラで撮影した映像データをHDDに転送したり、パソコンに記録した音楽データを携帯型メディアプレーヤに転送したりする作業などに、極めて長い時間がかかってしまう。ユーザーに多大なストレスを与えることになる。

photo 表2 ブルーレイディスクの収めた映画を70秒で転送

 こうした状況は、避けなければならない。つまり、データ伝送速度を高くする必要がある。データ伝送速度向上の目安になったのは、ある調査データだ。日本TI 営業・技術本部 マーケティング/応用技術統括部 アナログマーケティング シグナルチェーン ソリューション 主事補の浜田晃氏によると、「ユーザーに心理的なストレスを与えることなく、データ転送に費やせる時間は90秒が限界という調査結果があった。そこで、ブルーレイディスクに収められた1本の映画データ(27Gバイト)を90秒以内で転送することを目安とし、5Gビット/秒というデータ伝送速度が算出された」という。

 5Gビット/秒であれば、ブルーレイディスクに収められた1本の映画データを約70秒で転送できる。USB2.0では13.9分も必要だった。このほか、USBメモリーに収めた16Gバイトのデータ転送は約40秒、デジタル・スチル・カメラで撮影した8Gバイトの写真データのダウンロードは約20秒、パソコンに格納した32Gバイトのデータ・バックアップは約80〜90秒といずれも短時間で終わる(表2)。USB3.0は、データ容量の肥大化が進むパソコンやデジタル家電にとって今後欠かせないシリアル・インターフェイス技術と言えるだろう。

PCI Express Gen2技術を活用して高速化

 それでは、USB3.0では、どうやって5Gビット/秒という高いデータ伝送速度を実現したのだろうか。

 答えは、パソコンの内部接続などに採用されているシリアル・インターフェイス規格「PCI Express Gen2」にある。USB3.0は、この規格に使われている技術を流用するかたちで高速化を実現した。PCI Express Gen2の最大データ伝送速度は5Gビット/秒。USB3.0とまったく同じである。適用した技術は大きく二つある。一つは、低電圧振幅の差動伝送方式である。電圧振幅の具体的な値は、最小で0.8V、最大で1.2Vである。もう一つは、8B10B符号化方式である。

 USB2.0から変更されたのはデータ伝送速度だけではない。このほかの変更点も少なくない。通信モードは、USB2.0の半二重方式から全二重方式へと変更された。半二重方式では、送信と受信のどちらか一方しか実行できないが、全二重方式では送信と受信を同時に実行できる。従って、その分だけ、伝送効率を高められるわけだ。

 伝送効率を高める変更はまだある。それはUSB2.0で必要だったポーリング作業の不要にしたことである。ポーリング作業とは、ホスト機器が同じインターフェイスに接続された周辺機器すべてに対して、データ伝送の必要性を問い合わせるものだ。従って、周辺機器が多く接続されていれば、この作業のオーバヘッドが大きくなるという問題を抱えていた。

 そこでUSB3.0では、ポーリング作業がいらないユニキャスト伝送方式を採用した。この方式は、例えばホスト機器から周辺機器にデータを転送する場合、その周辺機器に割り当てられたアドレスを指定してから1対1でデータを送るというものだ。データ転送の必要性がない周辺機器とのやり取りを省けるため、伝送効率を高められる。

 このほか、特筆すべき変更点としては、USBケーブル経由で供給できる電流量を増やしたことがある。いわゆる「バスパワー」に関する変更だ。USB2.0では最大で500mAだったが、USB3.0では約2倍の900mAに引き上げた。このため、USBケーブル経由での携帯型電子機器の充電を短時間に終わらせることが可能になる。

下位互換性は確保

photo 図1 USB3.0に対応したスタンダードA型コネクタ
USB2.0に向けた四つの電極の上側奥に、USB3.0に向けた五つの電極を作り込むことで下位互換性を確保した。

 USB3.0規格とUSB2.0規格の間には、たくさんの相違点がある。しかし、この二つの規格には下位互換性が確保されている。つまり、USB3.0規格に準拠したコネクタやケーブルを使って、USB2.0規格準拠の信号(データ)を送受信することが可能である。


photo 図2 USB3.0に対応したマイクロB型コネクタ
携帯型電子機器などに搭載されているマイクロB型コネクタのUSB3.0バージョンである。USB2.0に向けた四つ電極の横に、USB3.0に向けた五つの電極を並べて作り込んだ。

 下位互換性は、コネクタやケーブルの外形形状は変更せずに、内部の構成を工夫することで確保した。例えば、パソコンなどで使われているスタンダードA型コネクタでは、USB2.0用の四つの電極(D+、D−、VBUS、GND)はそのままに、内部の上側にUSB3.0用の五つの電極(USB3_TX(+/−)、USB3_RX(+/−)、GND)を用意した(図1)。携帯型電子機器などで使われるマイクロB型コネクタでは、USB2.0用の四つの電極の横にUSB3.0用の五つの電極を並べた(図2)。 

 ケーブルも同様だ。USB2.0用の配線と、USB3.0用の配線を用意し、1本のケーブルにまとめている。従って、コネクタとケーブルともに、USB2.0にもUSB3.0にも使えるわけだ。

本格普及をにらみ、新製品を投入

 前述のように、テキサス・インスツルメンツ社は、USB3.0規格を策定したSuperSpeed USB 3.0 promoters groupのメンバーである。そのため、USB3.0市場の立ち上げをサポートすべく、すでにさまざまな対応チップを製品化している。具体的には、トランシーバIC「TUSB1310A」や、USB3.0とシリアルATAのブリッジIC「TUSB9261」、ハブ・コントローラIC「TUSB8040」、USB3.0対応ホスト・コントローラIC「TUSB7320/TUSB7340」、リドライバIC「SN65LVPE502(CP)」などを販売中だ。

photo 図3 ハブ・コントローラICの内部構成
IC内部では、USB2.0信号とUSB3.0信号を別々に扱うことで、下位互換性を保ちながら信号を分配する。なお、図は4ポート・ハブの場合である。

 このようにUSB3.0対応チップで市場をリードする同社だが、2012年後半の本格的な普及をにらみ、今回新しいUSB3.0対応ハブ・コントローラIC「TUSB8040」の新バージョンを製品化する。ハブ・コントローラICとは、ポート数を拡張するものだ。TUSB8040の新バージョンは4ポート・ハブで、一つのポートを四つのポートに拡張する(図3)。外付けのUSB3.0ハブ装置のほか、ノート・パソコンやデジタル家電、携帯型電子機器などのポート数拡張に向ける。

 同社がすでに製品化しているTUSB8040との違いは、「相互接続性を大幅に高めた点にある」(同社の浜田晃氏)。改善点は三つある。一つは、スペクトラム拡散クロック(SSC:Spread Spectrum Clock)のイネーブル/ディセーブル機能を用意したことだ。スペクトラム拡散クロックとは、EMI(放射電磁雑音)を低減する機能である。しかし、クロック信号に積極的にジッター成分を与えるため、場合によっては、相互接続性を損ねてしまう危険性がある。そこで、相互接続性を確保できない場合は、スペクトラム拡散クロックをディセーブルできるフレキシビリティを用意したわけだ。

 二つめは、低消費電力モードである「U1/U2」をディセーブルする機能を搭載したことである。この低消費電力モードは、搭載した電子機器の消費電力を削減することを目的にUSB3.0で初めて盛り込まれた仕様である。このため、電子機器への適用方法がまだ成熟していないので、「低消費電力モードが原因で、相互接続性が損なわれるケースもある」(同氏)という。そこで、このモードをディセーブルすることで相互接続性を確保する機能を用意したわけだ。

photo 図4 アイ・ダイアグラム
発売したハブ・コントローラICのアイ・ダイアグラムである。アイが大きく開いており、高速データを問題なく伝送できていることが分かる。

 三つめはパワー・スイッチの極性を変更する機能を用意したことである。

 これらの機能を利用すれば、電子機器の設計柔軟性を確保できるため、相互接続性を大幅に高められる。前世代品であるTUSB8040は、標準化団体「USB-IF (USB Implementers Forum)」において相互接続テストの基準となる「Known Good Hubs」に選定されていた。発売したICの相互接続性はそれをさらに上回る(図4)。

 なお、今回発売するハブ・コントローラICは4ポート・ハブだが、現在同社は2ポート・ハブ製品も開発中だ。



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提供:日本テキサス・インスツルメンツ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2013年3月31日

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