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TIがベア・ダイ供給可能なICを拡充、テスト・ダイとKGDの2形態で対応【講座】回路設計の新潮流を基礎から学ぶ

» 2012年07月02日 00時00分 公開
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 MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を使ったセンサー素子が活躍の場を広げている。加速度や角速度、圧力、振動、光、温度など。さまざまな物理量の測定が可能になっているからだ。

 MEMSセンサー素子のメリットは主に、それを搭載するセンサー・モジュールの小型軽量化と低消費電力化の二つにある。特に、小型軽量化の効果は絶大だ。従来は、お弁当箱大もあった外形寸法を、わずか数cm3の容積に抑えることが可能になる。それだけに、実装技術は重要だ。MEMSセンサー素子が小さくなっても、実装技術を工夫しなければ思うような小型化を実現できないからである。

 このため現在、センサー・モジュールなどを扱うメーカーからは、「MEMSセンサー素子の後段に位置するシグナル・コンディショニング素子を、ICパッケージに封止していないベア・ダイの状態で供給してほしいという声が相次いでいる」(日本テキサス・インスツルメンツ(TI) 営業・技術本部 マーケティング統括部 フォーカスドEEマーケティング 主事の佐々木幸生氏)という。

 アンプICやA-D変換器ICなどのシグナル・コンディショニング素子をベア・ダイの状態で入手できれば、プリント基板上の実装面積を大幅に削減できる。さらに、MEMSセンサー素子とシグナル・コンディショニング素子を縦に積み上げることで、一つのパッケージに複数のICを封止することも可能になる。センサー・モジュールの外形寸法を飛躍的に小型化できるようになるわけだ。

シグナル・チェーンすべてを供給へ

photo 図1 シグナル・チェーンのすべてを提供
ベア・ダイで供給できる製品は多岐にわたる。シグナル・チェーンすべてを提供可能だ。具体的には、A-D変換器ICやD-A変換器IC、マイコン、オペアンプIC、基準電圧源IC、降圧型DC-DCコンバータIC、LDOレギュレータIC、タイマーICなどである。

 ただし、これまではMEMSセンサー素子の後段に続くシグナル・チェーンすべてをベア・ダイの状態で入手することは困難だった。ベア・ダイの状態で供給可能な製品が限られる半導体メーカーが多かったからである。しかも、購入するICの個数が少ない場合は、供給自体を断られることが多かったようだ。従って、出荷数量が多い民生用電子機器であればまだしも、生産数量が少ない産業用電子機器では、シグナル・チェーンすべてをベア・ダイでそろえるというハードルは極めて高かったと言える。

 こうした状況の中で、Texas Instruments(TI)社は、ベア・ダイを汎用的に供給していくことを明らかにした。供給可能なベア・ダイの品ぞろえは極めて幅広い(図1)。A-D変換器ICやD-A変換器IC、マイコン、オペアンプIC、基準電圧源IC、降圧型DC-DCコンバータIC、LDOレギュレータIC、タイマーICなどである。現在、製品数は47品種である。こうした製品すべて、少量からの購入が可能だ。「10個程度でも購入できる。ただし少量購入だと、パッケージ封止品に比べて単価が高くなってしまう」(佐々木氏)。

 さらに、現在ベア・ダイの状態で供給していないICについても、ユーザーがリクエストを出すことが可能だ。「リクエストを受けたら約2週間をかけて検討し、供給の可否を決める」(同氏)という。

二つの形態でベア・ダイを供給

photo 図2 ベア・ダイの製造フロー

 ベア・ダイの供給形態は二つ用意した。一つは「テスト・ダイ(TD)」(表1)。もう一つは、「KGD(Known Good Die)」である。いずれの供給形態も、ICの製造や検査、出荷などの一連の流れは同じだ(図2)。つまり、まずはSiウエハーにさまざまな処理を施すことで回路を作り込む。次に、作成したSiウエハーに対して、プローブ・テストを実行する。その後、一つ一つのICに切り分け、それぞれに対して検査(Inspection)を行って、ワッフルパックと呼ぶ容器にベア・ダイの状態のICを入れて顧客に供給するという流れである。

表1 主要なTD製品
型番 概要
OPA140A-DIE 高精度、低ノイズ、レール・ツー・レール出力、11MHz JFET オペアンプ
OPA2277-DIE 高精度オペアンプ
OPA656-DIE 広帯域、ユニティ・ゲイン安定化、FET 入力オペアンプ

 テスト・ダイとKGDの違いは、プローブ・テストの工程にある。テスト・ダイでは、25℃の動作温度における直流(DC)テストのみを実行する。さらに、データシートには、ダイの寸法やパッド情報(配置や電極材料)、厚さといった情報しか記載されていない。

 一方のKGDでは、プローブ・テストにおいて全動作温度範囲にわたって、直流(DC)テストと交流(AC)テストの両方を実行する。つまり、一般的なICパッケージ封止品と同程度のテスト内容と、その結果に対する保証を実行しているわけだ。従って、データシートには、ダイの寸法やパッド情報(配置や電極材料)、厚さに加えて、直流(DC)と交流(AC)の電気特性も記載されている。

photo 図3 ベア・ダイのメリット

 テスト・ダイとKGDを比較すると、テスト項目が多い分、KGDの方が高い信頼性が得られる。このため、KGDは、民生用電子機器のほか、センサー・モジュール、産業用電子機器や航空宇宙用電子機器など、高い信頼性が求められるアプリケーションに向ける。一方、テスト・ダイは、KGDに比べれば信頼性は劣るものの、一般的な用途であれば問題なく使用することが可能だ。主なアプリケーションとしては、スマート・カードや電子玩具、グリーティング・カードなどを挙げている。

 半導体メーカーの実力を決める項目は、製品力だけではない。供給形態の多様化や、高い信頼性の確保も重要な項目である。今回、TI社が開始した「ベア・ダイの汎用的な供給」は、半導体業界における同社の地位をまた一歩高めることになるだろう(図3)。



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提供:日本テキサス・インスツルメンツ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2013年3月31日

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