MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)とは、Si(シリコン)基板やガラス基板、水晶基板などに非常に小さい(μmオーダー)機械構造物などを作り込む技術のこと。この機械構造物とともに、電子回路などを集積することでデバイスとする。「メムス」と発音する。日本では、マイクロマシンと呼ばれることもある。
MEMSデバイスの製造方法は、大きく分けると、表面(サーフェイス)マイクロマシンとバルク・マイクロマシンの二つに分けられる。前者は、Si基板などの表面に作り込んだ数μm厚の薄膜を利用して製造したもの。後者は、Si基板自体、もしくは数十μmの厚膜を利用して製造したものだ。いずれの場合も、エッチングやフォトリソグラフィ、薄膜成長といった技術を駆使して機械構造物を作り込む。
作り込むことが可能な機械構造物としては、ビーム(片持ち梁)やスプリング(ばね)、ウエイト(重り)、メンブレン(隔膜)、ダイヤフラム、ミラーなどがある。こうした機械構造物を使って、さまざまなデバイスを実現する。センサであれば、加速度センサや角速度センサ(ジャイロスコープ)、圧力センサ、流量センサ、温度センサなど。このほか、ディスプレイ、プリンタ・ヘッド、光スイッチなどを実現可能だ。
MEMS技術を使ってセンサなどのデバイスを実現するメリットとしては、小型化や低消費電力化、低コスト化などが挙げられる。例えば、外形寸法については、従来の加速度センサは、たばこ箱程度と大きかった。従って、アプリケーションは大きな制限を受けていた。一方、MEMS技術を適用すれば、数mm角で実現できる。このため、携帯電話機やスマートフォン、家庭用ゲーム機のコントローラなどへの搭載が進んでいる。
それでは、MEMSデバイスの原理を紹介しよう。まずは加速度センサである。このセンサは、検出方法の違いで複数のタイプがある。ここでは、ピエゾ抵抗型を紹介しよう。ピエゾ抵抗型では、円形状のダイヤフラムを使う。これは円形状の膜であり、円周部で支えられ、浮いている。膜の中央部には重りが吊されている。これに加速度がかかると、重りが移動し、膜が変形する。この変位量をピエゾ抵抗で検出することで、加速度を求める仕組みである。
MEMS技術を利用したディスプレイの代表例は、DMD(digital mirror device)がある。現在、米テキサス・インスツルメンツ(TI)社が製品化しており、プロジェクターなどに広く採用されている。DMDでは、画素に相当するミラーが、Si基板上に画素分だけ作り込まれている。一つ一つのミラーは四角形状であり、対角部の真下には電極があり、そこに信号を与えるとミラーが傾き、光の反射角を制御できる。すべてのミラーに対してこの制御を実行することで、スクリーンに画像を表示する仕組みである。
このほか、TI社は、MEMS技術で製造した赤外線(IR)温度センサIC「TMP006」も製品化している(図1)。赤外線を吸収することで出力電圧が変化するサーモパイル(熱電堆)をMEMS技術で作成した。このほか、チップ上にシグナル・コンディショニング回路や16ビットA-D変換器、ローカル温度センサなども集積している(図2)。サーモパイルを使った温度測定範囲は−40〜+125℃。センサ出力電圧は7μV/℃である。パッケージは、実装面積が1.6mm×1.6mmと小さい8ピンWCSPである。
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提供:日本テキサス・インスツルメンツ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2013年3月31日
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