中間周波数とは、RF信号の周波数とベースバンド信号の周波数の間に設定した周波数のこと。無線通信の送信機や受信機などで、RF信号をベースバンド信号に変換する過程で利用されている。英語表記はIntermediate Frequency。この頭文字を取ってIF(アイエフ)と呼ばれることが多い。
一般に、中間周波数は、スーパー・ヘテロダイン(Super Heterodyne)と呼ばれる方式を採用する無線通信機で多く利用されている。例えば、受信回路(レシーバ)では、受信したRF信号を、それより低い周波数の中間周波数に局部発振器(LO:Local Oscillator)やミキサを使ってIF信号に変換する(図1)。中間周波数は、一つの場合もあれば、二つの場合もある。
スーパー・ヘテロダイン方式を採用する電子機器としては、AM/FMラジオやテレビ、MCA無線機などが挙げられる。かつては、携帯電話機やPHSでも、この方式が主流だった。中間周波数は用途によって規定されており、地上デジタル・テレビは57MHz、地上波アナログ・テレビは57MHz、FMラジオは10.7MHz、AMラジオは455kHz、800MHz帯を利用するMCA無線機では55.025MHzを採用している。
従来、無線通信機器では、中間周波数を利用するスーパー・ヘテロダイン方式が主流だったが、10年ほど前から、その存在感が徐々に薄れつつある。中間周波数を使わない「ダイレクト・コンバージョン方式(Zero-IF)」方式が登場したからだ。
ダイレクト・コンバージョン方式の考え方自体は古い。1910年代にはすでに、同様の方式が考案されていた。しかし、当時の技術レベルでは高い性能を引き出すことができなかった。直流オフセット電圧や2次高調波歪み、I/Q不整合などの問題があったためだ。一方、スーパー・ヘテロダイン方式は、感度や選択度などの点で大幅に優れていたため、普及が進んだわけだ。
しかし、半導体技術の進歩とともに、ダイレクト・コンバージョン方式が抱えていた問題を解決できるようになった。問題を解決できれば、この方式が持つメリットを享受できる。具体的には、イメージ(影像)除去フィルタやIF用バンドパス・フィルタといった電子部品が不要になることである。これらの電子部品は、外形寸法が大きく、コストも比較的高い。従って、ダイレクト・コンバージョン方式を使えば、プリント基板の実装面積を削減できる上に、コストも減らせる。このため、1980年代にページャ(ポケット・ベル)に、2000年代に入って、携帯電話機やPHSに採用されるようになった。
ダイレクト・コンバージョン方式が普及した理由の一つに、高速でかつ、消費電力が低いADコンバータICが手軽に入手できるようになった点が挙げられる。高周波のRF信号をデジタル化するには、サンプリング速度が高いADコンバータICが不可欠だからだ。
テキサス・インスツルメンツ(TI)社では、ダイレクト・コンバージョン方式を採用した無線受信機/送信機に向けたADコンバータICを数多く製品化している。例えば、分解能が14ビットで、サンプリング速度が250Mサンプル/秒の2チャネルADコンバータIC「ADS4249」である。特長は、消費電力が極めて低いことだ。電源電圧が+1.8Vで、サンプリング速度が250Mサンプル/秒のときの消費電力は、チップ全体で560mWと低い。ADコンバータのアーキテクチャはパイプライン方式である。
テキサス・インスツルメンツのADコンバータ製品ラインナップ
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提供:日本テキサス・インスツルメンツ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2013年3月31日
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