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ホットスワップ/絶縁型モジュールの追加でさらに強化されたオンライン設計支援ツール WEBENCH® System Power Architect【講座】回路設計の新潮流を基礎から学ぶ

» 2012年09月01日 00時00分 公開
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photo 図1 日本TIのウェブサイト
トップページにあるWEBENCH® Designerの入り口。一般電源を設計する「電源」タブ、FPGA/マイクロプロセッサ電源を設計する「FPGA/μP」タブ、センサ関連の設計を行う「センサ」タブ、LEDドライバを設計する「LED」タブがある。

 米テキサス・インスツルメンツ(TI)社では、WEBブラウザで利用可能なオンライン設計支援ツール「WEBENCH® Designer」を無償で提供している。このWEBENCH Designerは、電源/LEDドライバ/センサなどのデバイス選択、回路設計、最適化、シミュレーション、サンプル購入をトータルに支援するツールだ。中でも、電源設計ツールは10年以上の歴史をもち、多くのユーザーから支持を集めてきた。日本TIのWEBサイトのトップページに入り口があるので、見覚えのある方も多いだろう(図1)。


複数負荷の電源を最適に設計する

photo 図2 24Vの入力電圧から3.3Vと1.8Vの出力電圧を得る例
DC-DCコンバータは、入出力電圧差が大きいほど負担が大きく、また出力電流が大きいほど負担が大きい。電源ICの個数を減らそうとすると、かえって個々の電源ICの効率が低下したり、回路のサイズが大きくなったりする。たった二つの負荷でも電源構成には多くの候補があり、どれが最適であるかは出力電流などの条件で大きく変わってくるのだ。

 WEBENCH Designerは、複数の強力なツールがシームレスに統合されたトータルな設計支援ツールだ。その中で、複数負荷に対する電源の構成設計を行うWEBENCH Power Architectは、最も注目されるツールの一つだ。

 最近ではCPUコア、FPGAコア、I/O、DDR、USBなど電圧の異なる複数の電源を必要とするシステムが多い。簡単に考えると、一つの入力電圧から、個別のDC-DCコンバータでそれぞれの電源を生成すれば良いように見える。だが、DC-DCコンバータで高い電圧を一気に低い電圧に降圧すると、損失の増大やサイズの大型化を招きがちだ。いったん中間電圧に落として何段階かに分けて降圧したり、降圧して得られた出力電圧から次の出力電圧を作ったりした方が良い場合もある。複数負荷の電源にはさまざまな構成方法があり、その中から最適なものを探し出すのは容易ではない(図2)。

 WEBENCH Power Architectを用いれば、個別の電源回路を設計する前に、まず構成方法の候補をいろいろ比較して、最適なものを探し出すことができる。その後はシームレスに個別の回路設計に移行でき、そこからまた構成設計に戻ることもできる。

ホットスワップ/絶縁型モジュールの追加でさらに強化

 この強力なツールに、サーバ/通信機器の電源設計に不可欠な二つの新機能を加えて、一段と強化されたのがWEBENCH System Power Architectだ。

 新機能の一つは、システム稼働中のボード交換を可能にするホットスワップ・コントローラだ。TIでは、さまざまなバックプレーンやメザニンカードに対応して、ホットスワップ製品を豊富にラインナップしている。WEBENCH System Power Architectでは、最適なコントローラを選択して電源システムを構成できる。

 もう一つは、ボードに絶縁された電源を供給するための絶縁型DC-DCコンバータ・モジュールだ。サーバ/通信機器では、ボード間の電気的干渉を防ぐために各ボードをバックプレーンから絶縁することが多く、1/2ブリック、1/4ブリック、1/8ブリックなど規格サイズの絶縁型モジュールが使われている。WEBENCH System Power Architectでは、TIの絶縁型モジュール製品や電源デバイスを使用した商用の絶縁型モジュールを選択して電源システムを構成できる。

 もちろん、WEBENCH Power Architectの機能はすべて受け継いでおり、ホットスワップや絶縁型モジュールを使用しない電源システムは従来と同じように設計できる。

WEBENCH® System Power Architectを使ってみよう

photo 図3 「負荷を追加」画面
最初に、電源ソースと電源負荷の使用を設定する。ここでは、電源ソースとして、DC_IN:48V±4Vを設定し、ホットスワップと絶縁型モジュールを使用するにチェックを入れた。負荷として、CORE:1.2V/3A、IO:3.3V/1A、DDR3:1.5V/2Aの三つを設定した。

 それでは、実際にWEBENCH System Power Architectを使いながら、二つの新機能を確認していこう。

 日本TIのトップページにあるWEBENCH Designerの入り口で「電源」タブを選び、「負荷が複数時」とコメントが付いている「Power Architect」ボタンを押すとツールがスタートする。

 最初に表示されるのは「負荷を追加」画面だ。ここで、電源ソースの設定と、その電源ソースから取り出す電源負荷の設定を行う(図3)。

 電源ソースは複数設定できる。ここでは48V(±4V)の電源ソースを一つ、DC_INという名称で設定した。この電源ソースがホットスワップを使用する場合は「Hot Swap Supply」チェックボックス、絶縁型モジュールを使用する場合は「Isolation Supply」チェックボックスに、それぞれチェックを入れれば良い。

 DC_INの負荷として、ここでは1.2V/3AのCORE、3.3V/1AのI/O、1.5V/2AのDDR3という三つを設定した。それぞれの負荷に対して許容リップル電圧、リップルフィルタ追加、ソフトスタート、電源シーケンス、LDO指定などの設定を個別に行うことができる。

photo 図4 「最適化」画面
設定した電源ソース、電源負荷の使用に適応する電源構成の候補が、中央のウィンドウに一覧表として表示される。右側のウィンドウには、一覧表から選択した候補の構成図が表示される。左側のウィンドウには、各候補のサイズ、効率、コストをグラフィカルに比較するバブルチャートが表示されている。

 「プロジェクト要件を送る」ボタンを押すと「最適化」画面に進む(図4)。この「最適化」画面では、複数の構成候補をグラフィカルに比較できるとともに、効率重視、コスト重視、サイズ(専有面積)重視などの調整ができる。

 図4で右側のウィンドウに表示されているのが、第1の構成候補だ。電源ソースにホットスワップ、絶縁型モジュールの順に接続され、絶縁型モジュールの12V出力に3.3V電源と1.5V電源が接続されている。さらに、1.2V電源は3.3V出力に接続されている。

 このホットスワップと絶縁型モジュールが、今回追加された新機能だ。図4では、仕様に適合するホットスワップ・コントローラとしてLM5069-2(TI)、絶縁型DC-DCコンバータ・モジュールとしてPTMA401120-12(TI)が選択されている。

 従来のWEBENCH Power Architectでは、この先の電源構成の設計はできるが、ホットスワップ・コントローラや絶縁型DC-DCコンバータ・モジュールの部分は別途手作業の設計が必要だった。このWEBENCH System Power Architectでは、サーバ/通信機器のバックプレーンからオンボード電源まで、トータルに一括して設計することが可能になった。

構成設計から個々の回路設計へ

photo 図5 「見る/編集」画面
図4で選択した構成候補の詳細が表示される。構成候補の構成要素ごとに回路図と代替デバイスが表示され、デバイスを取り替えることができる。さらに、トータルの損失、コスト、サイズに各構成要素がどの程度寄与しているかを示すパイチャートも表示されている。

 WEBENCH System Power Architectを用いて、電源設計をさらに進めていこう。

 左側のウィンドウは、4種類の構成候補の特長をグラフィカルに比較するバブルチャートになっている。このバブルチャートは縦軸が電源のサイズを示し、下に行くほど小型になる。横軸が電源の効率を示し、右に行くほど高効率になる。バブル直径が部品コストを示し、直径が小さいほど低コストになる。現在右側のウィンドウに表示されている第1の構成候補(黄色のバブル)は、小型、高効率で、コストも低いことが分かる。

 「最適化」画面に示された構成候補から一つを選択して、「設計の詳細を見る」ボタンを押すと、その構成候補の各構成要素について詳細なデータが表示されるとともに、代替デバイスの選択が可能になる(図5)。

photo 図6 「設計のサマリ」画面
選択した構成候補について、構成要素ごとに具体的な回路設計を行う。この設計機能は、単一負荷の電源を設計するWEBENCH® Power Designerと同じだ。必要なパラメータや動作値をツールが自動的に計算して、膨大な部品データベースから最適な部品を自動選択してくれる。手動で部品を選択したり、データベースにない部品を自分で設定したりすることも可能だ。

 さらに、「プロジェクトの作成」ボタンを押して具体的な電源回路設計に進むと(図6)、回路図、部品表(BOM)、動作値表、特性グラフなどを参照しながら、ホットスワップや絶縁型モジュールを含む個々の電源回路の設計、定数の変更や部品の置き換え、回路の最適化、シミュレーションによる動作検証を行うことができる。

 これらの設計結果はTIのサーバに保存され、必要に応じて呼び出して参照・編集できる。PDF形式でダウンロード、印刷できるだけでなく、同僚の設計者と共有することも可能だ。

 最初に「Power Architect」ボタンを押してから、早ければわずか数分で、サーバ/通信機器にも対応可能な高度な電源システムの構成から具体的な回路まで設計を完了できる。これが、WEBENCH System Power Architectの最大の特長と言えるだろう。

WEBENCHはテキサス・インスツルメンツの商標です。


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提供:日本テキサス・インスツルメンツ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2013年3月31日

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