ハプティクス(Haptics)とは、触感フィードバックのこと。タッチパネルを搭載した携帯型電子機器や車載用電子機器などで採用されている技術である。
一般にタッチパネルは、画面に表示されたボタンを押しても、「押した」という感覚が得られない。このため、実際に「押したのか、押していないのか分からない」という問題が起きやすい。ハプティックスを使えば、こうした問題を解決することが可能だ。例えば、指でタッチパネルを押したとき、その場所を検出し、それに応じてタッチパネルを振動させることで「押した」という疑似体験をユーザーに与えられる。しかも、振動の与え方によって、ボタンを押した感覚以外にも、ギターの弦を弾いた感覚など、さまざまな感覚をユーザーに提供することが可能だ。
タッチパネルに振動を与える方法は、大きく三つある(図1)。一つは、偏心モーター(ERM:Eccentric Rotating Mass)。形状に偏りがある重りをモーターの軸に取り付け、それを回転させることで振動を作り出す。二つめはリニア・バイブレータ(LRA:Linear Resonant Actuator)。コイルに電流を流すことで電磁力を発生させ、これと磁石との反発力を使ってコイル自体を上下に振動させるものだ。三つめは、ピエゾ(圧電)素子である。電界を印加すると機械的に伸び縮みするピエゾ素子を使って振動を発生させる。
これらの三つの方法はそれぞれにメリットとデメリットがある。偏心モーターとリニア・バイブレータのメリットは、コストが低いことにある。このため、比較的手軽に携帯型電子機器に搭載できる。一方、ピエゾ素子は比較的高価で、偏心モーターのコストに比べると約2倍と高い。
しかし、偏心モーターとリニア・バイブレータは、応答速度が遅いという問題を抱えている。具体的な応答時間は、偏心モーターが40m〜80ms、リニア・バイブレータが20m〜30msである。これだけ応答速度が遅いと、指がタッチパネルに触れた直後に、タッチパネルを振動させることができない。かなりの遅れが生じてしまう。ましてや、指の複雑なタッチに追随させて、きめ細かな振動を発生させることは不可能だ。従って、ユーザーに使用上の違和感を与えてしまう危険性がある。
一方、ピエゾ素子の応答時間は1msと極めて短い。従って、指がタッチパネルに触れた直後に振動を与えることが可能な上に、指の複雑なタッチに振動を追随させることもできる。あたかも、ボタンを押したかのような反応を実現できるわけだ。
米テキサス・インスツルメンツ(TI)社は、偏心モーターとリニア・バイブレータ、ピエゾ素子という三つの実現手段に対応したドライバICを製品化している。これらのドライバICは、大きく二つに分けられる。偏心モーターとリニア・バイブレータの両方に対応した製品と、ピエゾ素子に対応した製品である。
偏心モーターとリニア・バイブレータの両方に対応したドライバICの代表例は「DRV2603」である。自動ブレーキング機能と自動レゾナンス(共振)検出機能を備えていることが特長だ。
ピエゾ素子に対応したドライバICは、「DRV8662」である。一般に、ピエゾ素子を駆動するには、40Vpp〜200Vppの電圧を印加しなければならない。このICには、昇圧回路が搭載されており、ピエゾ素子を直接駆動できる。従来とは異なり、フライバック・コンバータ回路を組む必要はない。つまり、外付けのパワーMOSFETやトランスは不要だ。このため駆動回路全体の実装面積は52.2mm2(9mm×5.8mm)で済む。従来は120mm2(10mm×12mm)が必要だった。
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提供:日本テキサス・インスツルメンツ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2013年3月31日
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