負荷過渡応答とは、スイッチング・レギュレータやリニア・レギュレータなどにおいて、負荷電流が急激に増加、もしくは減少した際に、出力電圧がどの程度の時間で定常状態に戻るかを表した特性のこと。出力電圧が定常状態に戻るまでの時間が短ければ短いほど、負荷過渡応答特性に優れているといえる。
現在、負荷過渡応答特性の重要度はかつてないほど高まっている。スイッチング・レギュレータやリニア・レギュレータの負荷となるFPGAやマイクロプロセッサ(MPU)、ASIC、DSP、マイコンといったデジタルLSIでは、低消費電力化が強く求められているからだ。そのためには、フル稼働モードの期間を極力短くし、待機モードなどの期間を可能な限り長くする必要がある。そこで最近のデジタルLSIの多くは、フル稼働モードと待機モードの間を頻繁に行き来している。つまり、消費電流(負荷電流)が急激に増えたり、急激に減ったりする機会がたくさんあるわけだ。
ここで問題になるのが、出力電圧の低下である。一般に、スイッチング・レギュレータやリニア・レギュレータは、負荷電流が増加すれば出力電圧が一時的に低くなり、負荷電流が減少すれば出力電圧が一時的に高くなる。この出力電圧の上昇と下降が、デジタルLSIの電源電圧範囲を外れると大きな問題に至る。デジタルLSIがリセットされたり、ラッチオフしたりするなどの問題が発生するのだ。
通常は、スイッチング・レギュレータやリニア・レギュレータと、デジタルLSIの間に複数個の出力コンデンサを挿入することで対策を施す。しかし、出力コンデンサを挿入するとコストがかかる上に、実装面積が大きくなる。もちろん、出力コンデンサの容量が足りなければ、デジタルLSIのリセットやラッチオフといった問題が発生する。従って、デジタルLSIに電力を供給するスイッチング・レギュレータやリニア・レギュレータには、負荷過渡応答特性に優れた品種を採用するのが一般的だ。
アナログ半導体メーカーは、最先端のデジタルLSIに向けて、負荷過渡応答特性を高めた電源ICの品ぞろえを拡充している。例えば、スイッチング・レギュレータでは、電流モード制御方式やヒステリシス制御方式を採用することで負荷過渡応答特性を向上させた製品を投入中だ。
リニア・レギュレータ(LDOレギュレータ)でも、負荷過渡応答特性に優れた製品が登場している。具体的には、テキサス・インスツルメンツ(TI)社のLDOレギュレータ「TPS7A7300」である。TPS7A7300では過渡応答特性の向上に伴い小容量キャパシタで高い応答性を実現できるようになり、低ESRのセラミック・コンデンサを使用可能になっており、ESRによる電圧低下の低減も含めた高速負荷応答を実現した。出力コンデンサの容量は10μFで済むのである。
テキサス・インスツルメンツの電源IC製品ラインナップ
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提供:日本テキサス・インスツルメンツ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2013年3月31日
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