入力オフセット電圧とは、入力がゼロの時に出力に生じてしまう電圧を入力換算したもの。オペアンプの精度を左右する極めて重要な特性である。
この値は、誤差の要因となるため非常に小さいことが求められる。なぜならば、信号増幅とともにこの値も増幅されて、出力されてしまうからだ。仮に、入力オフセット電圧(VOS)が大きいと、出力信号の中点に当たるグラウンド・レベルが大きく変動する。その結果、増幅した信号の精度が大きく低下してしまうわけだ。
入力オフセット電圧は、理想的にはゼロであることが望ましい。しかし実際には、オペアンプを構成するトランジスタの特性バラツキなどによって、どうしても発生してしまう。もちろん、半導体メーカーは、入力オフセット電圧を限りなく小さく抑えるべく対策を打っているが、決してゼロにはならない。
どの程度の値であれば、問題ないと言えるのだろうか。入力アナログ信号の電圧振幅がmVオーダーであれば、入力オフセット電圧はμVオーダー以下であることが求められるのが一般的だ。入力オフセット電圧が非常に小さいオペアンプを一般にゼロ・ドリフト・アンプと呼ぶ。
このほか、入力オフセット電圧については、その温度ドリフトにも注意を払う必要がある。温度ドリフトとは、温度上昇や温度低下によって、入力オフセット電圧が変動する大きさを示した特性である。単位は「μV/℃」や「nV/℃」で、1℃変化した際に入力オフセット電圧がどの程度増えるかを示す。この温度ドリフトについても、小さければ小さいほど精度が高いオペアンプと言える。
それでは現在市場では、入力オフセット電圧がどの程度小さいオペアンプが入手できるのだろうか。テキサス・インスツルメンツ(TI)の製品を例に見ていこう。
「LMP2021」の入力オフセット電圧は0.4μV(標準値)で、その温度ドリフトは0.004μV/℃(標準値)といずれも非常に低い。いわゆるゼロ・ドリフト・アンプである。計装機器やセンサー機器などのアナログ・フロントエンドに向ける。入力換算雑音電圧密度は11nV/√Hzで、利得帯域幅積は5MHz、オープン・ループ利得は160dB、スルー・レートは2.6Vμ/μs。電源電圧は+2.2〜5.5Vで、消費電流は1.1mAである。
このオペアンプには、特長がもう一つある。外来の放射電磁雑音(EMI)の影響を除去するローパス・フィルタを集積したことである。EMI除去比(EMIRR)という特性も規定されており、1.8GHzにおいて72dBという除去効果が得られる。
「OPA333」も、入力オフセット電圧が低いオペアンプである。入力オフセット電圧は2μV(標準値)で、その温度ドリフトは0.02μV/℃(標準値)と低い。ゼロ・ドリフトである。温度計測や電子秤、医療用計装機器、携帯型テスト機器などに向ける。電源電圧は+1.8〜5.5Vで、消費電流は17μA(標準値)と小さい。このオペアンプにも、EMI除去に向けたローパス・フィルタが集積されている。
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提供:日本テキサス・インスツルメンツ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2014年3月31日
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