マイコンのさまざまな構成要素はLSIなどの電子部品になっています。現実のマイコン回路は、それらの電子部品を組み合わせてプリント基板(ボード)上に実装することで実現できます。今回は、LSIやボードという視点からマイコン・システムを説明します。
CPU、メモリ、I/OなどのLSIを組み合わせて、プリント基板上に回路を構成したマイコン・システムを、ボード・マイコンと呼びます。LSIの他に、クロックを生成するための水晶振動子、個別の入出力回路/表示器/操作スイッチ、補助的なIC、回路動作を安定させるための多数のバイパス・コンデンサ、他のボードや装置と接続するためのコネクタなどがボード上に実装されます。
CPU、メモリ、I/Oを1個のLSIに集積したシングルチップ・マイコンを用いれば、その他には若干の部品を搭載するだけで、コンパクトにシステムを構成できます(図1)。
シングルチップ・マイコンだけでは機能や性能が不足する場合は、CPU、メモリ、I/Oを個別のLSIとして組み合わせてシステムを構成します。これには、シングルチップ・マイコンを用いて、外部CPUバスに若干のメモリやI/Oを追加する程度の場合もあります。一方、パソコンのように単独の高性能CPUを使用し、多数のメモリとI/Oを組み合わせてシステムを構成する場合もあります。
システムが比較的小規模な場合には、シングルチップ・マイコンの場合と同様に、1枚のボード上にマイコン・システムを搭載することもできます(図2)。
大規模なシステムでは、規格化された複数のボードを組み合わせてシステムを構成する場合もあります。特に産業用マイコン・システムの場合、1回の生産量は少なく、長期にわたって安定に装置を作り続けていく必要が多いため、規格化されたボード製品を利用してシステムを構成する方が良い場合が多くなります(図3)。
産業用のボード・マイコンの規格としては、CompactPCI、PICMG、PC/104、COM Expressなどさまざまなものが知られています。
一方、民生用マイコン・システムの場合、一つの装置を短期間に大量に生産することが多く、新製品を開発するごとに独自設計のボードを新規に作る方が効率が良くなります。ボードのサイズや形状も装置自体のデザインに合わせてさまざまに異なり、不規則な形のボードや、曲げることが可能なフレキシブル基板を使用することも多くなっています。
民生用マイコン・システムの場合、機器のデザインに合わせて、限られたスペースにボードを搭載することが必要です。また、マイコンに対するコストの要求が厳しい場合が多いので、CPU、メモリ、I/Oの機能をなるべく1個のLSIに集積したシングルチップ・マイコンが主に用いられます。
最近では、既存のシングルチップ・マイコン製品を用いる代わりに、必要なCPUコア、メモリコア、I/Oコアなどの機能を自由に組み合わせて、カスタムメイドのLSIを製造することも容易にできます。これを、SoC(システム・オン・チップ)と呼んでいます。半導体メーカーでも、特定用途専用のSoCを設計し、製造販売している場合もあります(表1)。
シリーズ名 | 主要構成 | 特長、用途 |
---|---|---|
CC430F51xx | 低電力RF通信+MSP430 | 1GHzまでの無線通信、センサネットワーク/遠隔監視など |
CC430F61xx | 低電力RF通信+MSP430 | 1GHzまでの無線通信、センサネットワーク/遠隔監視など |
CC253x | 低電力RF通信+8051 | ZigBee対応、センサネットワーク/遠隔監視/RFリモコンなど |
CC2540/41 | 低電力RF通信+8051 | Bluetooth Low Energy対応、センサネットワーク/遠隔監視など |
CC2543/44/45 | 低電力RF通信+8051 | 2.4GHzの無線通信、ワイヤレスキーボード/マウスなど |
OMAP3525/30 | 画像用DSP+CortexA8 | OMAPシリーズ、携帯情報機器(アプリケーション・プロセッサ) |
DM81x | 画像用DSP+CortexA8 | DaVinciシリーズ、各種画像機器(通信/計測/分析など) |
DM37x | 画像用DSP+CortexA8 | DaVinciシリーズ、画像通信機器など |
DM64x | 画像用DSP+ARM9 | DaVinciシリーズ、画像通信機器、IPカメラなど |
※MSP430はTexas Instruments Incorporatedの商標です。その他すべての商標および登録商標はそれぞれの所有者に帰属します。
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アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2014年3月31日
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