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DNL(微分非直線性誤差)とINL(積分非直線性誤差)これだけは知っておきたいアナログ用語

» 2013年09月09日 00時00分 公開
[PR/EDN Japan]
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DNL(微分非直線性誤差)とINL(積分非直線性誤差)

 DNLとINLは、ADコンバータ、もしくはDAコンバータの精度や誤差に関する指標のこと。DNLは「differential non-linearity」、INLは「integral non-linearity」の頭文字を取った言葉で、日本語ではそれぞれ微分非直線性誤差、積分非直線性誤差と訳される。ADコンバータやDAコンバータには、さまざまな誤差の要因がある。その中で、利得誤差やオフセット誤差は、回路的な調整によって実質的にゼロにすることが可能だ。しかし、DNLとINLといった非線形性誤差は、AD/DA変換の処理後に補正することはできず、最後まで残ってしまう。従って、AD/DAコンバータの性能を決める極めて重要な特性だと言える。

 ここで、ADコンバータにおけるDNLとINLの詳細を解説する前に、最小有効ビット(LSB: least significant bit)という基本概念をおさらいしておく。これは、ADコンバータにおける量子化単位であり、検出可能な最小の電圧値を示すものだ。1LSBは、基準電圧値(Vref)を2n(nはADコンバータの分解能)で割ることで求められる。

1LSBが目安

 DNLは、ADコンバータのアナログ入力信号とデジタル出力信号(コード)の関係から求められる実際のステップが、理想のステップからどの程度離れているかを示す特性である(図1)。実際のステップが理想のステップから1LSBずれてしまうと、つまりDNL=−1LSBとなると二つの大きな問題が発生する。一つは、アナログ入力信号に対応するデジタル出力信号が出力されないミッシング・コードという現象が発生することだ。もう一つは、アナログ入力信号を増やしたときにデジタル出力信号(コード)が単純に増加する単調性が失われてしまうことである。これらの現象が発生すると、精度が大きく劣化することになる。

図1 微分非直線性誤差(DNL) 図1 微分非直線性誤差(DNL)

 一方のINLは、ADコンバータのアナログ入力信号とデジタル出力信号の関係全体において、理想的な直線に対する実際の入出力特性のずれを示したものである(図2)。ADコンバータのデジタル出力信号の理想直線性から、実際に出力された信号の直線性はある程度ずれてしまう。このずれの最大値をとったものがINLである。

図2 積分非直線性誤差(INL) 図2 積分非直線性誤差(INL)

 従って、ADコンバータを選択する場合は、DNLとINLともに1LSB以下の製品を選ぶべきである。さらに、ミッシング・コードが発生しないこと(ノー・ミッシング・コード)を保証する製品も投入されている。こうしたADコンバータを選べば、高い精度が得られることになる。

 こうした高精度なADコンバータの具体例としては、テキサス・インスツルメンツ(TI)の「ADS1246」や「ADS8327」がある。ADS1246は、ΔΣ(デルタ・シグマ)方式を採用した24ビット分解能のADコンバータで、最大サンプリング速度は2kサンプル/秒が得られる。DNLは最大で±1LSB、INLは最大で±0.00002%といずれも非常に小さい。ノー・ミッシング・コードを保証している。RTD(測温抵抗体)や熱電対、サーミスタを使った温度測定や圧力測定などに向ける。

 ADS8327は、逐次比較(SAR)方式を採用した16分解能のADコンバータである。最大サンプリング速度は500kサンプル/秒。DNLは標準値が±0.6LSB、最大値が±1LSB、INLは標準値が±1.2LSB、最大値が±2LSBとなっており、比較的高い直流(DC)精度が得られる。アプリケーションは、通信機器や医療機器、産業プロセス機器、データ収集装置など。



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提供:日本テキサス・インスツルメンツ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2014年3月31日

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