これから何回かに分けて、実際のマイコンのハードウェア、ソフトウェアの開発方法を体験しながら学んでいきましょう。マイコンとしては、小型、超低消費電力、低コストで定評のあるテキサス・インスツルメンツ(TI)のMSP430™ファミリを使用してみます。
TIでは、手軽に使えるMSP430ファミリの開発キットとして、MSP430 LaunchPadバリュー・ライン開発キットを発売しています(図1)。
このMSP430 LaunchPadは、小型で低価格(TI直販価格で9.99ドル)ですが、本格的なエミュレーション/デバッグ/フラッシュ・メモリ書き込みの機能と、20ピンDIPソケットを備えたUSB接続のエミュレータ・ボードです。
DIPソケットには開発対象のMSP430マイコンを差し替えて使うことができます。MSP430ファミリの中でも特に低コストが特長のバリュー・ライン製品(MSP430G2xx)のうち、20ピンDIPと14ピンDIPの製品に対応しています。
キットには2種類のMSP430マイコン、自作の拡張ボードを接続するためのコネクタ、32kHz水晶振動子、ミニUSBケーブルも付属しており、ソフトウェアは無償でダウンロードできるので、これだけあればすぐに開発をスタートできます(表1)。
内容 | 数量 | |
---|---|---|
LaunchPad開発ボード(MSP-EXP430G2):USB接続エミュレータ・ボード | 1 | |
MSP430G2553IN20:フラッシュ・メモリ16KB、RAM512B、デモ・プログラム内蔵 | 1 | |
MSP430G2452IN20:フラッシュ・メモリ8KB、RAM256B | 1 | |
基板用10ピン・コネクタ | 2 | |
32kHz水晶振動子 | 1 | |
ミニUSBケーブル | 1 | |
LaunchPadステッカー | 2 | |
クイックスタートガイド | 1 | |
さらに、静電容量式タッチパッドなどのアプリケーション機能を搭載し、LaunchPadに直接接続可能な各種のブースターパック製品も別途発売されています。
MSP430 LaunchPad開発キットは、TIの直販サイト(TI eStore)で直接購入することができます(図2)。また、販売特約店(チップワンストップ、Digi-Key、MOUSER)から購入することもできます(図3)。いずれも、TIのMSP430 LaunchPadバリュー・ライン開発キットのページからオンラインで発注し、宅配便で配送されます。また、共立電子産業など国内の販売店でも取り扱っているところがあります。
なお、販売価格や配送料は販売店によって異なります。製品価格より配送料の方が高いような場合もあるので注意が必要です。
開発キットを発注したら、必要なソフトウェアをダウンロードして開発環境を整えます。
個別のソフトウェアとしては、ソース・プログラムを書くためのエディタ、ソース・プログラムを実行プログラムに変換するためのコンパイラ(およびアセンブラ)、実行プログラムを開発対象のマイコン(フラッシュ・メモリ)に書き込むためのプログラマ、書き込んだ実行プログラムをテスト実行してデバッグ作業を行うためのデバッガなどがあります。そして、これらを1つのツールのように自由自在に実行するための、統合開発環境(IDE)ソフトウェアが用意されています。
MSP430用の統合開発環境としては、TIが提供しているCCS(Code Composer Studio)と、IAR社が提供しているEmbedded Workbenchが代表的です。いずれも、MSP430 LaunchPad用に無償版を用意しています。その他に、MSPGCCコンパイラ、Energia(Arduino命令実行環境)などのオープンソース環境も利用できます。
ここでは、CCSをダウンロードしてインストールしてみます。
まず、TIのCode Composer Studio統合開発環境のページ(図4)から、最新版(ここではVer.5.4)をダウンロードします。なお、MSP430 LaunchPadはCCSのVer.4以上であればサポートしているので、最新版でなくても構いません。
CCSには有料の製品版と無償版があり、無償版には16Kバイトのコードサイズ制限版と180日の期間制限版があります。ここでは、コードサイズ制限版を選びます(MSP430 LaunchPadがサポートするMSP430製品はROM容量が最大16Kバイトなので十分です)。
さらに、自分のパソコン環境に合わせてWindows版とLinux版を選択します(図5)。
無償ソフトウェアのダウンロードには、メールアドレスやユーザ情報を登録してmy.TIアカウントを取得する必要があります。また、米国のソフトウェア輸出の規制で、使用目的などの入力を行うと、インストーラ(ccs_setup_5.4.0.00091.exe)をダウンロードできます。このインストーラを実行すれば、CCSがインストールされます。
なお、CCSはMSP430の他にも、C2000™、Tiva™などのTIのマイコン、DSPに対応していますので、インストール時に開発対象のファミリを選択可能です(図6)。もちろん、全部選択しておいても構いません。
また、CCSはJavaなどの開発環境として普及しているEclipseベースのIDEです。すでにEclipse環境がインストールされている場合は、それにMSP430を追加する形でインストールすることもできます。
MSP430 LaunchPadバリュー・ライン開発キットが届いたら、箱を開けてみましょう。
LaunchPad開発ボードには、付属の2個のマイコンのうち、MSP430G2553が取り付けられており、すぐに使用できます(32kHz水晶振動子はオプションなので、使用しなくて構いません)。このMSP430G2553にはデモ・プログラムが書き込まれています。
統合開発環境(CCSまたはEmbedded Workbench)をインストール済みのパソコンのUSBポートに、付属のミニUSBケーブルでLaunchPad開発ボードを接続すれば、ボードはUSBデバイスとして自動認識されて使用可能になります。また、USBからボードに電源が供給されて、書き込み済みのデモ・プログラムが実行されます。
デモ・プログラムは、電源投入と同時にボード上の赤色と緑色のLEDを交互に点滅させます。また、ボード上の押しボタンスイッチを押すと温度計測モードになり、内蔵温度センサで計測した温度の変化にしたがって、緑色のLEDの明るさを変化させます。
※MSP430、C2000、C5000およびC6000はTexas Instruments Incorporatedの商標です。その他すべての商標および登録商標はそれぞれの所有者に帰属します。
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宮崎 仁のマイコン基礎の基礎 第13回「無償版ソフトと安価な開発キットで始めるMSP430 LaunchPadによるハードとソフトの開発」は、10/25(金)の公開を予定しています。
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提供:日本テキサス・インスツルメンツ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2014年3月31日
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