ノイズ・フロア(Noise Floor)とは、電子回路において、それ自身が発生するノイズ(雑音)のレベルのこと。例えば、スペクトラム・アナライザでは、RF(アナログ)信号を入力していなくても、何らかのノイズが出力される。ディスプレイ画面の下の方に表示される、時間とともにレベルが変化するギザギザとした波形をご覧になった方も少なくないだろう。これがノイズ・フロアである。
このノイズ・フロアのレベルが高いと、さまざまな電子回路において問題を引き起こすことになる。代表的な問題を2つ挙げよう。1つは、入力信号が埋もれてしまうことである。入力信号が微弱だと、そのレベルがノイズ・フロアを下回ってしまうからだ。これでは、入力信号を検出できなくなってしまう。
もう1つの問題はダイナミック・レンジが狭くなってしまうことだ。一般にダイナミック・レンジは、ノイズ・フロアのレベルと、最大の信号レベルの差で求まる。ノイズ・フロアのレベルが高いと、この差が小さくなる。従って、ダイナミック・レンジが狭くなるわけだ。RF回路やADコンバータ回路、クロック回路などの性能への影響を引き起こすことになる。
従って、こうした回路ではノイズ・フロアのレベルを可能な限り低く抑えることが必要になる。このため、半導体メーカーやモジュール・メーカーなどでは、ノイズ・フロアを低減する開発を進めている。
実例を紹介しよう。テキサス・インスツルメンツ(TI)のアナログ・フロント・エンド(AFE)「AFE7070/AFE7071」である。無線通信機器やテスト/計測器などに搭載する無線(RF)送信回路(トランスミッタ)に向けたものだ。2個のDAコンバータや周波数可変ベースバンド・フィルタ、直交(IQ)変調器、デジタル直交変調補正回路などを1チップに集積した(図1)。RF出力は最大0.3dBで、周波数範囲は100M〜2700MHzである。このチップの特長の1つは、RF出力のノイズ・フロアが−142.7dBm/Hzと極めて低いことである。このため「高い信号品質が実現できた」(同社)という。
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提供:日本テキサス・インスツルメンツ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2014年3月31日
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