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クラスDアンプ(D級アンプ)これだけは知っておきたいアナログ用語

» 2014年02月28日 00時00分 公開
[PR/EDN Japan]
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クラスDアンプ(D級アンプ)

 クラスDアンプは、オーディオ・アンプ(増幅器)の動作方式の1つ。D級アンプや、スイッチング・アンプとも呼ぶ。携帯型電子機器や薄型テレビ、ノートPCなどに搭載するスピーカーの駆動に使われている。

 なぜクラスD(D級)と呼ぶのか。その答えは、アンプ回路を構成するトランジスタのバイアス方法にある。クラスDアンプが考案されたのは古い。1950年代にさかのぼる。その当時は、4つのバイアス方法が存在していた。クラスA(A級)と、クラスB(B級)、クラスAB(AB級)、クラスC(C級)である。クラスC(C級)に続いて登場したバイアス方式だったため、クラスD(D級)と名付けられた。従って、デジタル(Digital)の頭文字であるDから、クラスD(D級)と名付けられたわけではない。ただし現在では、「クラスD(D級)アンプのDはデジタル」との認識が広がっているのも事実である。

 クラスDアンプの特長は、電力効率が高く、発熱量が少ない点にある。従来、オーディオ・アンプに使われていたクラスAアンプやクラスBアンプ、クラスABアンプは、高い音質が得られるというメリットがあるものの、電力効率は低い。クラスABアンプでは50%程度。クラスAアンプでは30〜40%程度しか得られない。大型の据え置き型オーディオ機器であれば、電力効率が低くてもさほど大きな問題にならない。しかし、長い電池駆動時間が求められる携帯型電子機器や、実装スペースが限られるため発熱量を抑えたい薄型テレビなどでは致命傷になる。

PWM信号を利用する

 クラスDアンプを実現する技術として一般的なのは、パルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)技術を利用する方法である。

 この方法は、PWM変調器と2つの出力用パワーMOSFET、ローパス・フィルタの3つの回路ブロックで構成する。まずPWM変調器において、オーディオ入力信号と、三角波を使って基準信号を比較してPWM信号を作成する。オーディオ入力信号の振幅が、PWM信号のパルス幅に反映されるわけだ。その次に、2つの出力用パワーMOSFETを使ってオーディオ信号を増幅する。具体的には、PWM信号のパルス幅のタイミングで、比較的高い電圧をスイッチングするわけだ。こうすることで、電圧振幅が大きいPWM信号が得られる。最後に、このPWM信号をローパス・フィルタに通すことで、高周波成分をカットし、出力のオーディオ信号を得るという仕組みである。

 なお、PWM変調器を使う代わりに、ΔΣ(デルタ・シグマ)変調器を利用する方法もある。ΔΣ変調を利用して、非常に高いサンプリング周波数(2.8MHzや5.6MHzなど)で、オーディオ信号を「0」と「1」からなるデジタル信号列に変換する。その後、このデジタル信号列で比較的高い電圧をスイッチングして、ローパス・フィルタを通すことでオーディオ信号を再生する。

 クラスDアンプへ携帯型電子機器などへの適用が始まったのは、1990年代後半のことだ。製品化当初は、クラスAやクラスABなどに比べて音質が劣っているとの評価が多かった。ただし、電力効率はクラスABアンプの約2倍に相当する90%程度が得られる。このため、まずは音質にこだわらない電子機器がこぞって採用した。その後、音質の改善が徐々に進み、現在では音質を重視する据え置き型AV(オーディオ・ビジュアル)機器でも採用例は少なくない。

図1 クラスDアンプのTHD+N特性
テキサス・インスツルメンツ(TI)のクラスDアンプ「TPA3131D2」のTHD+N特性である。広い出力範囲で、THD+Nが低く抑えられている。

 クラスDアンプICの具体例として、テキサス・インスツルメンツ(TI)の「TPA3131D2」を紹介しよう。このICは、ウルトラブックやBluetoothスピーカー、タブレット端末/ウルトラブック用ドッキング・ステーションに向けたもの。アナログ・オーディオ信号入力に対応する。5mm角と小さい32ピンQFN封止品ながらも、最大7Wと大きいオーディオ出力が得られる点が特長である。電源電圧範囲は4.5〜26Vと広く、電力効率は90%を超えるという。音質を決める特性の1つである全高調波歪み+雑音(THD+N)は0.1%(標準値)と低い(図1)。



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提供:日本テキサス・インスツルメンツ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2014年3月31日

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