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シグナル・インテグリティ(SI)これだけは知っておきたいアナログ用語

» 2014年03月13日 00時00分 公開
[PR/EDN Japan]
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シグナル・インテグリティ(SI)

 シグナル・インテグリティ(Signal Integrity)とは、プリント基板や、それらの間を接続するケーブルなどに流れるデジタル信号の品質のこと。デジタル信号品質、伝送信号品質と訳されるケースが多い。さらに、2つの英単語の頭文字を取って「SI(エスアイ)」と呼ばれることもある。

 この言葉が使われ始めるようになったのは、1990年代後半のことだ。現在ではエンジニアの間で普通に使われている技術用語である。「デジタル信号の品質を高める」ことを、「デジタル信号のシグナル・インテグリティを確保する」といった具合に置き換えて使用する。

高速化が招いたデメリット

 シグナル・インテグリティという言葉が、1990年代後半から盛んに使われるようになった背景には、電子機器の性能向上がある。特にPCでは、マイクロプロセッサとメイン・メモリ(DRAM)を結ぶバスの動作周波数が100MHzから133MHz、166MHz、200MHz……と順次高まった。ところが、当時のプリント基板の設計/製造技術では、こうした高速化に対応できなかった。そもそも100MHzを超えるデジタル信号を伝送することを想定していなかったからだ。その結果、デジタル信号波形の品質が劣化して正しくデータを伝えられず、誤動作が顕在化するようになったのだ。

 デジタル信号が高速化すると、なぜ信号品質が劣化するのか。理由は大きく3つある。1つは反射だ。信号ライン(伝送線路)は一見、一様に製造されているが、電気的に見ると必ずしもそうではない。例えば、伝送線路の真下にグラウンド面が存在するか、しないかで特性インピーダンスは大きく異なる。多くの場合、プリント基板の設計時には、コストに直結する基板面積を削減することを優先しがちで、グラウンドの面積を削ってしまうことが多い。中には、伝送線路の真下でグラウンドが寸断されている例も少なくない。こうしたケースでは、伝送線路の特性インピーダンスが一様にならない。この結果、その値が異なる場所で反射が発生し、伝送信号は大きく歪んでしまう。

 2つめはクロストークだ。前述のように、プリント基板の設計時は、コスト削減のため、面積を小さくすることを優先しがちだ。従って、伝送線路の間隔を十分に開けないケースが少なくない。こうした場合、ある伝送線路を伝搬する信号を狭くするエネルギーが、隣接する伝送線路に移るという現象が発生する。これがクロストークで、伝送信号を大きく歪ませる原因となる。

 3つめは、伝送線路のローパス・フィルタ効果である。一般に伝送線路は、信号の低周波成分を通すことができるが、高周波成分はあまり通せない。このため、比較的長い距離伝送をすると、デジタル信号の高周波成分が失われて、伝送信号が大きく鈍ってしまう。この結果、正しく情報を伝えられなくなってしまう。

シミュレーションが有効

図1 IBISモデルで採用する等価回路モデル
IBISモデルは、ICの入出力バッファ回路部とICパッケージの等価回路からなる。

 このように、シグナル・インテグリティを確保するには、さまざまな要因に注意を払う必要がある。ただし、人間のチェックだけでは見落としが発生してしまう。そこで有効なのがシミュレーションである。回路シミュレータ(伝送線路シミュレータ)に、伝送線路やICのシミュレーション・モデルを入力し、解析することで伝送信号の波形やアイ・パターンを確認できる。これを使えば、対策の抜けや設計のミスを、プリント基板を製造する前に把握できるため、設計に費やす時間とコストを削減できる。

 テキサス・インスツルメンツ(TI)では、シグナル・インテグリティの確保に向けたシミュレーションのために、ICの解析モデルを無償で提供している。具体的には、SPICEモデルやIBISモデルである(図1)。いずれも業界標準の解析モデルで、シグナル・インテグリティの解析に最適なものだ。例えば、D級アンプIC「TPA3131D2」では、SPICEモデルの1つであるPSPICEモデルを、Ultra HD-SDI対応のリクロッカIC「LMH1256」では電源電圧変動を考慮したIBISモデルであるIBIS-AMIモデルを提供している。



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提供:日本テキサス・インスツルメンツ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2014年3月31日

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