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DLP®で手のひらサイズの近赤外線分光器を実現【講座】回路設計の新潮流を基礎から学ぶ

» 2014年05月21日 00時00分 公開
[PR/EDN Japan]
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 パソコンやテレビの画像/映像を大画面に拡大して表示するフロント・プロジェクタ(前面投射型プロジェクタ)。オフィスや学校、公共施設、家庭などで広く使われている。

 このフロント・プロジェクタには、大きく分けて2つの映像表示方式がある。液晶パネル方式とDLP®(Digital Light Processing)方式である。かつては、液晶パネル方式が優勢だったが、最近では勢力図が塗り変わり、DLP方式が大きな市場シェアを握っている。

 DLP方式は、1980年代後半にテキサス・インスツルメンツ(TI)によって開発された表示技術である。MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術で製造したDMD(Digital Micromirror Device)と呼ぶディスプレイ素子を使う。DMD素子とは、シリコン(Si)基板の表面に数多くの超小型ミラーを作り込んだものだ。その数は、製品によって異なるが、100万個を優に超える。超小型ミラーは四角形で、外形寸法は一辺が7μ〜13μmと極めて小さい。この超小型ミラーを1つずつ、静電引力を使って10度ほど傾ける。これに光を入射すると、傾けた超小型ミラーと傾けない超小型ミラーで光の反射角度が変わる。この原理を利用して、映像を大型のスクリーンに投影する仕組みである。

超小型の近赤外線分光器が実現可能に

 フロント・プロジェクタにおいて広く普及するDLP方式。しかし、その応用分野はそれだけではない。既に産業機器や計測機器、車載機器、医療機器、光通信機器などでの採用が始まっている。具体的には、プリント基板の製造に向けた露光(リソグラフィー)装置や3次元計測装置などである。

 今回TIは、DLP方式の応用分野をまた1つ新たに開拓した。それは近赤外線分光器である。近赤外線分光器とは、気体や液体、固体などの被測定物(サンプル)に近赤外線(1100nm〜2500nm)を照射して、その中に含まれている成分を分析するものである(図1)。食品や医薬品、石油、天然ガスなどの成分を簡単に把握できるようになる。

図1 DMD素子を使って近赤外線分光の原理
広い波長の成分を含む光を回折格子で各波長に分割し、DMD素子に照射する。その後、DMD素子で必要な波長を取り出すことで分析/解析を実行する。

 もちろん、近赤外線分光器は既に実用化されており、さまざまな用途で活躍している。しかし、既存の近赤外線分光器は、研究/実験室、専用の検査所などでの使用を想定しており、その本体の外形寸法は非常に大きかった。このため、手軽に持ち運んで必要に応じて分析するといった使い方は難しかった。

 しかし、TIが開発したDMD素子「DLP4500NIR」を使えば、大幅な小型化が可能になる(図2、図3)。

図2 近赤外線分光器に向けたDMD素子と制御用ASIC
DMD素子である「DLP4500NIR」と制御用ASICである「DLPC350」の2チップ構成である。
図3 DLP方式で実現した近赤外線分光器のメリット

近赤外線に最適化したDMD素子

 それでは、今回開発したDMD素子であるDLP4500NIRの詳細を説明しよう。

 DLP4500NIRは画面寸法が0.45インチのDMD素子である。画素数は912×1140(WXGA)である。しかし、ミラーを45度傾けたダイアゴナル配置を採用しているため、デジタル信号処理を施すことで、実効的な水平分解能は912画素の2倍の1824画素を得られる。水平分解能が高ければ高いほど、波長に対して細かな分析が可能になる。一方、垂直分解能は、各波長の光強度の制御に使える。

 対応する波長は700nm〜2500nmである。この点が一般的なDMD素子との大きな違いになっている。一般的なDMD素子は可視光(約380nm〜800nm)を検出することを目的にしているため、紫外線や赤外線を通さないカバー・ガラスを採用している。カバー・ガラスとは、DMD素子の入射部を覆うものだ。今回はこのカバー・ガラスの特性を変更し、近赤外線の検出に最適化した。

 DLP4500NIRの動作周波数は4kHzと高速で、SN比(信号対雑音比)は3万対1以上(スキャン時間が1秒以下の場合の標準値)を確保できる。TIの制御用ASIC「DLPC350」と組み合わせて使う。

 DLP4500NIRの主なアプリケーションとしては、近赤外線分光器の他、シングル・ピクセル・カメラ、レーザー・マーキング装置、顕微鏡などがある。

小型評価モジュールも用意

 発売したDMD素子であるDLP4500NIRを使って構成した近赤外線分光器の光学系の構成例が図4である。DMD素子の他、赤外線を出力する光源や回折格子(Diffraction Grating)、集光(コンデンサ)レンズ、光検出器、バンドパス・フィルタ、スリットなどを使う。

図4 近赤外線分光器の光学系
DMD素子のほか、赤外線を出力する光源や回折格子、コンデンサ(集光)レンズ、光検出器、バンドパス・フィルタ、スリットなどで構成する。

 含まれる成分を分析したい液体や固体、気体などは、サンプルの場所に置く。ここに近赤外線を、集光レンズを使って照射する。それを透過したり、反射したりした光を集光レンズで集め、バンドパス・フィルタを通過させた後に、回折格子で各波長(スペクトル)に分割する。この分割した光をDMD素子に入射し、必要は波長成分だけを反射させて、光検出器に送る。検出結果を分析することで、サンプルに含まれていた成分の詳細が分かる仕組みである。

 こうした光学系を小型の筐体に収めた評価モジュール(EVM:Evaluation Module)「DLPNIRscan」も用意している(図5)。DMD素子のDLP4500NIRや制御用ASICのDLPC350の他、光源であるハロゲン電球、InGaAs製の光検出器などを搭載した。USBやイーサネットを介してパソコンと接続できる。

図5 小型の近赤外線分光器に向けた評価モジュール
小型の筐体に収めた評価モジュール(EVM)「DLPNIRscan」である。米国での参考単価は8499米ドルである。

*DLP、DLPロゴはテキサス・インスツルメンツの登録商標です。
*すべての商標および登録商標はそれぞれの所有者に帰属します。



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提供:日本テキサス・インスツルメンツ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2015年3月31日

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