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GaN(窒化ガリウム)これだけは知っておきたいアナログ用語

» 2014年11月07日 00時00分 公開
[PR/EDN Japan]
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GaN(窒化ガリウム)

 GaN(窒化ガリウム)とは、次世代パワー・デバイス(パワー半導体)に用いられる半導体材料のこと。GaNパワー・デバイスを、既存のSi(シリコン)パワー・デバイスの代わりにDC/DCコンバータやインバータなどの電源装置に搭載すれば、電力変換効率の向上や装置の小型化などを実現できる。SiC(シリコン・カーバイド)とともに、次世代パワー・デバイスを実現する材料として普及が期待されている。

 なお2014年10月に赤崎勇氏(名城大学教授)、天野浩氏(名古屋大学教授)、中村修二氏(米カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授)がノーベル物理学賞を受賞したテーマである「青色LED(発光ダイオード)」も、GaN材料を用いた半導体デバイスである。

極めて高い材料特性

 GaN材料を用いれば、なぜSi材料を用いたパワー・デバイスよりも変換効率を高められると同時に、小型化も実現できるのか。その理由は、材料の基本特性が非常に高い点にある(表1)。バンドギャップは3.4eVと大きく、Si材料の約3倍。絶縁破壊電界は3.5×106V/cmと高く、Si材料の約10倍。飽和ドリフト速度は2.7×107cm/sと高速で、Si材料の約3倍である。

表1 GaNの材料特性
材料特性 GaN(窒化ガリウム) SiC(シリコン・カーバイド) Si(シリコン)
バンドギャップ 3.4eV 3.26eV 1.12eV
比誘電率 9.5 9.7 11.9
絶縁破壊電界 3.5×106V/m 2.7×106V/m 3.0×105V/m
飽和ドリフト速度 2.7×107cm/s 2.2×107cm/s 1.0×107cm/s
電子移動度 900cm2/V・s 1000cm2/V・s 1350cm2/V・s
熱伝導率 2W/cm・K 4.9W/cm・K 1.5W/cm・K

 このためGaN材料を使えば、オン抵抗が低く、耐圧が高く、スイッチング速度が高いパワー・デバイスを実現できる。これをDC/DCコンバータやインバータなどの電源装置に搭載すれば、導通損失とスイッチング損失の両方を削減でき、変換効率を大幅に高められる。さらに、スイッチング周波数を高く設定できるため、インダクタやコンデンサなどの周辺部品に小型品の採用が可能になり、電源装置全体の外形寸法を小型化できる。

HEMT構造を採用

 GaNパワー・デバイスでは、HEMT(High Electron Mobility Transistor)構造を採用するケースが多い。GaN材料は、イオン注入によって高品質のp型層を形成することが難しいため、MOSFETやJFETといった素子構造を実現しづらいからだ。

 もちろんHEMT構造でもパワー・デバイスを実現でき、良好な特性が得られる。しかし1つだけ、大きな問題がある。それは、実現可能なパワー・デバイスが、ゲートに電圧を印加していない状態で電流が流れる「ノーマリ・オン」であることだ。ノーマリ・オンでは、何らかの原因で故障が発生したときに、電流が流れ続けてしまう。パワー・デバイスでは大きな電力を扱うため、非常に危険だ。そこで、素子構造や周辺回路を工夫して、「ノーマリ・オフ」を実現する必要がある。

 この問題は最近になって、解決されつつある。ノーマリ・オフ動作を実現できる「GIT(Gate Injection Transistor)」などの素子構造が登場したり、周辺回路の工夫でノーマリ・オフが実現可能になったりしているからだ。

 GaNパワー・デバイスの製品化は既に始まっている。耐圧は600V以下の製品が多い。一方で、もう1つの次世代パワー・デバイスであるSiCパワー・デバイスは600Vを超える耐圧範囲の製品が多い。このため、両者は600V耐圧を境にすみ分けるという見方が一般的だ。ただし、GaNパワー・デバイスでも、研究開発の段階だが、1kV耐圧を超える素子が試作されている。SiCパワー・デバイスとすみ分ける耐圧レベルがより高くなる可能性もある。

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提供:日本テキサス・インスツルメンツ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2015年3月31日

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