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基板業界に創造と破壊をもたらした「P板.com」の“これまで”と“これから”モノづくりの開発環境をイノベーションする!

今や当たり前となったプリント基板のネット販売。オンラインで基板を手軽に入手できる仕組みを創造し、そして基板業界に価格破壊をもたらしたのがプリント基板通販サイト「P板.com」を運営するピーバンドットコムだ。「開発環境をイノベーションする」をテーマに、基板製造だけでなく、モノづくりの川下から川上に至るまでさまざまな革新的サービスを生み出し提供を続けている。同社創業者で社長を務める田坂正樹氏にP板.comの“これまで”と“これから”をインタビューした。

» 2015年04月21日 10時00分 公開
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10万円を3万円に

――2003年にプリント基板通販サイト「P板.com」を立ち上げられました。どういった経緯からプリント基板のネット通販を始められたのでしょうか。

田坂正樹氏 会社設立以前に勤めていた企業で、半導体のネット通販事業に携わっていました。その事業で、半導体以外にも、プリント基板も扱う検討を進めていました。ですが、そうした検討を行っているさなかに、半導体のネット通販事業自体を縮小することになりました。

 当時、半導体など電子部品のネット通販サービスは存在していましたが、プリント基板のネット通販は存在せず、そこに商機を感じていたので、独立して事業を立ち上げることを決め、2002年にピーバンドットコム(当時の社名はインフロー)を設立しました。

――汎用品が多い電子部品に対し、基板は顧客ごとに仕様が異なるカスタム品ばかりで、どちらかといえば通販には不向きな商材だと思われますが、不安などはありませんでしたか。

田坂氏 おっしゃる通り、基板はオーダーメードの製品です。けれども、顧客が設計されたデータを預かり、生産して、提供できるシステムが構築さえできれば、電子部品のように在庫を持たず、初期投資を抑えて事業をスタートできるメリットがありました。

 ただ、当時はプリント基板メーカーの担当者と直接顔を合わせて、発注するスタイルが一般的で、ネット通販自体もあまり普及していませんでした。ですから、“ネット通販で果たして、ちゃんとした品質のプリント基板が納期通り、手に入れることができるのか”という疑いの目を向けられていました。そうした中で、いくら品質の良い基板を納期通りに提供するサービスをオンラインで提供しても誰も利用してくれないわけです。

 そこで、工夫したのが「価格」です。

 “たとえ、品質が悪く使い物にならないとしても、いつものプリント基板メーカーに発注し直せばいい”と顧客に思わせるほど、安い価格設定であれば、自分たちのサービスを利用してもらえるだろうという読みがありました。当時、試作用のプリント基板の価格は、おおよそ10万円。これよりも70%安い、3万円で提供できれば、必ずわれわれを使ってもらえると確信していました。

 ですので、立ち上げ当初、苦労したのは、品質とともに70%安い価格を実現できる協力工場を探し出すことでした。

リーマンショックを追い風に変え、成長続く

――実際にそうした工場を見つけられ、サービスをスタートできた。

田坂氏 はい。70%も安いという点が顧客に響いて、立ち上げ当初から結構な数の注文をいただくことができました。

――売り上げ規模についてはどのように成長してきましたか?

田坂氏 はじめの5年程度は順調に売り上げが伸び、年間7億円程度にまで伸びました。しかし、リーマンショック(2008年)が起こり、そこから数年間は基板自体の需要が低迷し、売り上げも横ばい状態が続きました。

 ただ、リーマンショック自体は、われわれにとってはプラスの部分もありました。というのも、リーマンショック以後、機器の開発コスト削減意識が一層進み、それまでの「ネットだから、ダメ」という顧客のマインドが、「ネットでも何でもいいので、より安く」という風に変わりました。

 ですので、基板需要自体が回復してきた2011年以降は、毎年成長を続け2015年3月期は売上高17億円に達しました。

高い品質と納期厳守、基本を徹底する理念

――「低価格」をウリにサービス始められましたが、今も価格重視の方針は変わらないのですか。

田坂氏 われわれが70%も安い価格を実現したことで、基板業界に価格破壊が起こり、現状はP板.comがプライスリーダーとなりました。

 それまで基板の価格設定は、「(基板メーカーが)忙しい時は高く、暇な時は安く」、「大口の顧客には安く、小口顧客には高く」というように営業担当者が調整しながら価格を決めていました。これをわれわれが、いつでも誰でも、一律、いくらという価格設定に変えたことで、一気に、国内の基板価格は下がり、現状は“P板.comよりも○○円安い”というような市場になっています。

 ですが、われわれはそうした状況では価格競争はしません。適正な利益を上乗せした価格設定を行い、得た利益を新たなサービスの開発に再投資していくことに重点を置いています。

――価格以外でも特長を打ち出す必要がありますね。

田坂氏 当たり前のことですが、「価格」とともに「品質」「納期」という基本の部分で特長を出さなければなりません。特にプリント基板は、基板ができてからはじめて部品が実装できるわけで、“後工程”が存在します。ですから、納期遅れは絶対、許されません。顔を直接、合わさないネット通販ですから、なおのことです。

P板.comのトップページ P板.comのトップページ。トップページ右上に納期厳守率を表記している

 納期については、P板.comのトップページに納期厳守率を明示するなど重視しています。

 通常は、大手の物流会社に配送を委託していますが、天候不順などにより遅れが生じる場合があります。そうした状況が発生したり、予想されたりした場合には、(旅客の手荷物扱いとして運ぶ)ハンドキャリーサービスを使用しています。それでも難しい場合は、バイク便や従業員自らが届けるといった利益を度外視してでも、納期通りにお届けするよう、創業以来徹底しています。

 その結果、現時点で、99.802%(2015年3月27日現在)という高い納期厳守率を実現しています。

――品質については、どういった取り組みをされていますか。

田坂氏 社内に品質管理部門を設置し、協力工場に対し、品質改善に向けた指導を徹底しています。

 プリント基板は、不具合が付きものです。それは、化学反応を利用した製造を行うためバラツキが、どうしても起こってしまうからです。ですが、そうした不具合から、工場のどの工程で不具合が起こったかを特定することができ、改善に向けた指導が行えるのです。

 そして、半年に1度、協力工場に立ち入り検査を行い、不具合対策が行えているかどうかチェックしています。ちなみに、協力工場も無償で品質改善の指導を受けられるという意味で、歓迎されているようで、品質向上に向けた仕組みとしてうまく機能しています。

そして、基板製造の川上、川下へ

――高い品質、納期厳守の基板製造サービスを構築されましたが、基板設計サービスなども提供されています。

田坂氏 基本的に製造工程の川上から川下までサービスを広げていこうとしています。

 基板設計では、CADメーカーの協力も得て無償の基板設計CADを複数用意していますし、さらに受託設計サービスもネット経由で受託できる体制を整えています。

――基板製造の後工程、川下の部分のサービスについてはいかがですか。

田坂氏 部品実装サービス、提供開始から時間が経過していますが、好評で受注が拡大しています。

 そして、2014年秋に、長年検討を重ねてきた筐体やパーツの射出成形/切削加工サービスをスタートさせました。3D CADで設計したデータをネット経由で送信するだけで、試作レベルから1万個レベルの量産規模までの注文に応じるものです。近く、3Dプリンタを使用した筐体製造サービスも提供する予定です。

――サービスとしては、基板製造の川上から川下までカバーする体制が整ってきました。

田坂氏 はい、筐体製造サービスを始めたことで、一通り商材はそろったと考えています。また商材だけでなく、基板の開発をサポートとする目的で、従来の基板ベンダーではあまり出したくないであろう技術ノウハウの発信や、CADの操作に関する無料講習会なども実施してきました。これからは、さらにサポートする開発環境の領域を広げて、機器を作る時のもっと川上、川下の部分、具体的にはアイデア出しの部分から、実際に製品(機器)を作って、売るというところまでを支援していければと思い、オリジナルハードウェアコンテスト「GUGEN」(ぐげん)を催しています。

ハード技術者に光を!

――「GUGEN」について詳しく教えてください。

「GUGEN」(ぐげん)のロゴ

田坂氏 モノづくりを行う人たちに向けて、課題解決のアイデアを考える場を作り、アイデアのブラッシュアップやプロトタイプづくりを応援する取り組みで、コンテストの開催や表彰だけではなく、さまざま課題にフォーカスしたアイデアソンを開催し、応募した作品の展示から選ばれた作品に対して、開発援助やマーケティング支援を通じて製品化を後押しするさまざまなプログラムを用意しています。

――GUGENの狙いをお聞かせください。

田坂氏 GUGENは、2009年に「電子工作コンテスト」という名称で始めました。

 当時、IT/ソフトウェア業界は給料が高く、PCの中で仕事が完結しスマートなイメージがあった。もっと言えば“モテる”“イケてる”というイメージで人が集まりました。

 それに対して、ハードウェアの世界は、IT業界と比べると、どこかマニアックで、暗いイメージがあります。

 けれども、ハードウェアを作るということは、プログラムのように正確に動かず、アナログ的な要素も多く、難易度がとても高いわけです。ですから、難易度の高いハードウェアを作る方に光を当てて、イメージを変え、モノづくりの世界に人を多く集めたいと思って、始めました。

 電子工作コンテストでは、会場でモノが動かず盛り上がらないケースが多いのですが、当時登場してきたYouTubeなど動画投稿サイトを活用しハードウェアがベストな状態で動く動画でも応募できるような独自の規定を設けたコンテストとして開催し、優れた応募作品も多く集まりました。

 ですが、どこかオモチャ的なものや作って終わってしまう作品が多く、もう少し世の中に役立つモノを作る場にしたいということで、2013年に「GUGEN」と名称を変えて、製品化までサポートするコンテストへと改めました。

2014年12月に行われた「GUGEN 2014」の授賞式

 多くの人から少額ずつ融資を募り大きな資金調達ができるクラウドファンディングという仕組みが登場したことで、こうしたことができるようになりました。

クラウドソーシングというイノベーション

――GUGENの取り組みと事業の関係性について教えてください。

田坂氏 現状は、GUGENは社会貢献の要素が強いです。けれども、最近はクラウドソーシングというものが登場してきており、P板.comの顧客の中には、企業ユーザーだけでなく、クラウドソーシングでモノづくりを担うような個人ユーザーの方も多くいらっしゃる。GUGENなどで生まれたアイデアを実際に製品化するには、クラウドファンディング同様、クラウドソーシングが必要になるはずです。われわれが、アイデアとエンジニアの橋渡しをするクラウドソーシングの仕組み/サイトを作ることで将来的に事業とつなげていきたいと思っています。

3年後、売上高30億円へ

――今後の事業目標をお聞かせください。

田坂氏 売上高としては、3年後に30億円、そしてその先の数年後に50億円を達成する計画を立てています。

 現状、積層基板やフレキシブル板以外の特殊基板などあらゆる基板製造に対応できる体制を整え、筐体の製造サービスまで提供できるようになりました。国内基板市場全体は現状、縮小傾向にあると思いますが、現状のサービスメニューでも、ニーズをしっかりと取り込んでいければ、少なくとも売上高30億円の達成は決して高い目標ではないと考えています。これからも、既存サービスのブラッシュアップと並行して、国内の市場自体を盛り上げる為に、さまざまな方向からアプローチしていき、市場の活性化を目指します。

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提供:株式会社ピーバンドットコム
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2015年5月21日

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