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±0.2%と極めて高い精度での電流検出が可能に、フラックスゲート電流センサICが登場【講座】回路設計の新潮流を基礎から学ぶ

» 2015年06月22日 00時00分 公開
[PR/EDN Japan]
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 環境や省エネに対する意識が世界的に高まっている。それを受けて、産業用モーター駆動機器や産業用インバータ装置、太陽光発電向けパワー・コンディショナ、電気自動車/ハイブリッド車向けバッテリ充電器などの産業/エネルギー向け電子機器市場が急拡大中だ(図1)。

図1 ターゲット市場
産業用モーター制御機器や再生可能エネルギー関連機器、電力モニタリング機器、バッテリ充電器などの市場に向ける

 こうした電子機器を実現するには、さまざまな半導体や電子部品が不可欠である。代表的なものとしては、電源制御ICやゲート・ドライバIC、スイッチング素子、ダイオード、トランス、大容量コンデンサなどが挙げられるが、忘れてならないのが電流センサである。

 電流センサとは文字通り、配線ケーブルに流れている電流が果たして何A(アンペア)なのかを測定/検出するものだ。一般的には、シャント抵抗やホール素子、磁気抵抗(MR:Magneto Resistance)素子、フラックスゲートなどを使って実現する。

 ただし、前述の産業/エネルギー向け電子機器では、電流を測定/検出する際の「精度」が極めて重要になる。精度が高ければ、非常にきめ細かな制御が可能になり、その結果として電子機器のエネルギー効率を高めることができるからだ。環境性能や省エネ性能を高められるようになる。従って、「電流の測定/検出精度をいかに高めるのか」。それが電流センサの開発ターゲットになっている。

クローズド・ループを採用

 今回、テキサス・インスツルメンツ(TI)は、電流の測定/検出精度が±0.2%と高いフラックスゲート電流センサIC「DRV421」を開発した(図2)。「用途によっては、±0.05%程度の極めて高い精度が得られる」(日本TI)という。

図2 「TECHNO-FRONTIER 2015」で展示
日本TIは、2015年5月20日〜22日に幕張メッセで開催された「TECHNO-FRONTIER 2015」で、フラックスゲート電流センサIC「DRV421」を展示した

 一般に、電流センサには、オープン・ループ(開ループ)方式とクローズド・ループ(閉ループ)方式がある。通常オープン・ループ方式では、検出精度が数%を大きく超えてしまうものが多い。一方のクローズド・ループ方式を使えば検出精度を高められる。例えば、ホール素子を利用するタイプでは、数%程度と高い精度を実現できた。今回は、こうした既存品の精度を大幅に上回る。

 それでは開発したフラックスゲート電流センサICでは、どのようにして測定/検出精度を高めたのか。それを説明する前に、まずはフラックスゲート電流センサの動作原理を簡単に紹介しよう。

 フラックスゲート電流センサでは、磁気コアにそれぞれ逆向きの一次巻線と二次(補償)巻線を巻いたものを使う(図3)。今回使用する磁気コアはドーナツ状のもので、測定したい電流が流れる配線ケーブルをその中心に通す。すると磁気コアに磁界が発生し、その結果として一次巻線に電流が発生する。電流センサICではこの電流を検出し、磁気コアに発生した磁界を打ち消してゼロになるように、二次(補償)巻線に流す帰還電流の大きさを求めて、実際に供給する。この帰還電流をシャント抵抗で検出することで、実際に配線に流れている電流量を推定するという仕組みだ。

図3 フラックスゲート電流センサの原理と開発したIC
開発したフラックスゲート電流センサIC「DRV421」には、一次巻線に流れる電流を検出する機能や、二次(補償)巻線に流す電流を駆動する機能などを搭載した

 つまり、今回の電流センサICはクローズド・ループ方式を採用している。既存の同方式の電流センサに比べて高い検出精度が得られた理由としてTIは、2つのポイントを挙げている。1つは、電流センサICの内部にフラックスゲートの一部(一次巻線など)を、シリコン(Si)半導体技術を利用して集積したこと。もう1つは、磁気コア・モジュールに、電流センサICとシャント抵抗を内蔵しなかったことだ。プリント基板に電流センサICとシャント抵抗を実装し、そのうえに磁気コア・モジュールを覆い被せるように乗せて実装する形態を採用した(図4)。電流センサICとシャント抵抗は熱源になる。これらを外に出したため、温度ドリフトを抑制することが可能になり、測定/検出誤差を高めることが可能になった。

図4 磁気コア・モジュール
フラックスゲート電流センサICと組み合わせて使用する磁気コア(トランス)・モジュール。プリント基板に電流センサICを実装し、そのうえに覆い被せるように磁気コア(トランス)・モジュールを取り付ける。スミダコーポレーションの「SC2912」を搭載した例である

200kHzに対応

 開発したフラックスゲート電流センサICのオフセット値は±3μT(最大値)、その温度ドリフトは±10nT/℃(標準値)である。集積した差動アンプのオフセット電圧は±100μV(最大値)で、その温度ドリフトは±2μV/℃(最大値)。基準電圧源の誤差は±2%(最大値)で、温度ドリフトは±100ppm/℃(最大値)。二次(補償)巻線への供給電流範囲は±250mA(+5V駆動時)である。

 対応する周波数範囲はDC(直流)〜200kHzである。このためDCとAC(交流)の配線の電流測定/検出に使える。さらにスイッチング周波数が比較的高いDC/DCコンバータやインバータへの適用も可能だ。測定可能な電流量は、外付けする磁気コア・モジュールによって異なる。例えば、スミダコーポレーションの磁気コア・モジュール「SC2912」を使えば、最大50Aの電流測定/検出が可能だ。磁気コア・モジュールは、スミダコーポレーションのほか、さまざまな電子部品メーカーから製品化される予定である。

 電源電圧範囲は+3.0〜5.5V。パッケージは、実装面積が4mm×4mmと小さい放熱用金属パッド付き20端子WQFNである。動作温度範囲は−40〜+125℃と広い。価格は、ホール素子を使ったクローズド・ループ方式の電流センサとほぼ同等になる見込みだ。

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提供:日本テキサス・インスツルメンツ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2016年3月31日

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