圧力センサの用途は極めて幅広い。工業プラントの液面レベル検知やエアコンの風圧制御、炊飯器の圧力検出、給湯器や洗濯機の水圧計、血圧計、腕時計や活動量計用の高度計、測候所に向けた気圧計、自動車に搭載する電子制御燃料噴射装置の圧力モニタ、自動車のシートに座る人の特定などで使われている。
今や産業用電子機器や車載用電子機器はもちろんのこと、白物家電やモバイル/ウェアラブル機器でも、必要不可欠なデバイスとなっている。さらに今後、IoT(モノのインターネット)市場が急速に拡大する見込みだ(図1)。それが現実となれば、圧力センサ市場は巨大マーケットへと成長するだろう。
圧力を検出する方法は複数ある。バネを使った機械式や、コンデンサを利用した静電容量式などがある。しかし最も一般的なのは、歪みゲージや半導体ピエゾ(圧電)素子を使った抵抗ブリッジ式だろう。
このタイプの圧力センサがどのように機能するのか、半導体ピエゾ素子の場合で説明しよう。ベースとなる材料はシリコン(Si)だ。シリコン基板の一部をエッチングなどで薄く加工したダイヤフラムの上に、半導体プロセス技術でピエゾ抵抗体を作り込んだ素子構造を採る。この素子に外部から圧力が加わるとダイヤフラムがたわむと同時に、ピエゾ抵抗体に応力がかかる。ピエゾ抵抗体は、応力の大きさによって抵抗が変化する。この抵抗の変化を検出することで、圧力を測定するわけだ。ただし実際には、測定精度を高めるために、4個のピエゾ抵抗体を使って、ホイートストン・ブリッジを構成している。このため抵抗ブリッジ式と呼ばれるわけだ。
この方式は、量産性に優れている上に、圧力の測定範囲が広いことや、感度が高いことなどの多くのメリットがある。しかし、デメリットも存在する。それは、ピエゾ抵抗体の抵抗値に温度依存性が存在することである。抵抗ブリッジの出力電圧は、3次の非線形性を持つ。従って、そのままの出力電圧だけでは、圧力を正確に求められない。何らかの信号処理が必要になる。
こうした問題に対して通常は、非線形性を持つ抵抗ブリッジの出力電圧を、別に測定した温度情報を使って線形データに補正する方法で対処する。今回、テキサス・インスツルメンツ(TI)は、この用途に向けたアナログ・フロントエンド(AFE)2製品を市場に投入した。1つは32ビット・コアARM® Cortex®-M0を搭載し、ユーザー独自の補正アルゴリズムを実装できる「PGA900」(図2)。もう1つは、一般的な補正アルゴリズムを組み込んだ「PGA300」である。
どちらのAFEチップを選択すべきなのか。最適な製品は、ユーザー(圧力センサ・メーカーや電子機器メーカー)によって異なる。国内メーカーの多くは、補正方法にこだわりを持っており、それぞれが独自のアルゴリズムを開発している。そうしたユーザーには、手元でプログラミングできるCortex-M0コアを搭載したPGA900が向く。一方で、コストや開発期間を重視するメーカーには、補正の性能はそこそこだが、手軽/迅速に使えるPGA300が最適だ。
こうした補正アルゴリズム処理に向けたデジタル回路の他にも、さまざまな回路や機能を集積した。
アナログ回路としては、外付けの抵抗ブリッジと温度センサのシグナル・コンディショニング用途に向けて、それぞれにプログラマブル・ゲイン・アンプ(PGA)とΔΣ(デルタ・シグマ)型A/Dコンバータを用意した。PGAのノイズは小さく、A/Dコンバータの分解能は24ビットと高い(PGA300は16ビット)。このほか、抵抗ブリッジの駆動回路や、出力用の14ビット分解能D/Aコンバータ、基準電圧源などのアナログ回路も集積した。
出力及び通信信号の形式は豊富だ。「PGA900」は、4〜20mAの電流ループ・インタフェース出力やPWM信号出力、電圧値出力、OWI(One Wire Interface)出力、I2C/SPI出力、GPIO(汎用入出力)出力、UART出力に対応する(図3)。一方のPGA300が対応する出力及び通信信号の形式は、4〜20mAの電流ループ・インタフェース出力と電圧値出力、OWI出力である。
さらにパッケージが小さいのも特長の1つだ。「PGA900」と「PGA300」はいずれも、実装面積が6.0mm×6.0mmの36端子VQFNパッケージに封止した。さらに「PGA300」は、実装面積が3.66mm×3.66mmと小さい端子DSBGAパッケージ封止品もある。評価ボード「PGA900EVM」も用意されており、TIのオンライン・ストアから購入可能だ(図4)。
電源電圧範囲は+3.3〜30V。消費電流は、通常動作時に2.6mA(PGA900の最大値)と小さい。動作温度範囲は−40℃〜+150℃と広い。産業用電子機器や車載用電子機器などの幅広い用途に適用可能だ。
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提供:日本テキサス・インスツルメンツ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2016年3月31日
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