小規模な論理回路を1パッケージに収めた集積回路(IC)である標準ロジック(汎用ロジック)。ロジック・ゲートやアナログ・スイッチ、シフト・レジスタ、マルチプレクサ、バス・スイッチなど、さまざまな製品の種類がある。その歴史は古く、1960年代の初頭から製品化が始まった。
それから約55年。1980〜1990年代には、「標準ロジックは将来、消えてなくなるだろう」という予測が多々あった。そうした予測がなされた理由は、「集積規模の小さい標準ロジックは、いずれ大規模集積回路(LSI)に取り込まれてしまうはずだ」という思い込みにあった。しかし、標準ロジックは現在もなお消えることなく、むしろ世界全体での市場規模も一定水準を維持し続け、電子機器にとって欠かせない存在であり続けている。
なぜ、標準ロジックはなくならなかったのか。言い換えれば、なぜ需要があり続けたのか。
現時点における標準ロジックの需要は大きく2つある。1つは、電子機器の新規開発における「修正・調整」用途だ。電子機器の設計では、その最終段階において軽微なバグや不具合が見つかることが多々ある。例えば、「あるICからASICへの入力信号が本来の逆相だった」というような場合だ。もちろん、ASICを設計し直せば問題を解決できるが、極めて大きなコストと時間がかかってしまう。そこで標準ロジックを使って、最小のコストで簡単に修正するわけだ。
もう1つは、産業用電子機器や電力用電子機器、医療用電子機器といった製品寿命が極めて長い電子機器に搭載する用途である。これらの電子機器は10年を超えて、同じ機種を生産し続けることが多く、故障した部品を交換することで20年、30年といった長期間使われるケースも少なくない。そのため、10年や20年も前に採用した標準ロジックを、現在もなお必要とし続けているわけだ。もちろん、このケースでも、電子機器自体を設計し直せば、標準ロジックを不要にできる場合があるが、それには大きなコストがかかる。また、設計見直しによるリスクを避けるため、正常動作しているブロックの設計にはあえて手を加えないことも多々ある。このため、10年や20年前の標準ロジックがいまだに必要になっているわけだ。
大きく分けて2つの用途がある標準ロジック。この標準ロジックにいま静かなる危機が訪れようとしている。それは、「製造中止」という危機だ。一部の製品の生産を終了して、電子機器メーカーへの供給を止める半導体メーカーが現れ始めている。
標準ロジックの中には、バイポーラ技術や、BiCMOS技術といった過去のプロセスで製造するものや(図1、図2)、DIP(Dual Inline Package)などの大型パッケージに封止したものがある。古いプロセス技術は、活躍の場が減っており、残しておくには大きなコストが掛かる。大型パッケージも、材料費がかさむためコスト負担が大きい。このことから、一部の半導体メーカーにとって、標準ロジック製品事業の魅力が変化していると考えられる。「あって当然」と考えられてきた標準ロジック製品。今後も継続して安定供給できるかという点にたったメーカー選びを検討すべき事態が起きている。
もちろん、製造中止の判断は半導体メーカーに任されており、ビジネスの観点から見れば決して責められる行為ではない。実際、事業の見直しはあらゆる分野で起きている。しかし、製造中止があると、電子機器メーカーに多大な影響を及ぼす。特に製品寿命が極めて長い電子機器を扱っているメーカーにとっては死活問題だ。設計の再検討を強いられるし、いまもなお売れ続けている電子機器の販売計画、保守や修理といったアフターサービスにも影響を与えることになるからだ。
こうした中、テキサス・インスツルメンツ(TI)は、「標準ロジックから、絶対に撤退しない」という方針を打ち出している。「たとえ最後の1社になっても、標準ロジックを製造し続ける」(TI)という。
TIは、世界最大の標準ロジック・メーカーである。世界全体での市場シェアは約50%弱で推移している。品ぞろえも豊富だ。TIはバイポーラ品、BiCMOS品、CMOS品の全てを手掛けており、シリーズの抜け落ちもほとんどなく、選択の幅が広い。製品数は1万7000を超えている(図3)。
パッケージのラインアップの豊富さも業界随一である。大型のプラスチックDIPやSOIC(SOP)から、QFNといった小型パッケージまでを取りそろえている(図4)。パッケージの種類は120個にのぼり、選択の幅が広い。
さらに特筆すべきは、標準ロジックの型番を変えることなく、動作温度範囲を広げていることである。製品化当初は、−40〜+85℃だったが、現在ではそれを−40〜+125℃に拡張した。産業用電子機器などに適用しやすいように改善したわけだ。
現在、TIが提供している標準ロジックの中で、最も古い製品化は『SN7400』である。前回の東京オリンピックが開催された1964年に量産がスタートした。量産開始からすでに51年が経過している。そうした半導体メーカーは、民生機器から産業機器にビジネスの軸足を移している国内電子機器メーカーにとって、頼もしいパートナーになり得るだろう。
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提供:日本テキサス・インスツルメンツ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2016年3月31日
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