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「Industry 4.0」を加速させるSoCが登場、15個ものプロセッサ・コアを集積【講座】回路設計の新潮流を基礎から学ぶ

» 2015年12月29日 00時00分 公開
[PR/EDN Japan]
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 欧州などを中心に、取り組みが活発化してきている「Industry 4.0(インダストリー4.0)」。日本国内でも、注目度が日増しに高まっている。

 Industry 4.0では、工場内の生産システムを構成するさまざまな装置や機器がインターネット接続される。それだけではない。工場の外にあるあらゆるモノやサービスとも連携し、新しい価値やビジネス・モデルを創出できるようになる。こうした先進性から、Industry 4.0は「新たな産業革命」とも称されている。

 今後、工場内に設置される装置や機器には、インターネット接続機能が不可欠になる。産業用電子機器やファクトリ・オートメーション(FA)機器、マシン・ビジョン機器、ロボットなどの電子機器を開発するエンジニアは、対応を迫られることになる。

 これらの電子機器は、広い意味で捉えると「組み込み機器」に分類できる。組み込み機器を実現するには、オペレーティング・システム(OS)の処理やグラフィカル・ユーザー・インタフェース(GUI)の処理などを受け持つプロセッサが必要不可欠だ。さらに、組み込み機器に求められる性能によっては、リアルタイム処理やマルチメディア処理も必要になる。そこに、インターネット接続(コネクティビティ)機能が加わるわけだ。プロセッサ・コアは複数個必要になるうえに、それぞれのコアには高い演算/処理能力が求められることになる。

 複数のプロセッサ・コアをそれぞれ別々のチップで用意することになれば、コストや実装面積が増加するだけでなく、搭載するソフトウェアの開発が極めて複雑になる。もちろん、FPGAやASICを開発することでも対応できるだろう。しかし、その場合でもかなり大きなコストが掛かり、設計の工数は膨大になってしまう。設計中の電子機器の性能に必要十分なプロセッサをいかに探し出し、入手するのか。これまで産業用電子機器などの設計エンジニアは頭を悩ませていたのが実情だ。

15個ものコアを搭載

 こうした問題を解決できるプロセッサが登場した。テキサス・インスツルメンツ(TI)が製品化したプロセッサ製品ファミリ「AM57x」である(図1)。TIの「Sitaraプロセッサ製品プラットフォーム」に属する製品で、その中で「最高峰」に位置付けられるものだ。

図1 幅広いアプリケーションに対応

 特長は、15個ものプロセッサ・コアを1チップに集積した点にある(図2)。いわゆる「SoC(System on Chip)」である。その内訳を以下で説明しよう。

 演算処理(コンピューティング)に向けたプロセッサ・コアとしては、2個の「ARM Cortex-A15コア」と、2個のDSPコア「C66x」を用意した。ARM Cortex-A15コアは、高性能な演算処理とHLOS(ハイレベル・オペレーション・システム)の処理に対応し、C66xは浮動小数点演算などを受け持つ。いずれも動作周波数は高い。ARM Cortex-A15コアは最大1.5GHzで、C66xは750MHzで動作する。

図2 15個のプロセッサ・コアを搭載
「AM57x」の内部構成である。15個のプロセッサ・コアを搭載した。

 リアルタイム制御に関する処理に向けたプロセッサ・コアも2種類用意した。低レイテンシのリアルタイム制御処理などに向けた2個の「ARM Cortex-M4コア」と、コネクティビティ機能の実現に向けた「PRU-ICSS (Programmable Real-time Unit-Industrial Communication Subsystem)」である。ARM Cortex-M4コアは、モーター制御やセンサ監視などの用途に向ける。PRU-ICSSは、4個のRISCコアで構成した。ARM Cortex-M4コアは213MHz、PRU-ICSS用RISCコアは200MHzで動作する。

 このほかマルチメディア処理などに向けたプロセッサ・コアも搭載した。具体的には、3次元(3D)グラフィックス・アクセラレータ「SGX544」を2個、2次元(2D)グラフィックス・アクセラレータ「GC320」を1個、1080pに対応したビデオ・アクセラレータ、セキュリティ処理用アクセラレータを1個である。

 合計で15個ものプロセッサ・コアを集積した「AM57x」の演算処理性能は極めて高い。TIによると、「組み込み機器などに使われるクアッド・コアのARM Cortex-A9プロセッサ製品と比較すると40%、デュアル・コアのARM Cortex-A9プロセッサ製品と比較すると280%も演算性能が上回る」という。産業用IoT機器やFA機器、HMI(ヒューマン・マシン・インタフェ−ス)機器、ロボット、医療用画像処理機器、航空用電子機器などに向ける。

マルチプロトコルに対応可能

 TIは、2015年11月16日〜18日にパシフィコ横浜で開催された「Embedded Technology 2015/IoT Technology 2015」で、「AM57x」を使ったコネクティビティ機能のデモを展示した(図3)。

図3 コネクティビティ機能のデモの様子
「Embedded Technology 2015/IoT Technology 2015」(2015年11月16日〜18日、パシフィコ横浜)において、TIのブースでマルチプロトコル対応のデモを展示した。

 このデモの最大の見どころは、マルチプロトコルに対応できる点にある。工場などでは、異なるメーカーの装置や機器を使用するケースが多い。それらの装置/機器が採用するフィールド・バス規格(プロトコル)が同じとは限らない。1つのフィールド・バス規格にしか対応していないと、接続できない危険性が高まる。

 「AM57x」に搭載したコネクティビティ機能を使えば、こうした危険性を大幅に軽減できる。PRU-ICSSを構成する4個のRISCコアを使う。フィールド・バス規格によって異なるものの、2個のRISCコアで1つのフィールド・バス規格に対応できる。従って、「AM57x」で2種類のフィールド・バス規格に対応できるわけだ。

 デモでは、EtherCATやPROFINET、イーサネット/IPに対応した産業用電子機器を用意し、それぞれを「AM57x」搭載機器とケーブルで接続することでプロトコルを自動的に判別して接続を確立する様子を見せた。「専用のASICを用意することなく、マルチプロトコルに対応できる点が特長だ。各プロトコルのIPも用意している」(同社)という。

 このほか、199米ドルと安価な開発ボード「BeagleBoard-X15」も展示した(図4)。「AM5728」を搭載したボードで、USB 3.0ホスト機能や、イーサネット・ポート、eSATAポート、HDMIポート、オーディオ入出力、電源機能などを搭載した。なお、評価モジュール「AM572x」と、ソフトウェアの開発ツール「Processor SDK」を用意している。Sitara 「AM57x」のリファレンス・デザイン、「TIDEP0047」と「TIDEP0046」も供給中だ。

図4 開発ボード「BeagleBoard-X15」

重要性を増す工場用通信システム

 Industry 4.0の普及で重要になるのが、EtherCATや、PROFIBUSなどの、さまざまな規格に対応した産業用通信システムである。こうした通信システムに向けてTIが提供しているのが「AM335x」プロセッサ・ファミリである。スケーラビリティの高いARM Cortex-A8ベースのコアを採用しており、各種通信規格にも対応している。また、コネクティビティ機能を実現する「PRU-ICSS」サブシステムをサポートしている。

 迅速な設計を可能にするため「AM335x」プロセッサ・ファミリを搭載した各種リファレンス・デザインも提供している。例えば産業機器でよく使われるPROFINET通信規格に対応したリファレンス・デザインとしては、PROFINETスレーブ通信を対象とした「PROFINET 通信開発プラットフォーム」や、産業用イーサネットの物理層、PROFINET IRTスイッチ、PROFINET IRTスタック、アプリケーション・サンプルを1つのパッケージに封止した「認証済みPROFINET IRT V2.3 デバイス」がある。

 さらに、イーサネット規格に対応したリファレンス・デザインとして、「イーサネット/IP 通信開発プラットフォーム」や「マルチプロトコル産業用イーサネット検出、産業用オートメーション・リファレンス・デザインのための PRU-ICSS 付き」がある。

 EtherCAT規格対応のリファレンス・デザインとして「EtherCAT 通信開発プラットフォーム」や「Acontis EtherCAT マスター・スタック」を提供している。その他に、PROFIBUS規格対応の「PROFIBUS 通信開発プラットフォーム」も用意している。

 今後、Industry 4.0に対応した産業用電子機器などの開発/設計は、間違いなく活発化する。今回発売した「AM57x」や各種通信規格に対応した「AM335x」は、そうした開発/設計作業をサポートすることで、Industry 4.0の普及を後押しすることになるだろう。

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提供:日本テキサス・インスツルメンツ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2016年3月31日

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